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Republic of Japanと言われれば、それは第二次大戦後、日本が分割された東側の国名だ。勿論冗談であった……赤の場合までは。
赤の場合が進む過程で、独立したとき国名をどうするか問題になった。
稜邦国と言うには一部地域だし、A県やその中心のN市を使うと言う手もあったが、悩んだ挙げ句に日本共和国と呼ぶことになった。
何だかんだで、日本人というアイデンティティは大切であるからこのネーミングに異論は出なかった。
大阪民国の前に日本共和国が出来た訳である。
共和国をどうするのか、国連やら主要国やらのエライ人が集まって、カルガリーで会談が行われた。
表向きには、国連加盟の時期や国作りの支援をどうするのか、そして、それは誰が主導するのかの議論であった。
しかし、彼等の関心事と言えば、武力としての転生者である。
今まで便利に使ってきたが、それは共和国ナシの日本がバッファとして無用の用を果たしていたからだ。
①日本はこの力を対外的に使わない。
②①に反しない限り、この力の使用に関して他国は日本に干渉してはならない。
③②に反しない限り、日本は他国にこの力の使用を制限してはならない。
日本国がこの立場を降りてしまう。しかも、転生者が自分で国を作ってしまった。
それで我々が好き勝手仕事を選べてしまうと、国際社会的には非常にマズイ事になるのだ。
そういう訳で、新しい国は中立国である事が望まれた。
中立国の立場から、国際社会が選んだ仕事をしろと言う訳である。
これは今まで茶番であった転生者の仕事の茶番具合が、より一層際立つ事になる。シナリオ通りに任務をこなす事が望まれ、それを期待されるからだ。
中立国の常として、重武装になるのは致し方ないが、それはそれとして、"特務警察"が組織化され、軍隊ではないことになる。
何処の世界に航空一個大隊や一個機甲大隊を持つ警察があるんだとツッコミを入れたいところではあるが、名前だけでも非武装中立である。この国の名前を称揚したい連中には好評である。
逆に警察として、これほどまでの重武装である意味があるのかと言う疑問に関しては、独立直後から頻発した扶桑会議によるとされるテロ事件によって、反論は出なくなった。
扶桑会議の事に関しては、赤の場合以前から、正確に言えば黄色の場合以降からきな臭い話が出ていた。
未然に防いだものの、幾つか暴力的な事件が起きていた。
それが共和国を守る事になって、付け入る隙が増えたと言う訳である。
初年度に爆弾テロが二件、防げたケースを含めれば十七件も起きていた。インフラを狙ったサイバーテロも、防げているが相当数起きている。
日本国との経済的結びつきは、年々高まっているにかかわらず、安全保障に関しての協力は出来ていない。
出稼ぎ労働者を我々が迎え入れる事が、両国の利益になっているが、しかし、そこで発生する治安問題に関して、日本国は負担を拒否しているのである。
この私兵とも民兵とも言い得る連中に対して、我々は秘密作戦を実行している。爆弾テロの犠牲者の十倍の数の、事件関係者の殺害を実行し、成功させた。
共和国も日本国もお互いに本件は触れないでいる。
だが、共和国が富めば富むほど、日本国の世論は先鋭化していた。
我々は、本来仲良くしたいと思わなかったがRFの指導に荷担する事になる。
RFにせよ、扶桑会議にせよ、兵隊にされているのは、低賃金でこき使われている若者達だ。
予想通り、近年日本国の大学進学者数は減ってきている。
奨学金の負担は年々重くなり、破産者による自殺が止まらない。
今まで隠していた階層化は、もはや誰の目から見ても明らかである。
この絶望的な状況で彼等は武士になりたかったのだろう。
国粋主義にせよ、革命戦士にせよ、極端な思想は常にならず者の最後の隠れ家だ。
愉快な話ではないが、扶桑会議にだってバックがいる。そいつをどうにかする訳にいかない以上、そういう組織をぶつけるしかない。
暗闘は国際社会を巻き込んでカオスになる。
日本の民主主義の後退は今日も進んでいる。
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