0002 キャラクターを演じるということ

ページ名:0002 キャラクターを演じるということ

 あまりよく納得している訳じゃないけど、どうもこの世界では、その姿に見合ったキャラクターを演じなければならないらしい。
 楓が私に説明する。
「あそこに見えるあの双子、泣きぼくろがある方は前の世界で魔王やってて、もう一人がその右腕だったらしいな」
 肌の白く線の細い二人の少女は、アイドルのように可愛かった。
「そのように求められるからって、仲良すぎじゃないですかね?」
 見れば見るほど、二人のスキンシップの頻度が多いし、接近も多い。
「この世界におれば、次第に染まるさ……あの二人は多分、前からあんなんだったんだと思うのじゃがな」
 元が少女じゃないと想像し、苦笑するしかなかった。
「あとは、そうじゃなぁ、あのデカいのと、ちっこいの……儂の事はともかく……あの二人もなかなかの仲じゃしな。
 ちっこい方がさる世界で戦士だか勇者じゃったし、でっかい方は、各地を渡り歩いた知将と聞くな。
 いいじゃないか。身長差カップル!」
 "でっかい方"は身長が170を超えていたし、"ちっこい方"は140を下回るようであった。確かに仲がいい。そして、絵的にそういうのが望ましいと言うのもなんとなく理解できた。
「まぁ、儂らもそういうのに慣れているしの。じきに、お主もそうなるじゃろ」
 涼しい顔の楓だが、その涼しい顔で、あの二人と暮らしている事を考えると、何も信じられなくなる――否、誰も隠していないのだが。
 とんでもない所に飛ばされた事に戦慄するほかなかった。

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