0249
「いや、なんでお金振り込む前に確認しなかったの?」
まさか、まさかである。私の偽物が登場した。
それは別に着衣者であるとか、何処かの中二病とかではなく、ロマンス詐欺の詐欺師である。
被害者の両親が、娘の動きを怪しんだ事から事件が発覚した。
当然、被害者の女性以外私だと信じていないが――証言によるとある日SNSにメッセージが届いたらしい。
問題のアカウントは、確かに私がやっていると思い込んでいたら、そういう風にも読めるなと思える内容が綴られていた。
偽の私は、普通の人と友達になりたいと言っていたようだ。その流れで、様々な相談をしたりされたりしているうちに、偽の私にのめり込むようになった。
最終的に、私が仕出かした"何か"の補填のために、預貯金七百五十万円を振り込んだ。
当然、それから連絡は途切れてアカウントは消され、偽の私は消息不明である。
これは不死者の沽券に関わるので、すぐさま独自の捜査を開始し、情報を警察へと流した。
結果として、三十過ぎの男性が逮捕されたのだ。
その報を聞き、被害者は泣き崩れたと言う。私が慰めに行く義理はないし、それはそれで厄介な事になりそうだ。記者会見で注意喚起するに止める。
「私に限らず、不死者が個人的関係を理由にお金を要求したり、借りたりすることはありません」
この騒動が原因で、類似の事件が同時多発していた事が発覚する。
犯人は被害者をどうやって探したのだろう?
"アカウントフォローで全員に何十万"とかそういうアカウントをフォローしたり、ズバリ詐欺メールのURLを開いたりとか、そういう人々のリストが世の中に出回っていると言う。信じやすい人は狙われやすいのだ。
真生ちゃんとルイちゃんは、自身の配信でも私と同様の注意を促したが、散々スーパーチャットでお金をつぎ込んできた人たちがそれを茶化し、ちょっとしたお祭りになっていたようだ。
さて、それで騒動は収まったのかと言うと、そうもいかなかった。
今度は、愛しの天使たちがやらかした。
複数の着衣者が自分に貢がせていたのが発覚した。それも一対一ではなく一対多でやっていたので「自由恋愛の範疇では?」と言えなくなってしまったのだ。
全員が退所していた訳ではなく、稜邦南中学校に入る予定の子もいたのだ。
退所した子の面倒まで見られないと言うのが正直なところだ。
しかし、この件をどうすべきか。
管理が法務省から移って、出て行きたい子は出て行って良いと言われた後、早速"そういう仕事"をしている子もいる。
それについて、どう釈明すべきだろうか?
つばきちゃんや私、政治部門の子たちが色々検討したが、あまり狙ったようなことを言わない方がいいと言う結論になった。
「職業選択の自由はありますし、退所退校を選んだ各人に対して、我々が何かを直接指導できる立場にはありません。
当校に於ける規律に関しては、新たなガイドラインを策定して遵守させる事を約束します」
彼女は近頃こんな役目ばかりだ。もう少しポジティブなニュースを伝えられるといいのに……
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