カナちゃんとの仲が悪くないモノであったのはいいのだけど、色々あって彼女と麻雀を打つ機会が増えてしまった。
今日は楓ちゃんの家で遊ぶことに。
と言っても、楓ちゃんは出張らしいので、面子はちょうど四人となったのだ。
「ところで、楓ちゃんの仕事ってナンなんですか?」
ベタ降り中の十巡目、オタ風の西を切って尋ねた。
「あ、それ、私も気になります」
カナちゃんは立直後三巡目、中をツモ切りをして、話に乗っかった。
「カン!
おいおい、俊子ちゃんもカナちゃんも、東谷山家の者なのに、そんなことも知らないの?」
ななみさんがそれを大明槓して、二副露目となる。
「その分だと、学校の敷地が忌み地って話も知らなさそうだね」
嶺上牌をツモり、ひと思案している。
「ななみ、それブラフでしょ? どーせツモ切りなんだから、さっさと切ってくださいよ」
ツモ番が飛ばされた羊子さんが、ちょっと不機嫌にななみさんに突っかかった。
「今回は真面目に張ってないから!」
と、言いつつ、結局ツモ牌を打牌した。
「忌み地ってナンですか?」
そう尋ねると、「私から説明させる?」と、ななみさんがちょっと嫌な顔をしている。
「じゃぁ、私から言うよ」
羊子さんがそう言うと、王牌から槓ドラを捲った。
「やった! 乗った!」
ななみさんが喜ぶ。ドラ表示牌は六索、先にポンしていた七索がドラになった。
「ちょっとやめてよね!」
羊子さんがちょっと険悪な顔をすると、話を続ける。
「学校の敷地って、どうも人間に良くない者が湧き出る感じの所らしいのよね。
それを封じて鎮めているのが楓ね」
「へー、そんなことがあるんですね」
普通にそれを受け入れて、西を切る。
「いや、普通に受け入れなさんな。所謂、幽霊とか妖怪の話だよ?」
ななみさんが突っかかってくる。
そう言っているうちに、カナちゃんは、八索を切って言う。
「死なない人たちがそういう事いいますか?」
それをななみさんがまた鳴いた。
「ポン!
妖怪とか幽霊とか、現実に観察されないでしょ! 観測技術の問題だと言われたら何にも言えないけどさ」
またツモ番を飛ばされた羊子さんは、続けて言う。
「それがあるから学校があるんですけどね」
私がツモり、そしてまた西を捨ててベタ降りを続けると「何枚持ってるの?」とななみさんに尋ねられる。
「あともう一枚あります」
そう言って笑っていると、カナちゃんが険しい顔をして一索を切った。
「それは大丈夫なんだよなぁ……」
ななみさんが残念な顔をしている。
漸くツモ番が来た羊子さんが、頭を掻いていう。
「えー、こんな当たりそうなの来る?」
そこから長考モードに入ったので、ななみさんが説明を続ける。
「東谷山家が、この辺りの庄屋だったって知ってるでしょ? 同時に、陰陽師の血を引いていてね。学校の敷地辺りを忌み地だって言って立ち入り禁止にしてたんだよ。
そんなところに、若い女の子が沸いて出てきたらどう思うよ?
しかも、その中の一人が、その忌み地をどうにかするから、土地寄越せって言ったらさ……」
悩んだ末、羊子さんが九萬を切った。
「ロン」
カナちゃんが牌を倒した。
「低めです。裏ドラは……乗ってないか。立直平和だけですね。二本場なので三千五百点ですね」
「あー!」
「私の、中トイトイホンイツドラ六がー!」
自動雀卓なので、牌を中央に捨てた。「三本場!」とカナちゃんが宣言し、百点棒が添えられる。
ダイスが回り、牌が出てくる。雀卓の下ではガラガラと牌が混ぜられていた。
カナちゃんが第一ツモをしていきなり赤五筒を切る。
「えーーーーー」
一同がどよめき、そして、羊子さんが「いやだな」といいながら、發を切るが何の反応もなかった。
羊子さんは、胸をなで下ろして言う。
「あの人、それに味を占めて全国で、そういう土地とか物件とか解決して自分の地所にしてるって訳ですよ」
その後、ななみさんが九索を切ると、案の定カナちゃんがポンして、チャンタ系目指しているのが見えてしまった。
「貴方達の家の本業って、それだからね。曲がりなりにもそういう力持ってるって言ってたし」
ななみさんが不服そうな顔で言うモノだから、「楓ちゃんが?」と聞けば、「私は、血とか家系とかそう言うの、遺伝病とかしか信じないからね?」と答えた。
カナちゃんが七索を切って、羊子さんの番だ。
「遊んでいるように見えても、あの人仕事してますからね。一族はそれを管理するだけでいいだけですし」
そう言って、ツモ牌を中に入れると、南を切った。
「ポン!
あー、仕事かぁ。大人になりたくないなぁ」
カナちゃんが、オタ風の南を鳴いた。
「ベーシックインカムってどうなんですか?」
私が羊子さんに聞くと、「今のエライ人が考えてるベーシックインカムって、保険も年金も生活保護もなくなるけど、それでいいの? あんなの有り難がるのは、自分が大病や障害者にもならず、歳を取って働けなくなる事も、自分にはあり得ないって思ってる馬鹿だけだよ? 私達みたいに」なんて辛辣な答えが返ってきた。
「羊子にしては、随分と殊勝な言い分じゃない?」
ななみさんが、羊子さんの口ぶりを笑った。
羊子さんは、七索を切って言う。「今でも、社会は最終的に共産主義的になるべきだとは思ってるよ。でも、それが成立する条件がしんどいってだけでね」
ななみさんがツモって来た牌を見て、悩んでいる。
「条件ってなんですか?」
私が尋ねると、羊子さんが得意げな顔をして言う。
「労働と病気、障害、老化を極めて安価に解決出来る事と、犯罪や戦争の可能性がずっと少なくなるって辺りかしら。
労働はロボットがやってくれるとして、身体の方はななみの専門かなぁ」
急に話を振られたななみさんが、ハッとして答える。
「でも、羊子のことだから、イーロイとモーロック、フウイヌムとヤフー方式でもいいって考えてるでしょ?」
そう反論されると、微笑して答える。
「それで上手く統治できるなら、それが最高の答えだよ」
ななみさんが意地悪な顔をして返事をする。
「できるの?」
「それはどうでしょう?」
そこで、ななみさんが五萬を切ったら、カナちゃんからロンの声。
「トイトイ赤イチ、一万五百点です」
五萬を頭にしている以外は、ほぼ混老頭が完成していた。尤も、その場合の点数は二千点ばかり上昇するだけだから、さっさと和了ったのだろう。
「カナちゃん怖いねぇ」
羊子さんが笑っているが、二人でラス競争をしているんじゃないの?
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