脚本:山葵拓ノ助
出演: ・ロマ 役 ●●(役者名)
・ユウ 役 ●●(役者名)
・ライ 役 ●●(役者名)
公開日:2025/03/21
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作詞:リーヴリ
楽曲:suno
「clumsy minds(クラムシーマインズ)」
『clumsy minds:英語で直訳すると「不器用な心」という意味である』
作:山葵拓ノ助
【登場人物】
・ロマ 男 14歳(人間換算) 中学3年生 狼獣人
・ユウ 男 15歳(人間換算) 中学3年生 犬獣人
・ライ 男 28歳(人間換算) 看護士 虎獣人(チョイ役 上記二名と比べて出番は少なめです。)
【時代・時・場所】
時代:現代
時:10~11月ごろの夕方
場所:総合病院のとある個室の病室。
【その他注意事項】
獣人の種族は一旦こちらで指定はしていますが、それ以外の獣人でも物語的に問題なくできますので変えてしまっても大丈夫です。
【参考資料】
【キャラ設定や詳細・掘り下げ】
〈ロマ〉
中学三年生で運動やスポーツ万能。勉強は大の苦手。ユウとは幼い頃からの家族ぐるみでの幼なじみ。 基本的に気が強いタイプで口調は強く、一人称は『俺』。 受験生ではあるが、剣道部で素晴らしい成績を残している為、スポーツ推薦入学での入学が決まっている。 ユウに対して『LOVE』で好意を抱いている。ユウが大病を患っていることからもう時間が無いかもしれない為、「自分の気持ちを伝えないと...」と焦ってはいるが、ユウがどんな反応をするのか、拒否されてしまうのではないかと思ってしまい、怖くてなかなか踏ん切りが付かない。
《ロマを演じていただく際のアドバイス(追記事項)》
・脳筋バカ(褒め言葉)なところがある子です。
・基本気が強く男勝りな感じですが、勉強を前にするとタジタジになります。
・ユウに褒められたり、萌えたりすると動揺します。頑張って隠そうと必死になります。
・友情やその他色々に対してはすごく豪快だったり大雑把なのに、恋愛に関してはすごく奥手です。今まで感じたことのない複雑な感情でどうしたらいいのか分からないという感じです。
・自分の気持ち(恋心)を正直に話すことでユウとの関係が変わってしまいそうで怖いという気持ちをずっと抱えています。
〈ユウ〉
中学三年生で小さい頃から体があまり強くないせいで運動は苦手だが、勉強ができ、読書が好き。ロマとは幼い頃から家族ぐるみでの幼なじみ。 基本的に優しい口調で温和な性格。怒ったりはするが、ブチ切れるのようなことはほぼ無い。一人称は『僕』。 三年生への進級の時期に大病を患い、現在は病院に入院している。ロマに対して『LOVE』で好意を抱いており、ロマも自分に対して同じ気持ちを抱いているのを察してはいるが、あえてこちらから気持ちを言わずに健気に待っている。 (また個人的なエゴとして「ロマくんから告白されたい」というのもある。)
《ユウを演じていただく際のアドバイス(追記事項)》
・優しく、口調も穏やかで年齢に対して、思考はかなり大人びていて、物分かりも良く達観しています。ですが、裏で悟りや諦め等の気持ちをとても持ちやすい子でもあります。
・大切な人に対してだと、気持ちを抱え込みがちです。(大切だからこそ言いづらい)
・喜怒哀楽の幅は少しだけ狭め。特に怒りと哀しみに関してはかなり抑えるようにしている。
・ロウの前では一切出しませんが、大病を患った時から「あっ、僕もうすぐ死んじゃうんだな。」と思っており、その先の行動指針は「僕がいなくなっても大切な人がすぐに立ち直れるように」や「僕をすぐに忘れて前を向けるように」というところに重点を置いている。そのため自分の意志や我が儘をあまり出さない。そのせいか心に穴が空いたような感覚に襲われることがある。
〈ライ〉
ユウの担当看護士の一人。 ロマとユウの関係性を既にユウから聞いており、応援している。 ユウの残り時間(余命)が確実に近づいていることから最近は2人が気持ちを伝えられるのだろうかと心配している。
《ライを演じていただく際のアドバイス(追記事項)》
・二人の関係性を知っており、理解しています。応援はしているものの、進展しないため内心ヤキモキしています。
・ですが、看護士という立場の為寄り添ったり共感をしたりはするが、基本的に患者への人間関係に自分の感情や意見を干渉させたり、感情移入をしすぎないように自制している。
・基本的に普通の看護士で仕事もそれなりにできる。同僚や上司、医師にはかなり信用されているので色々任されることも多い。
(環境音が聞こえる。病院の病室であろうと思う音が聴こえている。加えてなにか病院の機器をいじるような音も聞こえる。)
(病室にはライとユウの2人が居るようだ。)
ライ:
……これでよしっと。じゃあ、ユウくんまた後で。
ユウ:
ありがとうございます、ライさん。ごめんなさい……いつも無理聞いてもらっちゃって。
ライ:
いいんだよ。君の担当看護士なんだから。ただし、いつも通り絶対に無理はしないこと。我慢できない三歩前まで来たと思ったら、すぐにナースコールを押すこと。いいね?
ユウ:
分かりました。
ライ:
あと、本当にこれで最後。次からは……
ユウ:
(遮るように。でも平静に。)大丈夫です。……分かってます。
ライ:
……。そうか、わかった。……そろそろ来る時間かな?じゃあ、また後で。
ユウ:
はい。
(横開きの扉が開いて閉まる音。ライは病室から出ていく)
ユウ:
……。今日は言ってくれるかなぁ。そうだと、嬉しいなぁ。
(再び横開きの扉が開いて閉まる音。)
ロマ:
よう!ユウ!
ユウ:
あ、ロマくん!いらっしゃい。
ロマ:
おう!お見舞いと......プリントと課題持ってきたぞ。
ユウ:
うん、いつもありがとう。あ、そこ座って。
ロマ:
おう。......よいしょっと。そういえば、さっきライさんとすれ違ったんだけど、何かあったのか?
ユウ:
あぁ…えっとね。バイタルチェックをしてもらってたんだよ。普段は別の時間なんだけど今日だけ面会時間にぶつかっちゃって……。今日、ロマくんが来るって分かってたからお願いして面会前にズラしてもらったんだ。
ロマ:
えぇ!?確か、その……バイタルチェックってやつはベットの上でも出来るんだろ?別にやりながらでも良かったんだぞ?
ユウ:
うん。そうなんだけど、何かしながらだとロマくんとのお話に集中出来ないし。
ロマ:
そ…そうか。別にそこまでしなくてもいいんだぞ?
ユウ:
ううん、僕がそうしたいんだ。ロマくんとお話するのすっごい楽しいから。
ロマ:
お、おう…そっか。そうか……。
ユウ:
あ、照れてる?
ロマ:
なっ!?そ……そんなわけねーよ!
ユウ:
えー、照れてるって!フフッ!
ロマ:
……。バカ。(完全に拗ねる)
ユウ:
(焦りながら)あぁ……!!ごめん!からかちゃって!
ロマ:
……。ふん。
ユウ:
(少し泣きそうな声で)うぅ……本当にごめん……お願いだから許して?
ロマ:
(泣きそうなユウに少し申し訳なくなりながら)……。わかった、今回だけだぞ。
ユウ:
うん……。……あ。そ、そうだ!ロマくん、プリントと課題、忘れないうちに受け取ってもいいかな?
ロマ:
ん?あぁ!そうだ、本当に忘れるところだった……。えーっと……はい、これな。
ユウ:
ありがとう。あと、僕もえーっとここに……よいしょっと。はい。提出して欲しい課題。いつも通り明日先生に渡してね。
ロウ:
了解っと。そうだ、今日はこれ以外にも渡すものが2つあるんだよ。
ユウ:
え?なに?
ロウ:
えーっとな……まず、これ俺のかーちゃんから。すりおろしのリンゴだって。確かくだものって食べても大丈夫だったよな? ユウ: うわぁ!ありがとう!丁度甘いもの食べたかったんだ。
ロウ:
良かった!
ユウ:
ねぇ、食べてもいい?
ロウ:
ああ。今スプーン用意するから。
ユウ:
うん。
ロウ:
……はいよ。こぼさないようにな。
ユウ:
うん。(リンゴを食べる)……うーん!甘くて美味しい!
ロウ:
(笑顔で食べてるロウに萌える)そ、そうか……。良かった。
ユウ:
うん!なんかすごいおいしく感じるなぁ。
ロウ:
あぁ、そのリンゴはかーちゃんの親戚の知り合いのリンゴ農家からのお裾分けで送られてきたからな。味はピカイチだと思うぞ!
ユウ:
あー…うん。それもあるんだけど……。
ロウ:
ん?
ユウ:
その……。僕、個室の病室だから、入院してからは食べる時は一人ぼっちで……。こうやって誰かと話しながら食べること、しなくなったから……。
ロウ:
……そうか、確かにそうだよな。
ユウ:
うん。でも、今はロウくんがそばにいてこうやって話しながら食べれるからすごく楽しんだ。だから、おいしく感じるのかも。
ロウ:
そうか……。あ!そうだ!!じゃあ休みの日とかは一緒にご飯食べるか?俺お弁当持ってきて一緒に病室で食べるとかどうだ!?
ユウ:
あー……うーん……。たしか、病院のルールでお見舞いの人の病室での食事は出来ないって書いてあったからできないかな。
ロウ:
あ、そうか……うーん……。
ユウ:
アハハ!ありがとう、ロウくん。気持ちはとっても嬉しいから、気持ちだけもらっておくね。
ロウ:
そうか…?わかった。……そうそう、あと、もう一つ渡すもの。はいこれ。
ユウ:
これ……何?
ロウ:
まぁ、とりあえず開けてみろ。
ユウ:
……?うん。(紙袋を開ける音)これ……お守り?どうしたのこれ?
ロウ:
あれ?言ってなかったか?先週修学旅行で京都に行ってきたんだよ。
ユウ:
あ!そうだ!言ってたね!
ロウ:
だろ?そん時のお土産。健康祈願が評判の神社でお前の病気が治るようにクラスメイトと一緒にお願いしてきたからさ……。その時に買ったんだ。
ユウ:
わー!ありがとう!京都、どうだった?
ロウ:
うーん、楽しかったけどなんか難しい話が多くて分からなかったな。
ユウ:
難しい話?
ロウ:
ほら、京都って神社とかお寺とか色々あるだろ?その説明とか色々あったんだけど……なにを言ってるのかさっぱりだったわ!
ユウ:
あー…そっか。でも、いいなぁ。ホテルとかでみんなでご飯食べて、トランプしたり、お話したりしたんでしょ?
ロウ:
おう。まぁ、やったけど……。
ユウ:
でしょ?僕もそういうのやりたかったなぁ。
ロウ:
でも、ユウも小さいころによく俺の家族とユウの家族で泊まりで旅行行ってただろ?
ユウ:
まぁ、そうなんだけどね……。でも、同い年だけで部屋に泊まるとかそういうのはしなかったでしょ?そういうのがいいなぁって。
ロウ:
あぁ、そういうことか。……できるんじゃないか?
ユウ:
……え?
ロウ:
あぁ、俺がお前の病室に泊まりに来れば全く同じではないけどできるんじゃないか?
ユウ:
え……でも、親とか病院とかがあるし……。
ロウ:
じゃあお互いに相談してみようぜ?病院のルールで禁止されているとかは分からないんだろ?なら、ダメ元で聞くだけ聞いてみようぜ。
ユウ:
………。そ、そうかな?
ロウ:
あぁ。もちろん、ユウがやりたいならっていうのが前提だけどな。
ユウ:
ロウくんはやりたい?お泊り。
ロウ:
あぁ、やりたい。
ユウ:
そっか……。うん、わかった。今度聞いてみるね。
ロウ:
よっしゃ!じゃあ、俺もとーちゃんとかーちゃんに聞いてみるな!次のお見舞いの時にお互い報告しような!
ユウ:
う…うん…!でも、上手くいかなかったらごめんね。
ロウ:
気にすんな!もし、出来たらいろんなことしような!トランプとか……枕投げとか!?
ユウ:
さすがに病院で枕投げは出来ないけど……。でも、うん。トランプとかお話はいっぱいしたいな!
ロウ:
へへっ、できるといいな……。
ユウ:
うん…そうだね。……ねぇ?
ロウ:
ん? ユウ: 学校のみんなって、今何してるの? ロウ: あぁ……そうだな。丁度、秋の文化祭も修学旅行も終わって学校行事だいたい終わっちまったからみんな勉強に集中してるな。部活もみんな引退しちまってるし。まぁ、俺は剣道のスポーツ推薦受かってるからだいぶ楽してるけどな。
ユウ:
そっか。……みんな前に進んでるんだね。置いてかれちゃうなぁ、僕。
ロウ:
……ユウ?
ユウ:
あのね。僕……今年の春からずっと立ち止まってる気がするんだ。病院にずっといるからかな……。ロウくんやクラスのみんなが普段の学校生活とか学校行事を過ごす度に、進路とかを決めていくその度に僕が知らないことがどんどん増えていって……。どんどん先に行っちゃって。いつか僕のこと、みんな忘れちゃうんじゃないかな……とか考えちゃうこともあって。
ロウ:
……。そんなことない。
ユウ:
え?
ロウ:
もし、クラスメイトがユウのこと忘れたとしても俺は絶対にユウのこと、置いてかないし、忘れないからな。
ユウ:
ロウくん……ありがとう。でも…。
ロウ:
でも?
ユウ:
今すぐじゃないけど。もしこの先、僕のことを思い出して辛くなることがある時はその時は僕のことを忘れてほしいな。
ロウ:
……俺は絶対に忘れるつもりはないぞ。
ユウ:
そっか、まぁでもさっきの事は頭の片隅に置いておくくらいで覚えておいてよ。
ロウ:
……。なぁ……。
ユウ:
ん?どうしたの?
ロウ:
……お前の病気って本当に治るんだよな?
ユウ:
もう…それお見舞いに来るたびに聞くじゃん。大丈夫だって。そんなに不安?
ロウ:
そりゃあ……幼馴染なんだから心配はするだろ!
ユウ:
気持ちは嬉しいけど……それにしては心配しすぎだよ。大丈夫だよ。心配しないで。
ロウ:
……。嘘じゃないのか?
ユウ:
……え?
ロウ:
お前はさ、すごい優しいし、頭が良いからさ……色々考えてて…それで俺の事を考えて嘘ついてるんじゃないのか?
ユウ:
……。ううん、嘘ついてないよ。本当。
ロウ:
本当だな?……嘘だったら、怒るからな?ぜっこー(絶交)するからな?
ユウ:
…うん。いいよ。約束する。
ロウ:
……。ユウ……お、俺な……。
ユウ:
何?
ロウ:
その……これからすごい変なこと言うかもしれないけど……俺……。
(ノック音が聞こえる)
ライ:
すみませんー!
ロウ:
え……?はーい。
ライ:
あ、ロウくん?入ってもいい?
ロウ:
だ、大丈夫です。どうしました?
(扉を開く音)
ライ:
ごめんね……お話中だった…?
ロウ:
あ、いや……大丈夫です。……どうかしたんですか?
ライ:
あのね……実は追加の検査が出てきちゃってね……。かなり早いんだけど、今日の面会はこれで終わりにしてもらってもいい?
ロウ:
え!?
ライ:
ごめん。色々言いたいのは分かる。でも、お医者さんからの指示だから……。
ロウ:
その検査ってすぐ終わります……?
ライ:
うーん、面会時間が終わった後に終わるから難しいかな…?あと、検査後だとユウくんも疲れちゃってると思うし無理はさせない方がいいんじゃないかな。
ロウ:
……そうですか、分かりました。今日は帰ります。
ライ:
うん、また改めて来てね。歓迎するから。
ロウ:
はい。
ユウ:
ロウくん、ごめんね。
ロウ:
お前が謝る必要ないだろ。じゃあ、またな。
ユウ:
うん。
ロウ:
あ!あの件について、ちゃんと聞いておくんだぞ!
ユウ:
……うん。わかった。じゃあね。
ロウ:
じゃあな。また来るから。
ユウ:
うん。
(扉が開いて閉まる音)
(ロウが歩いて帰っていく足音が聴こえる。その足音はどんどん遠くなってそして消えていく。)
(その足音が消えたのを確認した後に話をし始める。)
ライ:
ハァ……毎回追い返すのも心が痛むなぁ。……で、どうだった?
ユウ:
……ダメでした。ライさんの来るタイミング、完全にダメなやつでしたよ。
ライ:
えぇ!本当に!?……ゴメン!!
ユウ:
もー本当ですよ。たまにライさん空気詠み人知らずみたいな所ありますよね……。あーあ、これからどうしよう。もう、嘘つけなくなっちゃいますよn……(とても激しく咳き込み始める。更には喘息のような呼吸も混ざる)
ライ:
っ!!待ってね、今、呼吸器の機械付けるからね!
(人工呼吸器をつけるような音)
ライ:
ユウくん、大丈夫?声聞こえる?落ち着いて、深呼吸して。(可能なら背中をさするような音)
ユウ:
ハァ……ハァ……ハァ……
(少しの間)
(可能であれば、ここから先のユウの声は呼吸器越しで少しくぐもって聞こえる)
ユウ:
ゴホッゴホッ……ハァ……ハァ……ハァ……あ、ありがとう……ござい……ます。
ライ:
大丈夫?落ち着いた?
ユウ:
は、はい。何とか。でも、もう出来ないんですね。呼吸器の機械を外してロウくんと会うの……。
ライ:
……。ねぇ、ユウくん。
ユウ:
はい?
ライ:
どうしてそんなにロマくんに対して無理しようとするんだい?……ロマくんは正直に話せば、遅かれ早かれきっと受け入れてくれるはずだよ?呼吸器のことや寿命もそうだし……ロマくんの事が好きなことも。両思いなのは気付いてるんでしょ?なんで話そうとしないの?
ユウ:
……えーっと、色々あるんですけど……。結局は僕のワガママです。
ライ:
ワガママ?
ユウ:
はい。少しでも元気な姿を見せたいってのと、ロマくんから告白されたいっていうワガママです。
ライ:
でも……このままだとまずいんじゃないの?
ユウ:
……わかってますよ。でも、もう決めたことなので。でも、ここまで来ちゃったら僕は告白されない方がいいんじゃないかなとか思っていて……
ライ:
え?
ユウ:
その……僕に告白しない方がロウくんは僕に囚われずにこの先も生きていけるんじゃないんじゃないかと思うんです。
ライ:
……。ユウくんは?
ユウ:
……ん?
ライ:
ユウくんはそれで後悔しないのかい?
ユウ:
……僕はどうせ死んじゃうので後悔も何もないですよ。治る見込み、無いんですよね?寿命もそんなに無いって。次の桜を見ることも怪しいとか言ってたじゃないですか。
ライ:
確かにお医者さんはそう言ってる。でも、諦めるのは良くないと思うよ?もしかしたら……もあるから。
ユウ:
そういうのはいいんです。……その『もしかして』の希望に期待しちゃうと僕が苦しくなりそうなんです。死にたくない、奇跡が起こって欲しいって少しでも自分の中で感じて、怖くなって……夜寝るのも怖くなりそうなんです。
ライ:
……。ユウくん。
ユウ:
はい?
ライ:
私は……ただの君の担当看護士ってだけで君の人生にどうこう言える立場では無いし、言わないつもりではいたんだけど……。ただ、これだけは言わせて欲しいな。
ユウ:
……。
ライ:
今、このユウくんの物語の主人公は最後の最期までユウくん、君自身なんだよ。他の人ばっかり見ずにもっと自分自身の素直な気持ちと向き合って欲しい。もっと素直になってもいいんだよ。
ユウ:
……ライさん……。
ライ:
……さて、そろそろ行かないと。また何かあったらナースコール押してね。
ユウ:
あ、ライさん。一つだけ聞いていいですか?
ライ:
ん?なに?
ユウ:
その……さっきロマくんと病院で一緒にお泊まり会しようって話をしたんですけど……出来ますか?
ライ:
……。条件付きにはなるだろうけど、出来るかもしれないから一旦、お医者さんと病院に相談してみるね。
ユウ:
はい、お願いします。ロマくんも親に相談してくるって言ってたのでなにか連絡あればお願いします。
ライ:
了解。じゃあ、また後で。夕飯も後で持ってくるから。
ユウ:
はい。
(ライ、病室から出ていく)
ユウ:
……。僕の気持ち…かぁ…。
ユウ:
僕……我儘言ってもいいのかな……?本当はロウくんがすっごく大好きな事とか、ロウくんにずっと傍にいて欲しいって事とか、毎日泣きそうな事とか、なんで僕だけこんなことになっちゃったんだろうって事とか、嫉妬しちゃうくらいに普通の暮らしが羨ましい事とか……。
ユウ:
……ロマくんみたいな、大切な人に限って嘘を自然についちゃう事とか……全部話しても、受け入れてくれるのかな?
ユウ:
ロマくん……僕、どうすれば良いんだろう。もう、分かんないよ……もう……。
(ベッドの布団に潜り込む音が聞こえる)
(場面が変わり、どこかの公園。閑静な住宅街の音が聞こえてくる。ロウはそこに一人でいるようだ。)
(自販機で飲み物を買う音が聞こえる。そして、どこかに腰掛けて飲み物を飲もうと封を開ける。)
ロマ:
はぁ……。……。また、言えなかった。
ロマ:
……なんで素直に言えねぇんだよ。
ロマ:
それにアイツは嘘ついてばっかだし。脅しても動揺しないしさ……。……もう、分かってんだよ、もう身体がヤバいのも、時間が無いってこともさ。なのになんでアイツはいつも……。
ロマ:
……俺の事嫌いになったのか……?そんなこと……ないよな……?
ロマ:
……やっぱり怖いな、伝えるの。ユウ、どんな顔するんだろうな……。俺がユウのこと好きって言ったら……。今までの関係とかも変わっちまうのかな……。
ロマ:
……。あー!!考えるのヤメ!暗い気持ちになっちまう!!!(ジュースを飲み干す音)
ロマ:
ぷはぁーー!!!よし、帰ろう!うおおおおお!!次は絶対伝えてやるーーー!!!
(走っていく音が聞こえる。)
【完】
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