0251 紺屋の仕事

ページ名:0251 紺屋の仕事

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「お、紺屋くんじゃないか。こっちで働き始めたんだ。よろしくね」
 購買で働き始めてから、コンビニの常連だった生徒から声が掛けられる。働きやすいのか働きにくいのか……

 ニュースで知っていたが、不死者以外の生徒も入ってきているし、職員も増えている。なので、ちょっとしたスーパーマーケットぐらいある購買も手狭感が出ているのである。
 仕事はコンビニでやっていたのと似たようなものばかりなので、そんなに手間取ることはない。でも、なんでこんなに頭の切れる人がこんなところにいるんだよと思うことはちょこちょこある。
 購買の仕事だけではないと言うのが実情のようだけど、そう考えるとよく働くなぁとは思う。
 そう言うとワーカーホリックのように聞こえてしまうが、実際は有給休暇の消化を強制させる程度には、労働時間管理は法令を遵守している。
 休みの日も多いし、給料的にも非常に恵まれている。裏返して言えば、それだけのものを求められていると言う事だ。
 俺の性能で許されるだろうか? 色々と心配になってくる。
 他の職員さんに「まぁ、気軽に」と言われる。

 前から顔を覚えられていた事もあって、直接注文を貰う。
「紺屋くん、この前入ってた、赤色の缶のIPAってまた入る?」
「紺屋くーん。このシャンプー扱ってくれない? 通販だと入荷が安定してなくてさぁ」
 等々だ。
 それを見たパートのおばちゃんに「気に入られたね。いいことだよ」と褒められる。褒められたのか?

 それから不死者がらみの仕事は増えていく。
 時々、モノを運ぶのを手伝わされたり、記者会見の設営なんかにも動員された。
 確かに、何でもやるとはいったけど、こうも節操がないものかと思った。
「あれだよ、校内をあちこち見て回れるのは勉強になるし」
 確かに、校内の様々な機能が分かるようになって来た。
 いつだったかは、研究室に器具を運び込む手伝いもした。これで上挙母さんが研究職だと分かった。そこから数珠つなぎに職員の顔が連なっていくのが分かる――彼女たちみたいに顔を覚えるのは難しいが。

 記者会見にしたってそうだ。黒服の人が色々動いていて、それを御堂さんや踵さんが仕切っていたりする。

 学校の機能は奥が深い。全容を見ることは一介の職員には無理だろう。しかし、その広さを知る事は出来るだろう。

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