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会見の反応でも、配信の反応でもそうだが、少しでもリベラルな発言があれば「あいつはサヨクだ」と非難され、そして少しでも愛国心を求める言葉があれば「アイツはウヨクだ」と叩く。
政治的な内容は万事こういうことだった。
「単に自分の党派性に合わないと言うだけですからね」
そう言って毎回スルーしている。そうしているウチに、そう言う人は面白くないのか、姿を消してネットの片隅でただ文句を言うようになるのだ。
「ネトウヨ嫌いは分かるけど、それで日本嫌い併発させるに至ると不味いなと思うんだよね。
実際の功績も見なくなるし、外国での間違った事を日本でも繰り返せと言い出してしまう。
歯が痛いのを嫌うのと、歯医者を嫌うのを混同させるみたいなものだよ。
ウヨクが嫌いとかサヨクが嫌いとか言うよりも、人の話聞かないクセに攻撃的になって、少し反論できないだけで人格否定を始めて、挙げ句仲間を呼んで袋叩きにしようとする所が気に入らないんだよ。
それは本当に、右も左もないところか、陰謀論者や何かの熱狂的なファンとか、極端な人々全員に共通する特徴なんだよ」
「善悪は全部グラデーションで出来ていて、そうでもないと貴方は完全な善か、完全な悪かの二つに一つになる。
自分の人生に一点の曇りもないと思っている人は、自分を省みる能力が極端に欠けているか、それとも嘘吐きかのどっちかだね。人間絶対に何か間違いを犯すし、どんな悪人にも何かしらの道理があるんだよ。
そういう人は自分が嫌いと言うだけで、自分の嫌いな特性を全部詰め込んで、これこれの理由だからこの人はダメだと、ありもしない事を批判するようになる。
党派性も全部一緒で、同じ党派だから同じ考えの仲間だと思うのは間違ってるし、逆に自分はこの党派だから同じ考え方をしなければならないというのも間違いなんだよ。
そういう人間は、自分の党派性だけを根拠に自分を絶対善として好き勝手なことを始めてしまう。
じゃぁ、なんでそうなるかって言うと、そうやって自分で考える事を放棄することが楽だからだよ。敵と味方を二分して、嫌いな方を徹底的に叩けばいいと思っている。
疚しさも悲しさも苦しさも、全部振り切って自分の正義で燃やし尽くせる。それは精神的な逃げ道なんだ。
そういう楽な道、逃げ道を選ぶ事は極めて幼稚な事だとはっきり言ってやらなきゃならない。
今日日は幼児向けのアニメでもそういう機微を表現しているというのに……」
「政治にとって本当に必要な事は、この人のこの部分は正しいから採用しよう、この人はこの部分が間違っているけど、そこを修正すれば正しくなる――そういう風に個別の問題を個別に、そして得意な問題を得意な部分で補い合って、全体として一番正しい、効率の良い、なるべく人を救う道を選びとる事なんだよ。
重要なのは、そこには党派性なんて必要なくて、感情よりも理性で事を進める事なんだよ。
何事にも情熱とか感情は大切だけど、その感情を最優先にすると、不合理な例外が沢山出来てしまう。そして、そういう例外は必ず悪い人間に利用されるんだよ。
逆に、人間は合理性だけでは生きられないから、その辺りを勘案しなくちゃならない。そこの調整を行うのが政治家の仕事なんじゃないかな。
そういう社会の実現のためには、思考や結論に対して近道をしようとしないで、自分で一つずつ考えなくちゃならない。
経験則や生存のバイアス、自然主義の誤謬とか色んな陥穽が待ち構えているけど、それを全部避けきった先に未来が開かれているんだよ。
賢い人は、自分の主義主張を広める事よりも、人々が納得した上で正しい答えを出すことに力を入れなきゃいけない。
世の中で賢いと言われる人で、そういう活動をしている人がどれぐらいいるだろうか?」
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