0367 共和国の移民

ページ名:0367 共和国の移民

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 共和国は独立から暫くして国内の状態が整うと、すぐさまODAやら海外からの留学生受け入れなどを行った。
 日本国がやってきて、そして国内から不評の多かった事業を何故継承したのだろうか? 日本国の国内でこのことが議論される事が多い。

 共和国ではこれに関して苦情を申し立てる人は少ない。
 何故なら、国内向けの恩恵の方が大きく、これらの支援が共和国のイメージアップに繋がっているからである。
 留学生支援は、量より質を求めていて、優秀な学生ならば学費免除や、返済不要の奨学金まで与えられる。一方、就労目的の留学は禁止されており、留学理由に関わる事やクリエイティブな事業以外での収益を認めていない。
 文化的順化を求められ、本国政府機関からの干渉も禁じられている。
 人はこれを体の良いスパイ養成だと言うが、実際、それに近い利益を見込んではいる。

 一方、ODAなどの援助は見返りを求めないものばかりである。
 尤も、これらの援助は他国の何らかの野望を阻止する為であったり、投資対象になるようなインフラ整備なので、これを以て国際社会にいい顔をする為だけとは言えない。
 有形無形の軍事的支援も行われており、プレゼンスは広く浅くを目標にしている。

 移民は日本国よりも進んでいる。
 これに対して国民からの反対の声は当然上がっている。
 今の所、日本国からの流入以外は、資本や高度な技術持つなどの人々に限られていて、また順化政策は(陰口を叩かれつつ)今のところ有効に働いている。

 こういうやり方は"いいとこ取り"だと批判する向きも多いが、これからは"使える移民の取り合いの時代"が訪れるのは間違いない。
 出生率の低下は、先進国、とりわけ東、東南アジアでは苛烈で、多くの国で人口置換水準に届いていない。
 勿論、共和国では出生率を上げるために、出産育児に対する金銭的医療的支援は、労働法や託児所の整備などにも大きく投資している。

 しかし、それで補えない人口は他から"奪ってくる"のが一番手っ取り早いのだ。教育するコストも向こう持ちで、生産性の高まったところで入国する人材は価値が高い。それこそ"日本人の血"に拘る非科学的な人間よりも。
 大体、日本人みたいに島に籠もった民族でも、他民族の血が混ざっており、縄文時代からの純粋な日本人なんてものは妄想の産物である。
 この手の国粋主義者は、自分に日本人である以上の価値を見いだせず、故に日本人と言う事に神的なほど価値を求めるのだ。
 こういう人は、自分が自分に対して思うほど、高潔でも礼儀正しくも忍耐強くもない。

 世界が優秀な人材の綱引きに執心する前に、共和国の存在感と有力性をアピールする必要がある。
 その為に、あらゆる投資を惜しまない。
 また、一旦居着いた国民に対しては、十分な支援と環境を与える。
 将来、共和国民が共和国民として自覚を持つのであれば、"単一民族国家"というイデオロギーに頼る必要がなくなるのだから。
 

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