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ラオウは、漫画『北斗の拳』に登場する、架空の人物。
トキ、サヤカの実兄、ジャギ、ケンシロウの義兄であり、カイオウの実弟。そして忘れ形見に、リュウがいる。北斗神拳四兄弟の長兄にして狂える恐怖の暴凶星・世紀末覇者拳王。愛馬は黒王号。
戦いの際は、ザコが相手の場合は何人だろうと黒王の上からまとめて吹き飛ばす(同時に黒王もザコを蹴り飛ばし、踏み潰し、吹き飛ばしている)。また、レイやヒューイ、シュレン、腑抜けたふりをしたジュウザ等、かなりの実力を持った者ですら黒王の上からは降りずにそのまま相手をする。後半のケンシロウやトキ、コウリュウ、フドウ、心と力が甦ったジュウザ等、自分が認めた強者が相手の時のみ黒王から降りる。
北斗神拳を継承している他、カサンドラで数多の他流派拳法の伝承者・達人達より数々の奥義を奪っている。
翼の生えたコブラの紋章を掲げた拳王軍を率い、荒廃した世界を恐怖で制圧した。
「剛の拳」の使い手であり、北斗剛掌波や天将奔烈などの闘気を放射、射出する技を得意とするが、その闘気はレイの挑戦を受ける際、闘気だけでレイを怯ませ、南斗究極奥義 断己相殺拳の使用を余儀なくさせてしまうほど強烈なものである。
身長210cm、体重145kg、バスト160cm、ウエスト115cm、ヒップ130cm、首周り65cm。身長は公式設定だが、劇中では演出の都合などにより3~4mほどまで巨大化している事がしばしば。
原作では銀髪だが、TVアニメでは黒髪。パチスロやフィギュアなどでは金髪である。トレードマークは耳の部分から猛牛のように前へ突き出た鋭い角付き兜と巨大なマント。
その生い立ちや北斗神拳継承者候補となった経緯については、作中で矛盾する描写が幾つかある。しかしいずれにせよ、幼少期に両親を失い、その理不尽な経験から己の意に沿わないものは力をもってねじ伏せる、という思考を持つようになったのは確かである。「ラオウとトキの二人の内、養子に迎えるのはどちらか一人」とリュウケンに崖から突き落とされるが、気絶したトキを抱えて片手で崖をよじ登ってみせたエピソードなどは彼の性質をよく表している。
そうした信念を他人にも強要するところがあり、無抵抗を条件に助命を求めてきた村落の長を「服従のみの人生に何の意味もない」としてあっさりと殺害(アニメ版では生存)している[1]。自身に想いを寄せるあまり自害して果てたトウに対しても「自分が欲しければ、殺してでも手に入れれば良い」と言ってのけた。
幼少期の修行時代にもこうした面はあり、稽古で打ち倒したトキが涙を流すのを見て「泣くな!涙など流してはならぬ」と言い放っている。またケンシロウに対しては、彼がまだ幼いため修行はおろかリュウケンの道場に入ることも許されていなかった頃、リュウケンに無断でリンチ同然の修行を行い、これを目の当たりにしたリュウケンに「才なき者がいずれここから追放されるなら、それを分からせるのがこいつのため」と謝ることなく堂々と言い切った。
しかし、自ら片足を切断して差し出したファルコの願いを聞き入れて軍を転進させるなど、立場は違っても強い意志を持った人間に対しては敬意を払っている[2]。また、バランに目をかけたりシャチを可愛がったりするなど、意志が強く見所のある少年にも好意を示している。
その拳を封じようと追い詰めたリュウケンが病の発作に倒れ、ただ一人恐れた拳の持ち主トキもやはり病に冒され、天下統治の妨げとなっていたサウザーをケンシロウが倒してしまうなど、その覇道は運に恵まれていた一面もある。それを当人もどこかで自覚しつつ、天を目指す自分と、神もまた戦いたがっているとの強固な自負に変えていた。
だが、無想転生を身につけたケンシロウや、その後のフドウとの対戦などで、運や情けによって命を拾った場面では、それを屈辱として怒り狂うこともあった。
一方では慎重な部分もあり、後述するレイを含め戦う相手に「死兆星を見たか」と問い、「見た」という相手としか戦わなかった[3]。そのレイとの戦いでは部下がレイに倒される様子を観察することで動きを見切って完勝し、サウザーに対してもケンシロウとの戦いを観察して経絡秘孔の効果が現れない彼の秘密を見極めようとしていた。
後にケンシロウ、ヒョウと同じく「北斗宗家」の血統(オウカ、リュウオウを祖先とする傍流)であったことが明かされる。ケンシロウは修行時代のラオウを「失われた北斗の男」と評したほか、三度に渡り死闘を繰り広げたことで「あなた(ラオウ)が最大の強敵(とも)だった」と評した。また、リハクはラオウが無想転生を体得したことで「北斗神拳伝承者」としての才があると認めた上で、ケンシロウと合わせて「天は2人の伝承者を生み出した」と評した。
虎にさえ死を恐怖させてしまう剛の拳が故に、相手に死を覚悟させるケンシロウより、暗殺拳としての北斗神拳の継承者としては劣るとリュウケンにみなされた。
北斗神拳継承者争いでケンシロウに敗れると、その拳を封じようとしたリュウケンを惨殺し[4]「世紀末覇者 拳王」を名乗る。配下には、かつての義弟ジャギ、新秘孔究明に力を注ぐアミバ、カサンドラ獄長ウイグル等、力に惹かれた態の悪いごろつきが多く集まり、ラオウの軍団はまさに恐怖そのものであった。文字通り恐怖統治で構成された軍団なのでラオウを恐れるあまり迎合している集団であるが、ラオウの目の届く範囲では一定の秩序も保たれており、中にはリュウガのようなまともな配下も若干ではあるが存在している。
その支配形成の一つにカサンドラという収容施設を造らせ、反逆者の収容や、他流の拳法の達人から奥義を奪ったりして、それでいてどんな小さな禍根も断つというものがある[5]。
ただしその反面、ラオウの人柄や理想に惹かれたザクや赤鯱、バルガやリセキのような武将や側近といった者も少なからずおり、また幼少期のシャチやバランはラオウの力を見て、その強さに感心している。とりわけバランに至っては、ラオウの許可を得てラオウの北斗神拳を盗み、独力で北斗神拳を体得した。
また、ラオウという存在は拳王軍の将兵においても恐怖であり、ごろつきの類ですらラオウの目の前で命令に逆らって逃亡する者は事実上皆無であった(マミヤの村でケンシロウと引き分けに終わったのを、相打ちになって死んだと早合点した配下が「拳王の伝説が終わった」と逃げ出した一件を除く)。拳王軍の支配地域においてもラオウを頂点に治安は安定しており、メディスンシティーやアビダの村が無法地帯と化したのはいずれもラオウがケンシロウとの戦いで負傷し、療養のために隠遁してからであった。なお、アニメ版ではプーガルやモーガンの村が、アビダの村と似た状況になっている。
継承者争いで敗れ出奔した際、ケンシロウと別れ際にカイオウの存在を明かし、もし自分が再びカイオウに会う前に倒れ、ケンシロウがカイオウに会った時は自分の言葉を伝えるように頼んでいた。この時、ケンシロウといずれ拳を交える事を予見していた。
第1部終盤では愛ゆえの哀しみ、強敵達との戦いゆえの哀しみを背負い、北斗神拳究極奥義 無想転生を体得したケンシロウに対し、何者にも、神すらも恐れず力で全てをねじ伏せてきたラオウが初めて恐怖を覚え、それを克服せんと苦悩するラオウの人間らしさが見て取れる。
最終的に自分を恐怖させたものは「愛」との結論に至り、自らが愛するユリアを手にかけ、自身も哀しみを背負って無想転生を体得。恐怖を乗り越え、万全の体勢でケンシロウを北斗練気闘座へ導き、最終決戦に臨む。
互いに無想転生を纏った空前の大激闘の末、ラオウはケンシロウの無想の拳の前に膝を着き、自分を倒したケンシロウを「弟」として褒め称え、ケンシロウもラオウを「兄さん」と呼んだ。その時、殺されたはずのユリアが目覚める。驚愕するケンシロウとユリアに、ラオウは不治の病に冒されているユリアの秘孔を突き、あと数ヶ月だったユリアの命を数年にまで延ばしたことを告げ[6]、ユリアの残る余生は二人で静かに幸せに暮らせと声をかけ、最期は自らの秘孔を突き、その間際に己が生涯を省みて「一片の悔いなし」と総括し体内の全エネルギーを天に放出して立ったまま大往生を遂げる。その後の場面から、亡骸はトキが生前望んでいたように彼の墓の隣に葬られたようである。
ラオウがケンシロウとの最終決戦に挑む直前、哀しみを背負おうと最愛のユリアを涙しながら手にかけるさまは、拳王軍の面々に大いなる衝撃を与えた。実際にはユリアの延命のために秘孔を突いて仮死状態としただけであったものの、傍目にはあたかもラオウがユリアを殺した様にしか見えなかったため、ユリアの慈愛に心を打たれていた拳王軍の兵達はまだラオウが生存しているにも関わらず次々と武器を捨て、愛する家族の元へと帰っていった。
一方、拳王軍の中でも良心や慈愛とは無縁のごろつきの類に関しては、コウケツやジンバの例から見て、野盗として悪事に走ったものとみられる。
ラオウが信を置いていた赤鯱やバルガは、それぞれ独自の勢力を興すも、赤鯱は修羅の国へ新天地を求めて攻め込んだが果たせず、バルガは時代の流れを読めずに没落し、コウケツの農奴へと転落した。
ラオウの死と拳王軍の解体は権力の空白を生み出し、これに乗じる形で天帝ルイを元首とする帝国と、その軍隊である天帝軍が誕生する。その元凶である総督ジャコウは、かつて元斗の村にラオウが侵攻した際にその本性を見抜かれ、ラオウがファルコに殺せと言ったがゆえにあわや殺されるところだったという因縁がある。その因縁はジャコウがファルコに倒された後も、ジャコウの息子ジャスクがリンを人質にして北斗・元斗抹殺(ラオウとファルコが体得した拳の抹殺)を図る形で続いた。
また、かつてラオウと決別した実兄カイオウは、密かにラオウを修羅の国の救世主にでっち上げる「ラオウ伝説」を広め、この伝説でラオウを慕う民衆はラオウ襲来を聞いて狂喜し、カイオウに対して一斉蜂起に出るも、実際に修羅の国にやってきたのがケンシロウだということを知った途端に戦意が崩れて崩壊し、カイオウ配下の修羅達によって大勢が虐殺された。なお、カイオウやその配下はラオウが死亡したことを知っていた
母親は不明だが、ラオウにはリュウという実子がおり、修羅の国から戻ってきたケンシロウは北斗神拳の次期後継者としてリュウを選び、北斗神拳の真髄と、ラオウの生き様を説いた後、拳王時代の最も信頼出来るラオウの忠臣バルガにリュウを預けた。
ラオウの死を描いたアニメ映画『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』の公開10日前の2007年4月18日、東京・高輪にある真言宗の高野山東京別院で「ラオウ昇魂式」が行われた。遺族代表として、武論尊、原哲夫らが参列し、葬儀委員長は谷村新司が務めた。また映画でラオウの声を担当した宇梶剛士が弔辞を読み、声優として参加した角田信朗がラオウに捧げる演舞を披露した。これに伴い、ラオウは正式に故人となった。
なお、漫画のキャラクターの葬儀が本物の寺院(宗教施設)で営まれるのは初めての事である[7]。ラオウを供養する為として日本中から多くのファンが集まり、海外のファンも訪れた程であった。しかし、雑誌『PCangel』内のライターによるコーナーでこの件に対し「ラオウは最期に『天へ帰るに人の手は借りぬ』と言っているのに葬儀を行う(本人以外の人間が葬る)のはおかしい」、「ただの映画の宣伝に過ぎない」との記述があり批判的意見も少なからずあった。
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