0237 ちさとの店で

ページ名:0237 ちさとの店で

0237

 お店の方は三人体制になって、お客さんも多く入れるようになった。
 木曜はひじりさんも手伝いに来てくれるようになって、平日はフルでお店をやれる。

「ちさとちゃん、繁盛してるね」
 繋さんに煽てられる。
「そうなんですよ、皆さんのおかげね」
「どいつもこいつも飲み助ばかりだからね」
 そう言ってる彼女も冷酒を追加したばかりであった。

「ちさとちゃんがもっとデレるといいんだけど」
 水鏡ちゃんがいい加減な事を言い出す。
「ちさとをデレさせたら、みんな半額とかやっちゃうんだろうなぁ」
 菊乃ちゃんが大声で笑う。
 そうなると、ハンパに聞きかじったお客さんたちが「お、遂にデレるの?」と口々に言い出す。

 そうしたら、梨帆ちゃんが「治世もデレないから困るよ」と得意気な顔をしている。
 それを聞いて、治世ちゃんは梨帆ちゃんの脇腹を思いっきりつねるので、彼女は飛び上がったのだ。
「お店壊さないでね」

「そう言えば、雪と上手くやってるみたいじゃない?」
 菊乃ちゃんが変な所に突っ込んで来る。
「仕事の事で色々と迷惑掛けているし、感謝しかないですね」
 と、普通に答えると、「真面目か!」と笑われた。
 その上で、「雪はどうなの?」と、雪ちゃんを呼び出した。
「どうなのって? 別に普通に同居人ですけど?」
 そう答える声色は平坦そのものであった。
「なんかこう、ないの? ここがいいとか、ここが腹立つとか?」
 しつこく聞くのだけど、雪ちゃんは「別にないですけど?」と同じテンションで答えるばかりだ。
 何か少しぐらいはコメントがあった方が嬉しかったなと思いつつ、そういう事を言うと、大袈裟に反応されそうなので黙っておいた。

「ま、ちさとちゃんは、まず雪をデレさせるところから始めなくちゃね」
 と、水鏡ちゃんに結論付けられてしまった。
「そういうのいらないですから」
 私がにべもなく言うと、「二人ともそういうキャラだと先行きが思いやられるね」と笑われた。

「唯ちゃんもそう思うよね?」
 このわちゃわちゃした話に引っ張り込まれる唯ちゃん。
「私としては、今のままでいいんじゃないですか?」
 と、常識的な回答。
「あら、面白くない」
「本音が出てますよ」
「本音がいちばんでしょ!」
 上手くまとめやがったな……

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