0120 つかさが海翔との付き合いについてちさとに相談する

ページ名:0120 つかさが海翔との付き合いについてちさとに相談する

「ちさとちゃん、海翔君がね……」
「お孫さんがね?」
 つかさちゃんが孫の話をする時、私はなるべく「孫」と言う言い方を強制させている。流石に孫を同年配相手にするのはよくないからだ。
「ちさとちゃん、厳しいね」
「楓さんといい、つかさちゃんといい、自分の子孫に甘くなるのよくないと思います」
 そうまで言うと、はははと笑って誤魔化された。
「それで、孫が私のメイド服を見たいっていうけどどうかな?」
 完全に惚気である。どうもこうもなかった。
「それ、見せたい前提で言ってますよね? と言うか、それを私に聞くって時点で、私に止めて欲しいからじゃありませんか? 別に私はいいですけど、態々私に悪態吐かれるのを分かってて言うのどうなんです?」
 嫌な言い方だ。
「本当に厳しいなぁ……悪かったよ」
 悪役を演じてる気分だ。
「つかさちゃん、こんなこと言いたくないけど、もうちょっと冷静になって。
 あの子もあの子で、ちゃんと自分で好きな人を見つけて、ちゃんとお付き合いして、上手く行けば家庭を作ってつかさちゃんのひ孫を授かる訳でしょ? そういう所で、つかさちゃんが入っちゃうのって大丈夫なのかな?」
 子供を作る事が正義みたいな世界観は、自分でも反吐が出る思いだけど言ってしまう。
「ちさとちゃんの言う事が全面的に正しいと思う。でも、私、ちょっと、冷静でいられないんだ」
「じゃぁ、なんで!?」
「なんでだろう。男の子供にテンションが上がってるんだろうね」
 楽しい事なのに、寂しい顔で話す表情が痛々しい。
「娘さんはなんて言ってるんですか?」
「ジュン……娘は、何も……」
 とぼけている。と言うか、本当に気付いていないのか?
「何も思わないわけないでしょ? もうちょっと親子で話し合ったらどうですか?」
「うーん……それがいいのかな?」
「むしろ、しなくちゃいけませんよ」
 私の顔は相当に厳しかったのだろうな……眉間に手をやって確認をする。
「ごめんね……本当にごめんね」


 つかさちゃんの様子が気になって、奈美ちゃんに話を聞くことにした。
「私も分からないけど、やっぱり自分の血を分けた子孫って可愛いんじゃないかな?
 それに、あの子、惚れっぽい性格なのかも知れないし」
 確かに、クズ男と子供を作ってしまう程度には惚れやすいのかも知れない。
「あんなにもベタベタしたがってるなら、それを認めてやってもいいんじゃないかな? 大人なんだし、引き際は弁えているでしょう? どうしてもダメなら、その時にひっぱたいてやればいいと思うよ」
 そういう意見は納得できるのだけど、そこまでの思い切りの良さを自分の中に見いだせないでいた。
「ちさとちゃんは心配性だね。相談されると、相談されるまま受け止めちゃう。
 人の事を考えられるのは立派だけど、もう少し人の事を信じた方がいいよ」
 流石にこれは心にチクリと来た。図星なのだ。

 その後、一人になって色々と考えれば考えるほど、つかさちゃんには随分と酷いことを言ったなと辛い気持ちになっていく。
 これはグズグズしていられないと、すぐにつかさちゃんに連絡を取る。
 学校が終わってから、つかさちゃんの家に向かった。


「つかさちゃん。何度も何度もキツイこと言ってごめんね」
 私の謝罪に「いいよいいよ」と笑顔を返してくれる。
「私もどうかしているなって自覚はあるんだよね。
 孫と接するやり方と、恋愛的に好きな人と接するやり方を同じにしちゃいけないんだなって。
 海翔君にはちゃんと断ったよ。
 お婆ちゃんに何やらせるんだってね。
 それと、ジュンにも言い聞かせるように言ったし、本当に気にしなくて良いから!」
 その時のつかさちゃんは、この前よりもずっとしっかりしていた。
「でも、やっぱり、悪いの私だし、ちゃんと謝らないといけないなって」
 私が食い下がると、少し暗めの顔をして答える。
「私も、ちさとちゃんに無理難題押しつけたのが悪いんだよ。そんなんだから、つかさちゃんにああいうことを言わせちゃったんだ。
 どうしても納得しないなら、一つ言わせて貰うけど……ちさとちゃん、人間の生々しさに憎悪を感じるのはやめておいたほうがいいよ。
 人間は、もっと色んな意味で汚いよ。でも、そういうのひっくるめてみんな必死で生きているからね。
 私を含めて気持ち悪く感じるのは、ちさとちゃんの感性だけど、それは表に出したらダメだよ」
 何から何まで正しかった。
 そして、ひとつとして反論が出来ない。
 人間経験が浅いんだなぁ。

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