0207
ありあちゃんは、お酒補殆ど飲まないけど、私のお店に来てご飯を食べて帰る事が多かった。
彼女も一風変わっていて、学校に否定的なところがある。勿論、捻くれていると言う訳じゃないのだけど、ちょっと影がある。
「それにしてもナンだよね。
黄色の場合までは、誇りも知性も手の内にあったのに、世間に知られてからすっかり没落してしまった気がするよ。
学校に籠もる事も出来ないんだなってね」
私が茶々を入れる。
「また難しい事を言って-」
それに「そうでもないさ」と言うけど、説明はしてくれなかった。
私は温泉のこともあってぼやくことが多くなってしまった。
「好きな事だけしてたら駄目なのかなぁ」
と、言うと、「その先を見ているかどうかじゃない? 先がないのに義務感で付き合ってたら疲れるだけだよ」とアドバイスをくれた。
「あ、あと、今日、角煮があるし、炒飯できるよね?」
「あれ、まかないなんですけど……」
アドバイスを貰ったし、しょうがないので作る事にした。角煮の汁と角煮を使った炒飯だ。
邪道ではあるけど、中華鍋がないので、玉子ご飯を炒める方式で作る。
ラードを溶かし、ご飯を放り込んで、汁を目分量。そのあと刻んだ角煮と葱を入れて軽く炒めて完成だ。
これをやると何が厄介かと言うと、香りで私も唯ちゃんもお腹が空くと言う事と、他のお客さんもみんな頼みたがると言うのである……
「ちさとちゃん、それ欲しい!」
忙しいなか来てくれた姫ちゃんが目をキラキラさせている。
唯ちゃんが、「いいですよ。私の分をあげます」とサービス精神を発揮してくれた。
「もういいか、私達はナポリタンでも作ればいいや……」
それにしても"先"のことか。でも、好きな事が出来なくなるのは、みっちゃんも同じ事だ。
何か無茶な要求をされているような気がする……とは言え、雇われ店長だしなぁ。
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