0230
"着衣者"は去年の年末を最後に姿を現していない。
それはそれで結構な事だ。
着衣者は転生者を名乗るので、出てこられたら一々面倒という事情がある。
黄色の場合までは我々が管理していたが、黄色の場合以降、紆余曲折を経て、法務省の外郭団体が税金を使って管理する事になった。職員はそちらへ移行したので、私達にとっては負担が一つ減ったわけである。
本当に減っただろうか?
着衣者を強制収容所に入れるのは罷り成らんと言う訳で、お解き放ちと言う事になるのだが、それはそれで問題を起こしそうな子ばかりである。そもそもが生活力のない。そうなると、ごく一部の自立した子を除けば元の収容所生活が性に合うと言う訳である。
尤も、税金でただ飯を喰らわせると言うのは余りにも体面が悪いので、"福祉ボランティア"として一週間から数ヶ月単位での"貸し出し"を行うようになった。
勿論、"寄付"を募るのだけど、それさえ払えば、孫のように扱えるとあって、高齢者に人気だ。
表向きは。
寄付総額の八割は、成人男性、それもそこそこの所得の男性によるものである。
そう言う連中が、一週間単位で老いない中学生相手に何をやるかはお察しの通りであろう。
彼女たちとしても、施設で不味い給食と質素な生活を強いられるのに比べれば、不快を我慢しつつ、概ね上等な食事と手土産に可愛い服だのアクセサリーだのを貰えたら満足なのだ。
勿論、例外もいるが、その辺は職員が上手く説明するのだろう。
法務省の外郭団体がよくこんな危なっかしい事をするなと思うのだが、何かあれば我々の所為にできると言う算段があるらしい。
秘匿名称プティアンジュとされているが、それを追った記者が一人二人行方不明になっている。残念な事だ。
今すぐどうにかするつもりはないが、我々を標的にするとは全く愚かな事である。故に、当該団体を監視し、利用者についても証拠を積み重ねている。
何か向こうから仕掛けるなら、数千の利用者が裁判に掛けられることになるだろう。
彼女たちには何の恨みもないが、暫くそのままでいて貰うしかない。
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