情けは人の為ならず(間違った使い方)

ページ名:情けは人の為ならず(間違った使い方)

情けは人の為ならず【間違った使い方】

登場人物

三杉 紗武 (みすぎ しゃむ)  猫人 20歳 大学生
今年の成人式を実家で過ごし新学期の為に都会に帰ってきた。
シャム猫人(ねこびと) 自他共に認める愛されキャラ、童顔で中性的な顔立ち。
学生時代は男女問わず告白された、大学に入り学生気分を楽しむために、
今はフリーを満喫している。


菅沼 猪服 (すがぬま いふく)  猪人 65歳 御老人
田舎から出てきた老人、道に迷ったような様子でオロオロしている。
猪人(いのひと) 大学に通う孫の様子と初めての都会の見物に訪れた。
身体は大きいがしっかり筋肉も有っての身体、なのでいざと言う時は素早い。
牙は有るものの、目が潤んで見えるため優しそうに見える。

ナレーター 

物語

【効果音 駅前の雑踏】

三杉(ミ)
ん?あの猪さん…何してんだろう、大丈夫か?、、、

ナレーター(ナ)
校庭に桜の花弁(はなびら)が踊る大学に近いターミナル駅、
新学期を迎えた三杉 紗武は大学に向かう改札を出た所で
年配の猪人(いのひと)を見つけた。

菅沼(ス)
ふぅ、、、ふぅ、、、ふぅ、、、ちょっといっぱい持ってきすぎたな~(汗)

(ナ)
恰幅の良い年老いた猪人が、駅前広場の植込みに設置された石のベンチで、
息を切らしながら座っている、その傍らには身体と同じ程の荷物が置いてある。

(ミ)
うわ、この令和の時代に風呂敷包みってどれだけ化石なんだよ(笑)
それこそ実家の爺ちゃん祖母ちゃんも今は持ってるか怪しいのに。

(ナ)
そんな風に見ていると猪人はその荷物を抱えようと持ち上げた、
すると緩かった結びが解け、中から果物や野菜が勢いよく飛び出し、
辺りに転がって行った。

(ス)
あ~~~ワシの荷物が~~~!だれか~助けてくれ~~~

(ナ)
その声に周りにいた皆が慌てて拾い出し、三杉も一緒になって拾い集めた。
帰ってきた野菜を受け取りながら頭を下げお礼を言う猪人に好感を持った

(ミ)
おじさん大変だったね~はい、これで全部ですか?
でも良かったね、みんな戻って来た?

(ス)
おぉ有難う、いやーお恥ずかしい、こんな往来の中で荷物を散らかして…。
しかしまぁこれだけ有るんで、少々戻らんでも大丈夫だと思うがの。

(ミ)
ん~そうなの?まぁ良いけど…、でもこれだけの荷物どうするんですか?
それこそ八百屋でも開けそうな量だけど~?

(ス)
はははっ、いや~これは孫への土産なんですよ、ワシの所で採れた物をあれこれと
詰め込んだらこうなってしまったんです(汗)

(ミ)
ふ~んそうなんだ~、でもさすがに一人で食べきるには無理がある様な気も~

(ス)
その時は孫がアパートのお隣さんにでも分けるでしょう。

(ナ)
話しながら猪人は荷物を詰めなおし、大風呂敷の端をしっかりと結んだ。
緩まない事を確認しもう一度ベンチに座る。

(ス)
さっ御礼に一つどうぞ、えっと君は、、、、?

(ナ)
そう言って包まずに置いていたミカンを三杉に差し出した。

(ミ)
わぁ有難う~、あっおれ、三杉紗武って言います。
皆はシャムって呼んでくれてる。

(ス)
おぉ~では紗武君と呼ばせてもらうよ、
ワシは菅沼 猪服、呼び方は紗武君の好きに呼んでもらって良いよ

(ミ)
じゃぁ菅沼さんって呼ばせてもらうね。

(ナ)
暖かくなってとは言え未だ日陰では寒さの残る駅前では長話をするには
早かったようで、二人は場所を喫茶店の隅に移した。

【効果音 喫茶店】

(ス)
しかし…良かったのか?見た所紗武君はそこの獣央大学の学生の様だが、
もしワシの為に授業をサボったとか言うならワシは怒るぞ。

(ミ)
う~ん確かに講義受けに来たんだけど、菅沼さんの荷物を拾ってたら、
講義始まっちゃいました、まぁ単位は余裕あるし今日はバイトも無いので、
今日はもう帰って寝るだけかな

(ナ)
そう話すとまだ納得は行かないようだったが、もとはと言えば自分が原因なので
何も言えないでいた。

(ミ)
あぁ、そんな睨まないで(汗)、でも僕にとっては凄く嬉しい誤算もあったんですよ

(ス)
誤算?なんだね?まさか授業がサボれてうれしかったとでも?

(ミ)
違いますよもう、本当に…

(ナ)
ここまで話すと急に言葉が詰まった、そして顔が少し赤くなる。

(ミ)
菅沼さんみたいな素敵な人と出会えたし、、、

(ス)
へっ?、、、、、、、、、、、、、ワシ?

(ナ)
何とも間の抜けた返事をした菅沼もまた顔が赤くなっていく
すると三杉は慌てて話題を変えようとする。

(ミ)
と…所で、さっき孫に会いに来たって言ってたけど、
獣央大学なんですか?

(ス)
あ…あぁ、そ…そうなんです去年から此処の大学なんです、
今日はそんな孫の顔と都会見物するために初めて、、、
え~あの~あれ、、新幹線?にのって来ましてな~
この駅までは来たんですが…

(ナ)
此処まで話したところで猪人は困った顔をし、悲しそうに言葉をつづけた。

(ス)
昨日から友達と遊びに行ったらしく、夜まで帰ってこないと言うんですよ、

(ミ)
え~それは大変だ!、まだ朝モックが終わってないのに、
夜まで待つのはさすがに辛いですね~

(ス)
そうなんです!孫には今日行くと伝えたのに忘れていたんですよ…
今から向かっても夕方になるらしく、そこまで何とか時間をつぶして
くれと。

(ナ)
半分涙目になりながら、途方に暮れている。
そんな姿を見ているとあるアイデアが浮かんだ。

(ミ)
ねぇ菅沼さんは夕方まで時間を潰せば良いんだよね?

(ス)
あぁ、孫はそう言ってたのですが、それがどうかしましたか?

(ミ)
僕が時間まで街を案内しますから一緒に観光しましょう。
ふふっ情けは人の為ならず、人には優しくですよ

(ス)
いや、流石に遠慮しますよ紗武君、それではあまりにも申し訳が立たない

(ミ)
今日はバイトも無いし帰ってもゲームして寝る位しか予定も無いし、
あ、寝るって予定には入らないよな~(汗)

(ス)
いや、しかし、、、良いのかい?
ワシには願ったり叶ったりな話なのだが、、、
本当に良いのかい?

(ミ)
うん、僕も地元じゃないけど菅沼さんを案内ぐらいは出来るから。
任せてよ希望が有れば連れて行くよ。

(ス)
紗武君、それじゃぁ今日一日お願い出来るかな?
勿論お金は全部ワシが出すから心配しないでおくれ。

(ナ)
二人の予定が決まり行き先を決めていると菅沼のスマホから
着信音が鳴り響いた、画面を確認すると顔をほころばせる。

【効果音】携帯の着信音

(ス)
ん?電話?、、、、、
おぉ孫からです、今日の事を伝えますので少し待っていてください。

(ナ)
そう言って席を立ち少し離れた場所で通話を始める、
その声は先度までと全く違い、同じ人物が話しているのか疑いたくなる

(ス)
おぅ…見えてるか?今からあのガキがオレを観光案内してくれるんだとよ
手筈通りに夕方ホテルへ誘ってそっちに向かう、それまでに用意しとけ。
「」
なぁに田舎から出て来て独り暮らしの世間知らずが一人
今日から数日間行方不明になったところで誰も気にしやしねぇ…
「」
あぁ…戻って来た時にはオレ等の言う事ならな~んでも悦んで従う
カワイイペットになってんだ、これほどいい商売はねぇな。
「」
ふっ、楽しみにしとけ、あの顔が狂った様にオレ等のシルを欲しがる所を…
想像するだけでもうたまんねぇや、今すぐにでも、、、
「」
判ってるよ、でもな、その時にゃワシは止められんぞ
本当に…情けは人の為にならねぇってのにな。
じゃぁ切るぞ、そっちは任せたからな。

【効果音 ピッ】

(ナ)
通話を切り振り返った菅沼はまた先程の顔に戻り
今までの話し方が嘘のように優しい口調で席に戻った。

(ミ)
どうでした?お孫さんは何て?

(ス)
忘れていたのは「ごめん」とだけ、それとこのあとはワシが全部出してやれと
ふふっ、やっぱり孫だなぁワシと同じ事を考えておったよ、「勿論!」と返したぞ

(ミ)
良いな~僕にもこんな素敵なお爺ちゃんが居たら良かったのにな~

(ナ)
ふふっ、では今日はワシが紗武君のお爺さんになって、孫の顔を見に来た事にしよう、
呼び方も紗武と呼んでも良いかな?

(ミ)
わ~嬉しいな~うん!いいよ~僕もお爺ちゃんって呼んでも良い?

(ナ)
勿論!ワシもこんなかわいい孫が出来るとは、本当に嬉しいよ。

(ナ)
互いに幸せそうに話し笑い合っている。
そして二人は店を出て、街の中に消えて行った。
空は雲一つない快晴に包まれ、雨の心配はなさそうだった。

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