0098 着衣者に対する話

ページ名:0098 着衣者に対する話

「楓さん、あれ何ですか?」
 コンビニに入ろうとするとき、黒服に連行される生徒がいた。
「着衣者じゃな」

 原因一切不明ながら、突然現われる偽の生徒。一般人が変身したらしいと言うのは分かる。
 具体的に前の人格を特定した例は少ないが、それでも可能性の高い例をかき集めると、「十代乃至七十代の男性若しくは女性」と言う、何の役にも立たない情報だけが残る。
 彼らが如何にして制服を手に入れたのかは依然謎だ。最初の観測は三十年前だが、それ以前に活動していた疑いもあるようだ。
 元の人格が残っていて、どうやら自分たちが偽物である自覚はあるらしい。
「前にもこんなのおったじゃろ? 見かけたら触らずに通報しろとな」
 そういえば、綾夏さんとハンバーガーショップに行った時にあったなぁと思い出した。
「触ると何かあるんですか?」
「特に何もないが、場合によっては暴れるからメンドイのじゃ」
 何か神秘的なモノを期待していた自分が恥ずかしい。

 考えると色々と怖い話だ。あるとき女子中学生に変身できたと思えば、本物の近くまで行って連行される。そして、同じく昔の人格がある同士で収容所に入れられる。そして、寿命的には永遠。

「結局、我々は有用だから自由にさせて貰ってるだけじゃよ」
 私も一歩間違えば、あっち側だったかも知れない。

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