0322
今日の予定は、御堂さんの定例会談。今日から三日間の生物物理学の国際会議。表向きに出来ない要件で某国と某国の高官が会談。兼ヶ渕先生がアメリカ財界の要人と夕食会。行動党地方議員の勉強会。中功さんのところに剣菱銀行の頭取が挨拶。ざっとこんなものか。
芸能関係の子たちは事務所で打ち合わせる事が多いので助かる。逆を言えば、外で出来ない案件は、何かと配慮する事が多い。
校内病院の通院患者や講師関係、いつものお客さんが入ってくるが、これも予定通りだ。
入出荷倉庫には平常以外の荷物の出入りがない。
今の所、入構者リストの変更はない。通用門や巡回からの異常発見の知らせもない。
中央監視室への定時交信。
正面ゲートを開放。
駐車場に入ってくる車を確認。今日の国際会議のお客さんの一人だ。
続々と入ってくる。通院患者、真栄田さんは演劇部の世話の為に……あと遊びに入構。
続々とくる車や送迎バスを誘導していく。凡そ傭兵の仕事ではないが、ガチの仕事だけが学校の黒服の仕事ではない。
下りてくる人をロッカールームへと誘導。通信機器の類を預けて貰う。
ゲートを通し、登録の情報と一致することを確認。ボディチェックを行う。
スマホやパソコンの貸与。中で使うカードを発行する。カードは生徒や教員、転生者が使うのと余り変わらない。会計も出来るし、権限内での解錠ができる。
入構処理の仕上げとして、カードを機械にかざして、立ち入ることの出来る施設を再確認する。
"いつものお客さん"は既にカードが発行してあるので、その辺の手続きは簡易的だ。
通院患者は病院からのお出迎えのカートが来ている。
余計な所に行くなとは毎回言うのだが、必ず一定数道を外れる。ワザとやる人もいれば本気の方向音痴というのもいる。中央監視室が人を手配して誘導していく。
外国人の入構者も多いので、外国語を話せる黒服が多く配置される――否、日本人にしても何にしても、海外で傭兵経験のある人間ばかりだから外国語が喋れるのはほぼ常識だ。
門番なんて傭兵稼業に比べれば甘い仕事と思われそうだが、仮に武力攻撃があるとしたら、真っ先に正面になるのがここである。
極論言えば、今日空港からやって来る筈のバスがハイジャックされて、乗員が全部工作員に成り代わったとしたら、百名オーダーの戦闘員との交戦になり得る。警棒を持ったおっちゃんで対処というわけにもいかない。
来訪者のチェックリストが埋まっていく一方、退構する人々もいる。病院からの退院や仕事が済んだ人などだ。昨日までの日程での会談や会議があり、そのまま泊まっていった人達が出て行く。
このとき、持ち込んだものが減っていたり、校内から持ち出されたものがないかチェックが必要だ。情報メディアは持ち込みも持ち出しも禁止している。
取材絡みも基本的に中継か、校内でチェックしたものを会社へ送信するなどの対策をしている。
そういう入退構の処理をしているとあっという間に昼になる。
四交代制の午前五時からの任務はここで終わる。そして、午前十一時からの人が入ってくるのだ。
早めの飯を食って三勤の任務でやって来ると、アポなしの来訪者が来ていたりする。
不死者懐疑論者や陰謀論者の類は案外やってこない。彼等は体制に勝つことよりも、信者獲得と獲得した信者の慰撫が出来ればいいのだ。
問題はファンの"ような"人達だ。最近はいい加減落ち着いて来たが、物見遊山で学校見学出来ると思っている人もいる。
ファンだの好きだのと言い出すが、その理屈が通るのならテレビ局も撮影所もオールフリーって事になる。
余りにも聞き分けがないと警察に来て貰う事になる。
相手はこっちをただの警備員程度にしか思ってないから気楽なものである。
いつもの二人組がパトカーでやってきて、下界まで連れていくというだけのこと。
その間にも、仕事は入ってくる。
監視が目的だから、他の仕事はなるべくしないようになっているのだが、とは言え明日の入退構のリストのチェックや明日貸与する機材やカードの搬入はある。
今日戻ってきたものは、然るべき部署に振り分ける。
極秘の会談の方は、もう一つ別の門から入って貰う。
そちらは基本的に閉じているので、こちらから人を出す必要がある。
そういう場面で使える迎賓館があるので、そこへ直接入って貰う。勿論、セキュリティチェックは行うのだけど、こういうところに行く人はそれなりの人々なので、皆平等と言う訳にもいかない。
勿論、それ故に脆弱性と捉えられると困るので、盗聴対策などを徹底して迎賓館から一歩も外に出てはならないことになっている。
兼ヶ渕先生がやってきたので、いつもの通りに通す。
もう顔も覚えられてしまっている。
そこに剣菱銀行の頭取がやってきて、頭取がペコペコしているのを見せられる。
昼下がりには記者達が現われる。
会見で使う機材は、一度こちらに預けて検査を受けたものをこちら専用で使うことになっている。
なので、基本的に彼等は手ぶら、精々ノートとペンを持ってやって来る。
カメラも録音機材も会社へと送信する機材も全部、こちらで整えてある。
最近は記者会見専用の部屋を用意してあり、付き合いの長いメディアは自分専用のスペースを用意してあるぐらいだ。
退構時間が迫っている人に確認の電話を入れる。
もし泊まっていくならその手配が必要だからだ。
そうしていると三勤の仕事も終わる。
午後五時からの四勤は、基本的に退構する人を処理する事になる。時間通りに来ない人、予定変更で泊まる人が出ると言う連絡。そう言う人を処理していく。
その辺は大体織り込み済みだが、それでも食堂の都合などもある。まぁ、下のお風呂とイートインで満足する人もいるのだけど。
宿泊施設は迎賓館と、要人用の構内ホテルと、新設された構外のホテルとある。ホテル併設のホールは現在建設中なので、完成すれば少しだけ我々の仕事が楽になる。
夜も更けていけば帰る人も増えてくる。
転生者達も帰っていく。最近は絡まれる事もなくなってきたが、トラブル防止のために集団下校のような形になっている。
「お疲れ様!」
御堂さんの声で四勤も終わる時間も近づいたと思う。
一日は大体こんな感じで回っている。
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