海面上昇

ページ名:海面上昇

海面上昇(かいめんじょうしょう)とは、温暖化による海水の熱膨張などで海面が上昇する現象のこと。

目次

近年の海面上昇[]

海面上昇による影響は特に、ヴェネツィアなどの都市、オセアニアなどの小さな島国などで、深刻な問題となっており、マーシャル諸島は国土の80%が沈没すると予測されている。東京やオランダ、バングラデシュの一部などのように、海岸沿いに海抜以下の地域を有する諸国や都市にとっても重要課題となっている。特にバングラデシュでは国土の18%が沈むといわれている。

海面上昇の原因[]

海面上昇の主たる原因は海水の熱膨張であり、次いで氷河の融解、グリーンランド氷床の融解があげられる。単純に熱膨張や融解で上昇するわけではなく、海面の上昇または低下を考える上では、いくつかの要因を一旦分けて考え、それらをまとめて総合的に判断する必要がある。

  • 北極海や南極海などの海氷融解 : 海氷の多くは、陸上の河川から流入したり沿岸の氷山が溶けて流入したりした淡水によって塩分濃度が低くなった海水からできる。塩分を析出しながら凝固するので、海氷の塩分濃度は非常に薄く、元となった海水よりも濃度が低い。そのため、密度差により海氷は上昇する。上昇幅は塩分濃度の差=密度差に左右されるが、特に北極海では融解が進むほど海水自体の塩分濃度が下がるため、融解が進めば進むほど融解量あたりの海面の上昇幅は小さくなる。
  • 北極や南極の氷山融解 : 氷河由来の氷山の場合は、陸上から海に流れ出た時点で氷河の体積の9割弱程度海の体積が増え、融解後にはさらに塩分濃度差の分だけ僅かに海の体積が増える。
  • 北極や南極、高緯度地域、高山の氷河・残存雪氷・永久凍土融解 : 融解して水となって海に流れ出た分、海の体積が増える。
  • その他の海水への流入 : 陸上にある氷河底湖が流出すれば、その体積分だけ海の体積が増える。また、氷河内に土砂や水塊があった場合、融解に伴って一気に海に流入し体積が急に増えることが考えられる。
  • 熱膨張 : 温度によって熱膨張率が異なるが、4℃から離れれば離れるほど体積は加速度的に増える。
  • 蒸発量 : 海からの蒸発量の変化は、海の体積の変化をもたらす。間接的に降水量と関係している。
  • 地形の変化 : 体積が変化しない場合でも、海底の隆起や沈降、陸上由来の土砂の堆積など、海に接している地形の変化によって海面が上昇する。

2100年までの海面上昇量の予測は、IPCCの第3次報告書(2001)では最低9~88cm の上昇、第4次報告書(2007)では、最低18~59cmの上昇としている(これは下限のみの提示である[1])。しかしこれらのIPCCのモデルでは西南極やグリーンランドの氷河の流出速度が加速する可能性が考慮に入っておらず、また近年の観測では実際に大規模な融雪や流出速度の加速が観測されていることから、上昇量がこうした数値を顕著に上回ることが危惧されている[2]。2009年2月にはWMOが南極半島や南極西部で速いペースでの氷河の融解を報告すると共に、海面上昇量がIPCCの示した値よりも多くなり、今世紀中に最高80cmに達する危険性を指摘している[3]#南極氷床の融解も参照。

氷河期以後の海面上昇[]

  • 前回の氷河期はBC16000年頃に終り、その頃は現在よりも海面は100メートル前後低かった。
  • BC12000頃から海面の急激な上昇が始まり、8000年をかけてBC4000年頃までに100メートル上昇し海面が現在に近いレベルになった。
  • BC9200年頃からBC8000年頃にかけて1200年ほど比較的海面レベルが安定した時期があり、これは現在より45メートル低かった。
  • BC6000年頃には、現在よりも30メートル程度低かった。
  • BC4000年頃が海面の高さがピークに達し、この時には現在よりも数メートル海面は高かった。これはBC2500年頃まで続いた。日本では縄文時代の頃で現在より4メートル高かったという調査がある。[1] 平野部では場所によっては100kmも海岸線が現在の内陸部にあった。これを現在からみると、海面が上昇していたように見え、海が陸に向かって進んでいたので、日本では縄文海進と呼ばれている。
  • その後、海面は数メートルの範囲で3回上下を繰り返している。
  • 現在は比較的高いレベルにある。

海面上昇の影響[]

海面上昇は地下水にも深刻な影響をもたらす。直接的には海水の浸入による塩水化などの変質、すなわち飲み水や工業用水への利用が困難になることが真っ先に挙げられるが、意外に見過ごされているのが地下水位そのものの上昇である。つまり建物や地盤を支えている基礎部分にかかる浮力が増し、押し上げてしまう。すでに影響は沿岸部を中心に出始めており、ビルの基礎が浮き上がって傾いてしまうなどの被害が発生し始めている。

南極氷床の融解[]

南極の氷床への地球温暖化の影響に関しては、融解量を降水量が上回り、氷床が減少しない可能性も指摘されていた[2]。また寒冷化説などを論拠に地球温暖化による海面上昇を否定する主張も見られた(地球温暖化に対する懐疑論#氷河融解を参照)。しかし南極やグリーンランドの氷床の融解速度については不明な点が残っているため、IPCC第4次評価報告書(AR4)でも今世紀中の海面上昇量に関しては最低量の予測値しか載せていない[1]。しかしAR4以後、南極の氷床が予想よりも急速に融解していることが複数の報告によって指摘され、2006年までの10年間で西南極氷床の広い範囲で融解速度が59%速まっていることや、海へ氷が流れ落ちる速度が2003年までの10年で12%加速していたことなどが判明している[1][4][5][6]。また予測を上回る大規模な融雪現象も観測されている[7]。このためIPCCの報告書に記載されているよりも海面上昇量が顕著に増加することが懸念されている[2]。また西南極氷床(WAIS)は海水が下に入りこみやすいため、従来の予測よりも短期間で融解して最大6mの海面上昇を招く可能性が指摘されている[8]。こうした最近の観測結果を受けて、現状はIPCC報告以上に切迫した状況であるとの指摘も出ている[9]

出典[]

  1. 1.01.11.2「世界最後の日」のシナリオ、南極で氷床の融解が加速、AFP、2008年01月14日
  2. 2.02.12.2北極・南極の氷をめぐる危機・長期安定化に向けた対応の緊急性(08/01/28)
  3. 南極:温暖化の範囲拡大海面上昇加速もWMO報告、毎日新聞、2009年2月26日
  4. Eric Rignotほか、Recent Antarctic ice mass loss from radar interferometry and regional climate modelling、Nature Geoscience 1, 106-110 (2008)(上記記事内容の出典)
  5. Antarctic glaciers 'flow faster', BBC, 6 June 2007
  6. "Buried Lakes Send Antarctica's Ice Slipping Faster Into the Sea, Study Shows", National Geographic, 2007年2月21日
  7. 南極大陸で異常事態 大規模な融雪判明 温暖化の影響か(朝日新聞、2007年 5月27日)
  8. Huge sea level rises are coming – unless we act now, New Scientist、2007年7月25日
  9. 西岡秀三、日本 低炭素社会のシナリオ、日刊工業新聞社、ISBN 978-4-526-06090-8、P.188
  • 梶谷通稔 その2:氷山と水位と地球環境 あなたはビルゲイツの試験に受かるか?

関連項目[]

  • 海水準変動
  • 隆起と沈降
  • 洪水
・話・編・歴
地球温暖化
経過
地球気候史
氷河期 • ヤンガードリアス • 完新世温暖期 • 中世温暖期 • 小氷期 • 過去の気温変化その他
問題の経過
地球寒冷化 • 世界気候会議 • スターン報告 • IPCC第4次評価報告書近年の地球温暖化対策
原因
要因と
メカニズム
温室効果温室効果ガス)• 太陽放射太陽変動 • 日傘効果 • エアロゾルアルベド炭素収支(吸収源 • 森林破壊) • 海洋循環 • 大気循環大気変動ヒートアイランド地殻変動その他
考え方
放射強制力 • 気候感度
気候モデル
GCM
影響
対策
緩和策
排出量取引 • クリーン開発メカニズム • 共同実施 • 環境税 • 低炭素社会(オフセット • ニュートラル)• 再生可能エネルギーの利用 • 省エネルギー • 吸収源活動 • 二酸化炭素貯留 • 温暖化関連政策温暖化防止活動その他
適応策
枠組み
IPCC京都議定書ポスト京都気候変動枠組条約 • APP • ECCP • IUGG …その他
議論
懐疑論暴走温室効果スベンスマルク効果ガイア理論エコロジー • ホッケースティック論争
カテゴリ: 気候変動地球温暖化


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