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夏の間は外でも気持ちよく飲めたけど、この時期になると流石に寒い。
とは言え、店員は増えたので座席は増やさなくてはならない。
そう言う事情でちょっと工事をして、テントを張って、ビニールシートを張り巡らせて雨風を凌げるようにしたのだ。
電気ストーブを置こうと考えていたけど、雪ちゃんのアイデアでこたつ席を用意することにした。
基本グループ席だけど、相席上等である。校内ならそんなに問題になる事はないだろう。
あと、近付いてくるのはハロウィンである。
軽い仮装と特別メニューをやろうと言う事になる。
南瓜のサラダと南瓜の煮物でいいだろうと言うと、「おしゃれじゃないなぁ」と笑われてしまった。
炊いたのは"年寄り"の為に用意するとして、サラダはそれなりに工夫してくれるそうだ。
衣装は、ネットで適当なのを注文しようかと言うと、ネミちゃんが「それもこちらでちゃんと用意しますから」と言われてしまう。
なんだか、こういうイベントは私より若い子の方が向いているのかなぁなどと思ってしまう。
そんな顔をしていると雪ちゃんに、「慣れてきてるね」と笑われてしまった。
それで企画は始まった。ハロウィンまでの一週間だ。
料理も仮装も喜んで貰えた。
さて、そんな時に、生徒の一人が疑問を呈する。
「居酒屋で宗教の話ってしちゃいけないんじゃないんですか?」
勿論冗談だ。だけど、確かに日本人は信仰というモノを非常に軽く見ているのは確かだった。
それについては多少触れたけれど、深入りは何なら面倒な事になりそうだ。否、普通にそれを研究でもしたら楽しそうではあろう。
「うーん、居酒屋で宗教の話、政治の話、野球の話はするなってよく言うでしょ。
あれ、確かに殴り合いの喧嘩になるってのはあるかもしれないけど、もうちょっとありがちな話をするなら、それぞれに対して解像度の違いがあると、解像度の高い側が居づらくなっちゃうんだよね。例えばリアリズムを前提とした話をしているのに、右翼丸出しの話とか、スッカラカンな非武装中立論とか出されたら嫌になっちゃうじゃない?
そして、そういう場合、必ずいい加減な知識を先入観で補完しているような人は暴論を正論みたいに言っちゃうでしょ?
線形代数の話をしている横で、数学なんて役に立ったことないって話されたら嫌でしょ? そういう事だと思うよ」
彼は、私の話を聞いて納得すると、炒飯をお代わりしたのだ。
また別の生徒が転生者に絡んでいる。
「そんなに強いなら、スピリタスとか飲むんですか?」
それを私が窘める。
「お酒が飲めない人は、飲める人以上に、大酒を飲む事自体が楽しい事とか、価値のあることだとか考えない方がいいよ。
特に、このお店って、酔うためより美味しいお酒を呑むために来て貰ってるでしょ? そこに、ただ酔えばいいんだろう? って考え押し付けられたら気分悪いもの。
自分が飲めないものを冗談のネタにして、笑いが取れると思われるのも、人とかお酒を踏み台にしているようでぞっとしないね」
それにして、ハロウィンのコスプレ衣装が地味に凝っている。明らかに手作りで、ネミちゃんに「お金を払わなきゃ」と言うと、「気持ちだけで大丈夫です。写真さえあれば、みんな満足しますから」と言う。
同好会のこと、隠す気がないのかしら?
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