最果てのイマ

ページ名:最果てのイマ

登録日:2009/06/25(木) 16:37:24
更新日:2023/10/20 Fri 12:17:23NEW!
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 空を―――を、


   よく見ておくといいよ










Xuse(純米)が2005年8月12日に発売したアダルトゲーム。2003年発売予定だったが、長い発売延期を経て世に出された。
ジャンルは「ジュヴナイルアドベンチャー」。


企画・シナリオ:田中ロミオ
原画:あらきまき
音楽:たくまる



◇概要

2005年の時点では珍しいボイスなしの作品として発売され(メーカーは「一部演出上の都合」と説明している)、
2007年11月30日に一部描写を追加したフルボイス版が発売された。


主な変更点は

  • 主人公を除いたキャラのフルボイス化
  • サブキャラ3名のHシーン追加
  • Windows Vista 32bit に正式対応

ただし、限定販売かと疑いたくなるほどの早さでロットアップしてしまい、現在はかなりのプレミアがついているので注意。
ダウンロード販売もされていたが、現在はラインナップから外れている。


2012年7月26日には、Hシーンを削除し、新規CGを追加したPSP版『最果てのイマ PORTABLE』がサイバーフロントから発売されている。
レーティングはCERO:D(17歳以上対象)。
パンスケや沙也加とのキス、人間遊びなど、その他のきわどいシーンはそのままである。
声優陣は全員フルボイス版と同じ。
サイバーフロントは2015年現在、メーカー消滅しているが、Amazonなどで新品の購入は可能。
また、ダウンロード販売も行われている。


さらに、2015年7月31日には本家Xuseから、フルボイス版にPSP版の新イベントを追加した完全版『最果てのイマ COMPLETE』が発売された。
新たな対応OSとしてWindows7と8.1が加わり、最新のOSでもプレイできるようになる(Windows10については情報求む)。
(無印版はWindows8.1では動作しない場合がある。フルボイス版については情報求む)
付録として、ブックレットとオリジナルサウンドトラックが同梱される。
あの「チーズ」の後に発売される作品であるだけに、はたしてどうなるか(バグ的な意味で)。




◇ゲームシステム

本作には選択肢がなく、チャプターで区切られたストーリーをひたすら読み進めることになる。
ある意味「ゲーム」ではない。
ただし、文章のなかで下線の引かれた単語が現れることがあり、それを選択して読み進めることで物語への理解が深まる。
いわゆる「Tips」により意味を持たせたもので、最序盤を除きリンクを踏むことは強制ではない。
『ゾンビ』とは決定的に異なる点である。
ただし、読まないとストーリーの流れから置き去りにされること間違いなしなので、全部読んだ方がいい。
公式では「ネットサーフィンを行うかのように、次々とシナリオが展開していく方式」と解説されている。
最序盤のいくつかのリンクは各ヒロイン√への分岐スイッチの役割も果たしており、踏まないととあるシーンの後で作品冒頭のシーンに戻ってしまう。
このようなゲームの仕組みは「Blogシステム」と呼ばれ、ゲーム起動後に現れるホームページの入り口のような文章と相まって、
この作品を印象深いものにしている。


誰かひとりのヒロインの√を一定の場所まで読み進めるとおまけモードが解放され、
CGやBGMとともに、今まで読んだチャプターを、チャプターごとに読み直すことができる。
ある意味セーブいらずの親切設計。


あずさ・沙也加・葉子・笛子の√を読み終えると、無条件で「戦争編」と呼ばれるシナリオに進む。
青春っぽい雰囲気の作品なのに「戦争」とは何ぞ、と思われるだろうが、実際にプレイすれば納得できる。
たくさんのリンクが現れるが、大筋は1本道なので、じっくり話を追っていけばいい。
長いシナリオだが、最後まで読み終えれば今作唯一のEDを見られる。
(いわゆる「ネタバレ」にあたる要素だが、公式に明記されているので記述した)




◇内容

ロミオならではの癖の強さと哲学的内容が特徴。ジュヴナイルという言葉がよく似合う。
今回は特に元ネタが多い。


ストーリーは数多のロミオ作品のなかでも際立って難解で、かつ長い。
ボイスなしでもプレイ時間は30時間から40時間に及ぶとされる。
初見で全てを理解するのはかなり厳しい。もちろん良い意味で。
そのぶん読みごたえがあると評価はかなり高い。
また、わずかにでもストーリーの詳細に立ち入ろうとすると後半部のネタバレになってしまう厄介な作品ではあるが、
逆にいえば多少ネタバレがあったとしても言葉の意味が理解できないかもしれない。
ぶっちゃけ本項目のタグのいくつかはネタバレである
物語の細部に関する設定はいまだ汲みつくされておらず、熱心なファンによる熱い議論が交わされている。


全体的に地の文が異様に固めで、純文学でも滅多に使われないような表現が多数用いられている。
(ロミオファンならば、『灼熱の小早川さん』の文章をもっと固くした感じ、といえばわかってもらえるだろうか?)
そのぶん文章での描写が豊かで、生真面目な文章が逆に生きるようなギャグシーンもある。


ロミオ作品では恒例行事でもある、生理ネタとボウガンは今作でも健在。
そりゃもう日常会話の三割には入ってそうなくらい。


とにかくネタバレされ易い事で有名。
下手にレビューサイトを見て回ると、とりあえず結末や、シナリオ上何が起こるのかはわかってしまうので注意しよう。
この作品で重要なのは、結末に至る過程を丹念に追う作業そのものなのだから……。
というよりかは、OPムービーが既にネタバレ満載の日本語や英語、CGで溢れかえっている。
とっかかりのためにじっくり見るのも、後半の楽しみのためにスキップするのもプレイヤーの自由。
一応言っておくが、ムービーの質自体は高い。




◇音楽

今作ではたくまる氏が音楽を担当した。
全体的にゆったりとした曲が多く、穏やかな雰囲気づくりに貢献している。
また、20世紀初頭のフランスの作曲家であるエリック・サティのピアノ曲がふんだんに用いられ、
ほのぼの・萌え・ギャグ・シリアスなど多方面のシーンで大活躍する。


以下、今作で使用されているサティの楽曲

  • ジムノペディ(『3つのジムノペディ』『6つのジムノペディ』と呼ばれる作品群の第1番)
  • グノシエンヌ(『3つのグノシエンヌ』『6つのグノシエンヌ』と呼ばれる作品群の第1番)
  • ジュ・トゥ・ヴー(『お前が欲しい』と邦訳されることもある。今作の萌えシーン担当)
  • ピカデリー(ドタバタやギャグ方面で活躍する)

上二つは作品の雰囲気を出すためか、少しテンポが遅くなっている。
他のBGMもこれらに合わせた雰囲気。



OP曲 『a far song ~カナタノウタ~』
作詞:田中ロミオ、たくまる
作曲:たくまる
歌:霜月はるか



ED曲 『あの頃の僕等に』
作詞・作曲:Dr.Shrimp
歌:さくら



◇ストーリー


幼い頃に施設で育った主人公の貴宮忍、彼が姉の千鳥と共に施設を出て最初にしたことは、友達を作ること。
忍は、同じように友人のいない、心に様々な問題を抱えている者たちを集めて7人の仲間を作った。
彼らは放課後になると、毎日のように町はずれの工場跡である「聖域」に集まるのであった。


そんな幸せがいつまで続くと思っていた。


これは、そんな
    心を描く物語





……世界は偽りと裏切りで満ちている。


人と人は傷つけ合う。どんなに親密でも衝突は避けられない。
聖人の高潔さでも身につけない限り、行き過ぎた相互理解は致命的な傷の応酬となるばかりで、互いを破壊してしまう。


しかし。


たとえ接触が傷つけあいだとしても、それは相手が実在することの証拠となる。
だからこそ生身の絆はかけがえのないものとなるのだということを……





7人の間で繰り広げられる、理解と共感、反発と衝突。
そして思春期の淡い恋愛感情。
永遠に続く友情。


そんなまどろみのような幸せの中に、ずっといられる―――はずだった。


千々に撒かれたパズルのピース。


どうか、優しく配列されますように―――



――21世紀


人類ははじめて「敵」を認識した。


それは
同じ人類や星の同胞などとは比べものにならないレベルの超越的な存在。
これまでの人類の戦争の歴史など
じゃれあいとしか呼べるものではなかった。


空前絶後のそれに対して、人々はあらゆる手段を講じはじめる。
その先鋭となるのが、あらゆる「現象」を操ることのできる
能力者USERを生み出した「群像委員会」であった。


しかし、一時期は全世界規模まで膨れあがった委員会は
その巨大さゆえに内部崩壊していく。


人類は、人類以外の敵を前にしてもなお
人類同士での争いをやめようとはしなかったのである。


そして人々は、世界最高の現象行使能力を持たされた少年に希望を託した。


しかしそれが、少年にとっての希望であったわけではない。
しかしそれでも、少年は、戦う道を選ばざるをえなかった。


すべての希望を失っても、
敵対していた、憎みさえしていたUSERたちを従え、
およそ人の及びうるものではない「敵」に対して


幸せだった頃の記憶だけを胸に――



◇登場人物


貴宮忍
主人公。とある目的をもって7人の仲間を集めた張本人であり、その中心となる。
「聖域」とそのメンバーを誰よりも考えており、それを侵そうとする者には容赦しない。
昔は「施設」にいたらしい。
ロミオ主人公屈指の人外。その異常性はこの人以上である。

SINOBU!!
刃!
心!


紅緒あずさ 声:みる
忍の家の隣に住む、何でも借りて済ます娘、カリスマ。
昔はいじめられっ子で、助けようとした忍にも牙をむいていたが、怪我をしたところを忍に治してもらってからは、徐々に慕うようになっていった。
忍とはとても仲がいいが、章二とはよく喧嘩する。
とある事情で、忍はあずさと一定の距離と保とうとする。
作品の中で初めて赤飯を炊くアレが来る。
『鮮血の徒花が咲き誇るよー!!』
アレの時期になると必要なポーチ
不携帯、最近実装。


本堂沙也加 声:風音
お嬢様。姉キャラ兼今作の超人。
聖域メンバーを除いて、他者からは距離を置かれ、孤高な雰囲気を漂わせている。
小学生のときにソフ倫に挑戦し、忍との関係を深める(挑戦したのは忍だが)。
物凄い男前な立ち絵がある。
『塵芥、人間遊びをしましょう。』
常時実装


塚本葉子 声:夏野向日葵
超天然。パンスケ。斎の妹。
特技は葉子しだん(指弾)で、あずさいじりをこよなく愛する。そして沙也加に説教を食らう。
平仮名で書いてあるが、お子様が使えるような安全性はない。
『ところでこのヨメ度の高い娘とひとつ結婚でもしてみませんか』
適当期間のみ実装。


伊月笛子 声:大花どん
「聖域」メンバーに最後に加わった。巨乳眼鏡要員。ボウガン。
口裂け女は実は怖い話ということを教えてくれる。
妹がいる。
人物設定、シナリオ共に今作の最難関。その解釈は多種多様になされているが、統一した見解は出ていない。
『めがねのことなんてどうでもいいわ、バカにされることには慣れているもの。みんなめがね嫌いだもの』
ロミオの気持ちの代弁。
常時実装。


樋口章二 声:柏木誉
忍の「親友」。
何を隠そう、いつも集まる工場跡を「聖域」と呼び始めたのは彼。
多分この作品で一番かわいそうな子。
俗に言う不良だが、良い奴。
本作の涙腺崩壊担当。
称号:ピースキーパー章二
『寝言は死ねよ。』


塚本斎 声:薔薇珈琲
葉子の兄。無口。
昔は普通に話していた。
必殺技はクビキリブレード。
忍と一緒にチェ棋を作った。そのテキストはカオスの一言。
美乳好き。
『……………』


貴宮千鳥
忍の姉。
10年近く経過しても外見年齢がほとんど変わらない奇跡の人。


イマ 声:松田理沙
謎の少女。今作のキーパーソン。姉キャラ。
忍が「お茶会」で、不意に彼女の姿を見るところから物語は始まる。




以下、核心部分のネタバレあり






































イマたんは忍の巨大な脳腫瘍であり、戦争編における忍の並はずれた投射能力はイマがいてこそのもの。


バラバラであるにもかかわらずある程度整合性があるように見えるチャプターの配列は、イマの編集によるものである。
この作品は全編にわたって、本記事冒頭のような文章から始まる「イマジナリーネット内の文章」として描かれている。
時系列は「子供時代」「戦争編直前」「戦争編」「戦争編後の1年間」と分けることができ、全ヒロインのルートは実際に起こったことである。
要するにハーレム、全員とやっちゃったということである。


例として、笛子√1周目で忍は笛子に撃たれているが、それでも生きているのは、模倣子を人並み外れて駆使できる忍の再生能力の高さゆえである。
沙也加√1周目で沙也加が死んだような描写があるが、それでも沙也加が生きているのは、忍の持つ能力によって回復したためである。
忍の持つ能力は全人類のなかで最も高く、同じような能力を持つ「USER」達の王として育てられたということもあり、
これぐらいの事案については何ら問題にならない。
実際、忍は戦争編で、灰野によって頭を吹き飛ばされても無事だった。



しかし、戦争による激しい消耗の末、忍の記憶はバラバラになってしまい、上記の時系列を正しく把握できなくなったのだ。
バラバラの記憶を何とか繋げようとした結果、繋がっているようで繋がってない、奇妙な配列になったわけである。


戦争前に死んでしまった章二(笛子√で語られる)を生きているように錯覚して探し回り、
戦争でほとんどの人類が死滅し、通う者がいなくなってしまった学校の教室に「いつも通り」通っては混乱し、
廃人のようにさまよい続ける忍を、ヒロインたちが協力して見守っていたのだ。
忍が混乱しないように、回復を信じて……
沙也加を除き、ヒロインたちが初めて行為に及んだのはこの時である。


イマは忍の混乱した記憶を、戦争後1年間かけて修正し続けていた。
そして、「聖域」メンバーによる「お茶会」の最中で記憶の修正が終わる。
一瞬のうちにこれまでのすべての記憶を回想した忍は、その目にイマを見る。
イマは忍と対面し、真実を告げる。
すべてを知った忍によってイマは「アス」と名付けられ、静かに消えていった……



冒頭とラストシーンの「お茶会」は同じ時間、同じ場面である。
冒頭の「お茶会」の会話が、実は章二がいなくても成立するものだという事実は切なくなる反面、
ライターに脱帽したくなること請け合い。



この作品は、忍の混乱した記憶を追体験しながら、イマが行なった修正作業をプレイヤーが自発的にしていくことに意味のあるゲームといえる。
正解は最後まで示されず、「千々に撒かれたパズルのピース」を配列するのはプレイヤーである。
その配列から、個別のチャプターから、それぞれが価値のある要素を引き出していく。
それこそがイマや忍が望み、ライターが望んだことなのだろう。
それゆえにこの作品は、何度プレイしても新たな発見がある、何とも味わい深い作品なのだ。




なお、名作として親しまれながらも、この作品が未完成品であることは有名。
本作には3つのバージョンのOPムービーが用意されているが、チャプター名は
「IMA:category1」「IMA:category2」「IMA:category5」となっている。
3と4が入っていないという時点で、大半のプレイヤーは察しがついたと思う。
3と4から始まるシナリオには、あずさの母親や笛子姉妹、沙也加のシナリオの補完が入る予定だったらしい。


もしこれらがあったら本編の時系列が全て特定でき、難解さもいくらか軽減されていたかもしれない。
ただし、完成していたらプレイ時間がさらに膨大なものになっていたであろうことは想像に難くない。
Blogシステムも初期はもっと複雑だったそうな……。
しかし、開発期間が長引いた結果、シナリオの削減とシステムの簡略化をして発売に踏み切ったというのが現実のようだ。
PSP版でも、幻の3・4にあたるシナリオは一切追加されていない。









この『最果てのイマ』はイマが残した記録を、忍がイマジナリーネットにアップしたもの。
アップした時点でイマは消え、王の力も失われているので、本当にただ「アップしただけ」である。
それをプレイヤーはイマジナリーネットを使って見ている。
記録を残していた時にはイマに悪意があったこともあり、改竄されたような記述やミスリードを誘う記述もある。
笛子√が異様に難解でひねくれているのはだいたいこのせい。


ゲーム起動画面のENTERはブログ『最果てのイマ』への入り口。


PSP及びフルボイス版にはクリア後の無駄に凝ったおまけがある。「どこに?」と思った人は音声をオンにしてアルバムを見てみよう。



















よくできました。さようなら、人類。







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