狂歌百物語(姑獲鳥) - いにしえwiki
冷汗の 流れ灌頂に 立つ産女見て(語安臺有恒ごあんたい ありつね)002.腰紐に 化けし産女は 人の子を 己が子に取る 蜂によく似て(青梅 扇松垣)003.みそか子を 儲けし妻の 果しかも 闇の夜半にぞ 出づる産女は(頓々)004.世を去りて また新雪に 帰らぬは こぼれし水や
冷汗の 流れ灌頂に 立つ産女見て(語安臺有恒ごあんたい ありつね)002.腰紐に 化けし産女は 人の子を 己が子に取る 蜂によく似て(青梅 扇松垣)003.みそか子を 儲けし妻の 果しかも 闇の夜半にぞ 出づる産女は(頓々)004.世を去りて また新雪に 帰らぬは こぼれし水や
つの世に 逆さかさ柱を 立て置きて 上を下へと かへす震動(星屋)021.世に忌める 逆さかさ柱を 抜き替へて 家傾けし 人ぞ幸なき(青梅 扇松垣)022.上下を 違たがひて立てし 柱には 逆さま事の 憂ひあらなん(静洲園)023.逆柱 杢目も凄く なりひゞく 家の地棟の 丑三つ
に つき日星 三ツ目小僧の 出づる石浜(江戸崎 益友亭厚丸)010.姉さんは 何処だと問へば 本所と 言はれてみれば 三ツ目なりけり(青梅 扇松園)011.橋の名の 三ツ目小僧と 見るまでに 夜も深川の 方よりぞ来る(登麻呂)012.ふた親に 似ぬは鬼子と いふ顔を じつと見つめ
し 婆々アの智恵も 浅茅原 鬼も仏も 一ツ家のうち(語道堂花躬)014.鬼よりも 猶気味わろく 一ツ家の 婆々が仏の やうな持て成し(青梅 扇松園)015.あやしけれ 声は不思議の 一ツ家に 姥が風情も 目につくも髪(有恒)016.旅人の 閨は納戸の 片だすき 掛けてぞ婆々が 笑
縁から 天井の いたく更けゆく 夜の轆轤首(桜の本蔭芳)012.天窓あたまなき 化物なりと 轆轤首 見ておどろかん 己おのがからだを(青梅 扇松垣)013.こなたへと 差し来る傘の 轆轤首 骨も砕くる までに押さへん(語智窓腹光)014.目を廻す ばかりおどろく 轆轤首 長き玉の
016.青柳の みどりの髪を 切られけり 春風寒く 身はぞつとして(花前亭)017.切られたる 黒髪さげて 悲しむを 化物なりと 騒ぐ傍輩(扇松垣)018.誰れにかも 恨みいふべき 方ぞなき 唯憎しとぞ 思ふ髪切(衛門)019.ぬばたまの 黒髪切られ 襟もとの ぞつと身の毛も よ
004.転ばずの 守り持たねば 杖よりも 送り狼 先へ立てたし(桃江園)005.盆の窪 ぞつとさせけり 大口の 真神が原の 送り風には(青梅扇松垣)006.喰らふこと 片岡山や 餌ゑに飽きて あはれ旅人 おくり狼(館林 美通歌垣)007.己おのが影 さへ物すごき 枯野原 月もうし
また 雲井に高く 登るらん 二本の足を のせる五位鷺(風行亭家内喜)013.声のみか 形も鴈かりに 鳰にほの海 鳴き渡りつゝ 化かす五位鷺(扇松垣)014.一目見て あとへ下がりし 二の足の けして油断の ならぬ五位鷺(菱持)015.五位鷺は 己おのが位を 知らずして 六位の色の
げしとぞ聞く 文福は 尻の割れてや 茂林寺の釜(水々亭楳星)018.土用干し せんといたせば 黴かび見えで 文福茶釜 毛の生えてをり(青梅 扇松垣)019.あたゝまる 尻にいつしか 化けの皮 あらはしにけり 文福茶釜(楽成)020.腹鼓 客ふう狸の 発心ほつしんに 茂林寺の炉の
破る河童は もろこしの 吉野の川の 強物つはものにして(槙住)011.水ばなれ したる河童の 迷ひ子の 泣く泣く辿る 日でり川かな(青梅 扇松垣)012.見世物に なりても力 落さずて 出づる河童ぞ 人を引き込む(角有)013.みな人の 尻は狙へど 川中の 河童は鼻を つまむ肥
りつゝ 柳陰 いと物凄く 鬼火燃えけり(江戸崎 緑錦園有文)008.目に見えて 手にも取られず 燃ゆる火は 露と消えにし 人の思ひか(青梅 扇松垣)009.ものゝ肉 入れざる寺に なまぐさき 風をおこして 鬼火燃えけり(下毛しもつけ戸奈良 月潦亭水彦)010.綾なしと いふ闇の夜