0390 ハロウィン

0390

　秋の学校はイベント目白押しだ。
　文化祭のあとに結婚式が連続して、そしてハロウィン。
　ハロウィンは一般生徒のボトムアップで実現したイベントである。
　有志が集まり企画して、不死者に根回しをしてと言う訳だ。
　それに黒服の一部やら生徒やらが乗っかって、割と盛大なことになりつつあった。

　当然と言うとアレだけど、私の店にも参加の要請が来て、しょうがないなぁとなった訳である。
　コスプレに関しては、以前貰ったアレでいいかなと思うし、他の面々も乗る気だったので、それでもってお茶を濁そう。
　そんな話を担当のルイちゃんに話すと、「コスプレ割引ぐらいやらないと」と突っ込まれた。
　去年もなんだかんだで対応したし、コスプレ来店二割引セールを約束した。

　参加したい生徒は見事に浮き足立っている。
　ひとつだけいい事があるとしたら、一般生徒と天使との交流が多少なりとも進んだことだ。
　自分の手で作る事にしても、自分の稼いだお金で買うにしても、それは自分の人生を自分で動かしていく経験だ。
　そういう小さな経験は、必ず人生にとって意味のあるものになる。

　それでコスプレ規約が決められて流れてきた。
　当然露出厳禁だ。タイツで隠した場合はOKかと言うとそれもNGとのこと。あくまで校内イベントだと言う事と、タイツでも興奮する奴は興奮するからだとか。
　ガワコスは要所で頭を外す必要がある。具体的にはセキュリティチェックのある場所と、店内である。
　女装は禁止しないが、客観的に見苦しくない程度のメイクやむだ毛対策が求められる。
　自室以外での更衣は禁止、血糊などの周囲を汚損する畏れのあるものは使用禁止。
　武器等は撮影場所以外では隠さなければならない。
　黒服、警察他、現実の職業のコスプレは禁止。
　などなど、一般のコスプレイベントを踏襲している。

　そんなわけで当日である。
　日中から色々なコスプレが見られて、大抵は一般生徒がコスプレして転生者が撮影するみたいな状態になっている。
　転生者の方がコスプレ似合うじゃんと言う指摘は御法度だ。
　非番の黒服や天使達もいくらかコスプレしていて和気藹々としている。
　当然校内イベントなのでそんなに混み合ってないが、来年辺り一般公開するとか言い出さないか戦々恐々としている。

　校内を歩いてると、「ちさとちゃん着ないの？」と何度言われたことか。
「ふふふ、見たいときはお店に来るといいですね」
　そんなやり取りをしながらも、生徒達のコスプレを見るのは楽しい。
　そんな時に、つばきちゃんとに沙希ちゃんに遭遇した。
　他の転生者がそうであるように、沙希ちゃんがカメラを持ち、つばきちゃんは人気ソシャゲの妹系キャラのコスプレをしていた。
　私がつばきちゃんを可愛いと褒めると恥ずかしそうにしている。さっきまでノリノリでポーズ決めてたのに。
　そんなところに沙希ちゃんは「私が作った衣装なんだけど」と突っかかってきた。
　よく出来てるよとは答えたけど、「何か言わせたみたいになってる」と笑ってくるのだった。

　そんなじゃれ合いをしつつ、つばきちゃんも楽しんでいるようだった。
　いいじゃないかと思いながら、お店の準備を始めた。

「Trick or Treat」
　これを今日一日聞き続けることになるだろう。
　と言っても、本当のハロウィンは月曜日だと言うから、今日と日曜を跨いで月曜日まで対応する必要がある。
　去年用意して貰った衣装をみんなで着て営業開始だ。
　特別メニューはカボチャの煮付けとカボチャサラダ。ミートパイとアップルパイ。あとは駄菓子を山ほど用意する。

　コスプレでの来店で二割引に引っ張られて、転生者や校内の飲兵衛はワンポイントコスプレで入ってくる。
　ガチのコスプレの子は未成年者ばかりだから、お菓子とジュースで喜んで貰う。

　いつもよりちょっと客層が違うから変わった雰囲気で楽しい。
　私達のコスプレも写真を撮りたいと言う人が多いので、少し撮影タイムを設けたり、何か違う店になったようだ。

　顔なじみは「To be, or not to be」とか「お菓子はいいから悪戯させろ」とかいい加減な事を言うので、適当にあしらって、それでもそういうじゃれ合いも楽しい。

　校内なら夜間外出許可なんていらないから、結構遅くまでコスプレしている子もいる。
　楽しい文化だとは思うが、大丈夫か？