0245
「麗って、たまにうらら~ってモードに入るよね」
藍莉ちゃんがが麗ちゃんのことをいじっている。
麗ちゃんは「そんなことはないよ」と静かにバーボンを飲んでいた。
「じゃぁ、じゃぁ、もっと飲んで!」
と悪乗りするのは琉璃ちゃんだった。
「やめなよ」
当然止めるのは篤稀ちゃんである。
「アイドルの方はどうなんです?」
私が尋ねると、命ちゃんが「余裕、余裕」と笑っている。
この前、東京の番組で自衛隊から24時間逃げ切ると言う企画をやっていたけど、アレは本当にアイドルの活動なのだろうか?
カモフラメイクした状態で歌と踊りをやらされたのを見るとそうも言えなさそうなので黙っておいた。
鈴ちゃんが「テレビ局にも、いい男がいないのよ」とぼやいていた。
貴方は男がいないぐらいが丁度いいのでは? と言う、世間の評判は口にしないでおこう。
残された初海ちゃんは、ボトルの芋焼酎とアイスペールを目の前にして静かに、そして結構なペースで飲んでいる。
私が「初海ちゃん……」と声を掛けようとしたら、雪ちゃんに「やめたほうがいい」と止められた。
誰もが彼女に触れようとしていないのが答えなのだろう。
藍莉ちゃんが、「それにしてもあんた達のアイドル姿を見せたい奴が多すぎて困るよ」と誰となく語りかけた。
命ちゃんが怖い笑顔で、「見せたい奴はみんな死んだよ」と微笑みかけた。藍莉ちゃんは流石に黙った。
「ま、いい顔はしないだろうね」
篤稀ちゃんが語る。
「そりゃぁ、いい顔はしないよ。死ぬ気で戦った相手がこんなにおちゃらけてたらさ」
それに対して琉璃ちゃんは「違う、アイドルも本気でやってるもん!」と叫び、命ちゃんも「篤稀はそんな風にアイドルやってるの?」と言う。
「私は巻き込まれた方だからね」
篤稀ちゃんは引かない。
「え、私も男が出来るって言うから始めたクチだけど?」
鈴ちゃんが混ぜっ返す。
「そんなこと言ってて、結構本気でやってる篤稀のこと好きだよ」
琉璃ちゃんが笑う。篤稀ちゃんは難しい顔で笑う。
「私はー」
鈴ちゃんが絡みに行く。
「あー、あんたは適当な男でも見つけなさい!」
「適当とかいやだー」
もう無茶苦茶だ。
「麗ちゃんお代わりいかがです?」
わちゃわちゃしてる連中を横目に、麗ちゃんを世話すると、とろんとした顔をしている。
酔うと酔わないとの境が凄い!
「甘いのちょーだい」
「夢一夜とかどうです?」
「じゃーそれ」
ああ、これがうらら~モードだなと思った。
向こうでは他の連中がわちゃわちゃしてる。
ふとしたタイミングで、藍莉ちゃんが初海ちゃんの肩に接触した。
その瞬間、空気が凍り付く。
初海ちゃんは空の瓶をカウンターの上に載せた。
私は新しい四合瓶を隣に置いて、事なきを得た。
初海ちゃんがどういう顔をしていたかは窺い知れないけど、藍莉ちゃんの血の気の引き方は尋常ではなかったのだ。
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