0165 沼について

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0165

 VTuberとしての配信も、前回の「真生、ルイ、ルチル指示厨プレイ」という、一方的に私のストレスが溜まるだけの配信が功を奏して、随分と客層も大人しくなってきた。
 それで今回の配信は、沙希ちゃんと、如乃ちゃんに取材と言う名の、沼へのご招待話をする事にした。

「私の友達に、レースとか凄い子が二人いて、興味あるならちょっとおいでよって言われたんですよね。
 それでお邪魔したんですけど、人形が無茶苦茶あるんですよ。お宅に。
 勿論、レースとか刺繍とかもあるんですけど、凄く綺麗で可愛い子ばっかりなんですよね。
 それで、『ちょっと抱いてみる?』って言われたから、ついうっかり『はい』って答えちゃったから、もう大変ですよ。
 身長が50センチとか60センチぐらいの子なんだけど、大きさといい重さといい、なんかちょうどいいって感じなんですよね。
 なんか、顔までにやけちゃうし、その姿まで写真撮られちゃうしで、もう、なんか、普通に沼に引っ張り込まれている感じがして怖かった。
 レースの話だと思ったのに、いきなりドールの話されちゃってね。
 もっと小さい25センチぐらいの子とか、10センチちょっとぐらいの子とか色々あって、メーカーとか個人工房とか色々説明されちゃったんですよね。
 どれも味があって凄く可愛いんですよ!
 あと、アニメとかのキャラクターのドールとかもいてですね、そういう子が限定販売されるとか、そんな話もされて、いや、『それは色んな人巻き込む沼じゃないですか!』って話したら、それが目的だって言うから、本当に怖い。
 饅頭怖いみたいな話になっちゃいますけどね」
 コメントで、「小さい子なら場所も取らないしお手頃だよ」って言われて、「絶対、この人、ドール側の人間でしょ! 小さい子は家具とか小道具が際限なく増えて、ドール自体もシリーズ化してたりするから無茶苦茶増えるって話じゃないですか!}
 そうも言うと、「大きい子は満足度が高いから……」と来る。「満足度が高いからまた増えるんですよね?」。

「それでね、この人達、手芸とか得意だから、服とか縫っちゃうんですけど、可愛い生地を見つけると、ついついメートル単位で生地を買ってしまうし、倒産品なんかの生地をロール単位で買ってるんですよね。
 それで、倉庫がパンパンになってて、生地を消費する為に今度は、コスプレイ衣装なんかも作るようになったそうです」
 「生地が増えそう……」と来る。
「そう、それ!
 アバターの衣装作るから採寸しようよって言われて、言われるがままに採寸されちゃった……」
 コメント欄が騒がしくなる。
「そうそう、ドールの話に戻るんですけどね、お迎えしちゃうと、今度はそれを記録に残そうって思って、カメラが欲しくなるんですよね。
 最初は小さいカメラでいいとか思っていると、機能とか性能で段々大きいカメラが欲しくなって来ちゃうそうで、レンズとか照明器具とかそういうのに凝り出して、なんか、撮影ブースまで作ってるんですよ!
 広角レンズが欲しいとか、単焦点レンズが欲しいとか言って、もう、何十万円のレンズとか買っちゃったりしてね……
 あと、写真始めると、フィルムカメラも気になり出すみたいで、古いカメラ自体は安く買えるんですけど、今のご時世、フィルムそのものも現像にもお金が掛かって、それもそれで怖い沼だなって」
 カメラの話に移ると、「レンズは一度お金を払ったらずっとタダで使えるので実質無料」とか「レンズは資産だから」と気の違ってしまったコメントをされた。
「二人の話じゃないけど、コスプレも撮影に拘り出すと、遠方に出掛けていって、早朝とかそういう限られた時間に、結構山奥みたいなところまで行って過酷なロケを敢行する人もいるそうですね。
 合わせとかやると、凄い人数集まったりして、そうやって良い写真を撮るのが楽しいって世界もありますね」
 「ちさとちゃんもコスプレデビューしたら?」と言う話があったので、丁重にお断りした。
「衣装を作ると、色んな道具が欲しくなって、特にミシンも沼なんですよね。
 私みたいに素人からすると、ミシンなんてみんな同じように見えるけど……って、カメラもそうなんだけど、なんか色々あるそうなんですよ。
 普通に無難なミシンを使っていると、ロックミシンが欲しくなったり、直線縫いミシンが欲しくなったりするんですよね。
 あと、刺繍ミシンと刺繍ミシンのデータを作成するソフトとかが欲しくなって来て、もう、全部合わせると凄い金額になっちゃうじゃないですか……物欲は何処からでも引っ張り込もうとするんだなぁって」
 「レースの話はどうなった?」と巻き戻されたので、その話をする。
「レースとか編み物の道具って、実はそんなにお金が掛からなくって、鉤編み針のセットが千数百円。棒針編みなら百均でも置いてある。
 タティングのシャトルもセットで千円ちょっと。レース糸も一個数百円で色々と作れるんだけど……この糸がくせ者で、そんなにしないのでいっぱい買っちゃうんですね。
 色んな色があるし、グラデーションになっているのとか、ラメが入っていたりとかね。
 件の二人、学校に来る時、やたら荷物が多いなって思ったら、殆どが糸なんですよ。
 急に使いたくなったら困るからだそうなんですけどね……」

 それから、革細工とか刺繍とかパッチワークとか、それはそれは深い沼をあちらこちらへと誘導された話を続けた。

「でも、私、買わないつもりです。この前、寸胴と低温調理器を買ってしまいましたので!」

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