登録日:2010/01/13 Wed 02:27:49
更新日:2023/10/19 Thu 11:52:57NEW!
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人間は、みんな音楽……
紅渡とは、『仮面ライダーキバ』の主人公で、劇中きっての苦労人である。
演:瀬戸康史
概要
首にストールを巻いている20歳の青年。
引き篭もり(気味のバイオリン職人)からスタートという、世にも珍しいライダー。
亡き父・紅音也が残したバイオリン『ブラッディローズ』の音色に導かれるように、人間を襲うファンガイアとの戦いに身を投じていく。
キバへの変身能力は第1話開始以前から持っていたようで、この手のライダーにしては珍しく、初変身についてのエピソードは特に語られていない。
自分が「この世アレルギー」だと思い込み、長年家に引き篭もっていたので周囲から『オバケ太郎』と呼ばれるほどのかなりの世間知らずである。
……が、第1話で早速この設定は麻生恵にブッ飛ばされ、不審者スタイルで魚の骨(バイオリンのニスに利用するために色んな物を集めている)を持って行ったところを不審がられ、
そのまま彼女にカフェ・マル・ダムールに連行、説教のコンボを喰らっていた。
性格は歴代主人公の中でもかなり内向的な部類に入る。ぶっちゃけ暗い。
純粋で優しい分、人一倍傷つきやすく、何かしら悩みを抱えていることが多く、また後向きな考えに積極的に動く事が多い。
また、非常に口下手で間も悪い事が災いし、753に嫌われたりジンジンな友人がやさぐれる切っ掛けを作ったり等、トラブルに巻き込まれる事が多い。
周りの人間に恵まれてないとも言えるが…(特に中盤の健吾)
実際、人間関係は本編でもトップクラスに複雑であり、終盤でもガンガン悩みの種がリロードされていった。
井上先生はホンマに容赦のない人やで…
ただ、「渡のお母さん」として面倒をみてくれる野村静香には心を開いており、彼女とは普通に話せる。たぶん一番の理解者。
名護さんが犯罪者を華麗に捉えた光景を見てすぐに弟子入りを申し込むなど、感化されやすい性格でもある。
「だって…名護さん…最高だから…」
「聞こえないな。もっと大きな声で言いなさい」
「名護さんは最高です!弟子にしてください!」
大事なことなので二回言いました。
そんな彼だが、変身時には中の人の演技力もあって目つきが変わる。戦闘中は変身前の弱々しい面影は全くなく、カッコいい掛け声を発しながら果敢にファンガイアに立ち向かう。
戦闘スタイルはフォームによって変わるが特にキバフォーム時はわかりやすく攻撃的であり、馬乗りになってひたすら殴るなど本当に容赦しない。
また本気で怒った場合や機嫌が悪い場合にはどういうわけかドッガハンマーを引き摺って相手の処刑に向かうことが多い。
その様子はまさに死神である。
とりわけ、フォームチェンジ後のアフレコは瀬戸氏の演技力が光るシーンとなっており、必聴。
上述の通り戦闘のセンス自体は悪くないものの、初期のほうは大体2話完結な話の都合上、なんだかんだで敵に逃げられるか753に邪魔されることが多く、
少なくともエンペラーフォームが登場するまでの戦績はあまり良くないこともありイマイチ強いイメージがない。
ちなみに筋トレを始めた時期に腕立ては10回しかできないことが判明。あんな風に戦ってたら嫌でも筋肉つくはずなのだが…。
講談社キャラクター文庫刊『小説 仮面ライダーキバ』では、TVシリーズでは謎だった渡の経済事情やこの世アレルギーの真相が明らかになる。
静香に異性としての好意を抱いたり、その好意をファンガイアとしての食人本能と勘違いして苦悩するなど、一歩踏み込んだ内面描写も。
この世アレルギーを克服した後は積極的に社会と繋がることを楽しむようになり、バイトを掛け持ちするようになるなど、TV版と比べるとやや前向きな性格となっている。
劇場版では民生委員の勧めで何故か高校に入学する事に。
自分の犯行をアンノウンになすりつけた刑事によく似た教師のクラスに入り、エロい声の将棋部員に惨敗したり、どう見てもはしゃいでるOBにしか見えない現役サッカー部員の顔面にスパイクをシュートしたりと稀有な学園生活を送った。
素性
彼の正体は人間とファンガイアとの間に生まれたハーフファンガイア(父親は音也、母は元ファンガイアのクイーンである真夜)。
劇中ではファンガイア形態は見せなかったが、変身する仮面ライダーキバや変身道具のキバットバット三世が蝙蝠であることや、エンペラーフォーム飛翔体についてデザイナーは「紅渡のファンガイア形態のつもりでデザインした」と証言していることから、蝙蝠のファンガイアになるのはほぼ間違いないと思われる。
両親が2人ともヴァイオリン演奏の達人であるためか、彼のセンスと腕もかなりのもの。
さらに母から授かったヴァイオリン製作のセンスも高く、作ったヴァイオリンの販売・修繕もしている*1ので、一応ニートではない。
隠れた名工としてその道の人には名が通っているらしい。
ただし、何の因果か、そのセンスを理解してくれた相手の殆どがファンガイアだったというオチなのがなんとも……。
劇中での活躍
主人公らしく戦闘シーンは多いが、よくショッキングな出来事に遭う為、たまに戦闘を放棄する。
しかし、周囲の人や経験によってそれを乗り越え徐々に成長していった。
だがある日、旧友の太牙がファンガイアのキング、渡とは友達以上で恋人未満の深央が現代のクイーンであることを同時に知り、
さらにその後、太牙が種違いの兄だと知る。
三角関係と自分が敵対する種族の狭間にある事に更に深く苦悩する。
さらに味方だと思っていた嶋や健吾から攻撃を受け、そのショックでキバット達を閉じ込め引きこもった。
周囲を拒絶するが、夢の中で真夜と再会、両種族に共通する魂の重要性を諭され、
人とファンガイアの架け橋となる為に戦う事を決意、嶋達とも和解する。
改心して怪我乗り越えてまで説得した健吾涙目。
でも、健吾とはまた友達になった。
しかしその後、太牙との戦闘中に深央が死亡してしまい、傷ついた彼はそれを自分が存在するからだと自らを責めるあまり、
次狼の計らいで過去に飛んだ際に父・音也と母・真夜を別れさせて自分が生まれないようにしようとする。ノリノリでコスプレしてる姿は必見。
しかし、文字通り命懸けで戦う音也の姿を見た渡は両親の自分への想いを受け止め、深央の亡骸に宿った深央の想いを知り悲しみを乗り越えた。
そして音也と共に過去のキングを倒し、赤ん坊の頃の太牙と真夜を守った。
父と別れ現代に帰った後は心身共に見違える程に成長し、生身でファンガイアと渡り合い眼光の威圧だけで敵を追い払えるようになった。
そして終盤、
ここに宣言する!僕がファンガイアの新しいキングだ!!
文句がある者は全力でかかって来い!ファンガイアの掟は力の掟。強き者が全てを支配する!!
現代に戻った渡は太牙からキングの座を奪う。
だがそれは青空の会の嶋に頼まれ、また自分で望んだこと。キングの座を狙うファンガイアから兄・太牙を守るためであった。
しかし、この頃の太牙は渡や深央への対応が原因で周囲との亀裂が深まりつつあり、折悪くそのタイミングで渡がキングの座を奪ってしまったことで孤立。結果、真夜に闇のキバの鎧の譲渡を迫るも拒絶され、彼女を手にかけた直後の悲しみに引かれたキバットバットⅡ世からダークキバの力を授かり、再び渡に戦いを挑んで来た。
キバ同士のぶつかり合いは互角に推移するが、離反したビショップや復活した先代キングの登場による混乱の中兄弟は和解、先代キングとの決戦に臨む。
その後、重傷を負いながらも生きていた真夜の見守る中、最大最後の兄弟喧嘩に興じて全てを清算した。
それから時が過ぎて名護さんと恵みんの結婚式でバイオリンを披露しようとしたが、そこでなんと未来から自分の息子、『紅正夫』がやってきた。
渡は名護さん、太牙、正夫と共に未来からやってきた新たな敵『ネオファンガイア』と戦うことを決意し変身する。
「正夫、アレなに…?」
『仮面ライダーディケイド』
9つの世界に9人の仮面ライダーが生まれました。それは別々の物語…
しかし今、物語が融合し、そのために世界がひとつになろうとしています。
やがて、すべての世界は消滅します。
ディケイド…あなたは9つの世界を旅しなければいけません。
あなたは全ての仮面ライダーを破壊する者です。
創造は破壊からしか生まれませんからね……残念ですが。
インフォーマーとして登場(一応、新番組予告で渡が出ることは視聴者にも知られていた)。
ディケイドによる創造と破壊、世界崩壊の真相を知っていた数少ない一人。
が、登場するや否や指パッチンで時を止めたり、キバに変身することなく逆さまの状態で悠々と歩いた挙句、
〆にはまるで意味の分からないことだけ言ってそのまま消えたりと、色んな意味で視聴者の度肝を抜いた。
第1話で門矢士に世界の崩壊していく様を見せつけ、それを止めるために旅をするよう伝える。
その後は登場せず、そのままフェードアウトかと思われたが、最終回で再び登場。
スーパーアポロガイストを倒してめでたしめでたし…と思いきや、光夏海の不穏な回想、そしてキバ(ワタル)、響鬼(アスム)が消滅。
士達が動揺してると、突然謎の声がどこからか告げる。
ディケイドの存在が、キバと響鬼の世界を消し去ったのです。
動揺する士。振り向くと、また世界が変わっている…。そして例によってなんの説明もなくゆっくり歩きながら再登場。
あなたは全ての仮面ライダーを破壊しなければならなかった。だが仲間にしてしまった。それは、大きな過ちでした。
今から僕の仲間が、あなたの旅を終わらせます。
そう言い放つや否や、彼はキバに変身すると、士に襲い掛かり……。
このように、今作の彼は非常に謎が多い存在として描かれている。
前述のように神のような能力はもちろん、投げかけられた質問(士が旅をしなければならない理由)にも曖昧な発言で終わらせてそのまま消えるなど、伏線も全くなく、最初から最後まで謎のままだった。
加えて、リ・イマジネーションとはいえ、ライダーが消滅していく様にも平然としており、人としての温かみが感じられないような表情などから、彼もまたリ・イマジネーションの渡なのでは……
と言われていたが、瀬戸氏曰く「『ディケイド』の渡は本編から数年後をイメージして演じたため、少し性格が変わった」とのこと。
完全な公式設定とは言えないが、ほぼ同一人物と見て間違いないだろうマジで何があったの……。
その後、映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』の『仮面ライダーディケイド 完結編』にも登場。
士が倒れ、世界が元通りになっていく様を満足気に眺めながら、有名なあのセリフで夏海とファンを絶望させる。
ディケイドに……物語はありません。
▷ 『ディケイド』における渡と、士との関連についての考察
『ディケイド』のシナリオが終盤に来て混乱していることもあり、渡の真意は非常につかみづらい。
だが、状況や言動からうかがい知れることはある。
まず、最初に士に接触した際のセリフを裏返すと、記憶を失う前の士に一度接触し、協力を取り付けていたらしいことが伺える(世界の融合が起き始めるタイミングを掴んでおり、士が「世界を破壊する」旅に出るのはその日だと伝えていたと思われる)。
そして終盤、夏海と海東に対して「ライダーの物語は時と共に消滅する運命でした。しかしディケイドと戦うことで人々の記憶に留まり、再び物語を紡ぐことができました」と告げているが、
第1話での士への発言、そして世界の融合による消滅を踏まえると、渡の視点では、
- 個々の世界=その世界に生まれたライダーの物語
- それらは1:1で対応する関係性である
ことが読み取れる。
士を送り出した理由は恐らく、物語が終わった=放送が終了したことで人々=視聴者の記憶から消える運命にあった『仮面ライダークウガ』~『キバ』の物語の枠組みを強固とし、
それらを繋ぐ新しい物語、つまりは9大ライダーのクロスオーバーを展開するための「共通の敵」としてディケイドを位置づけることにあったと思われる*2。
しかしこの場合、2年前の『仮面ライダー電王』はともかく、直前の『キバ』の物語が記憶から消えるということの説明がつかない。
逆に『電王』は当初の脚本では「原典と同じ世界」だったが、これは放送が終了しても映画が作られるほど人気が高い=人々の記憶から消えにくいということを表しているのかもしれない。
A.R.WORLDは原典の世界を解体・再構築し、その物語の核の部分を記号化させたものだが、わざわざ原典ではなくこちらを破壊させようとしたのは、文字通り「創造の前には破壊が必要」だからだろう。
原典を「破壊」し、A.R.WORLDを「創造」する。そして、リ・イマジネーションされた9大ライダーの物語を破壊し、共通の敵という自身の存在によって一つに繋げる。
それこそ、仮面ライダーディケイドに本来与えられた「全てを破壊し、全てを繋ぐ」役割だった。
しかし、『ディケイド』本編を見ればわかるように、旅に出た士が実際に成したことはそれとは逆。
A.R.WORLDそれぞれの物語に介入しつつも主導を奪うことはなく、それぞれの世界のライダー達に手を貸すことで物語を完成させ、自身は「通りすがりの仮面ライダー」として振る舞っていた。
その結果、実際に仮面ライダーが破壊された+そもそもこの現象に関わりがない『シンケンジャーの世界』を除き、A.R.WORLDは仮面ライダーの存在を残したまま、それぞれの仲間となったディケイドによって繋がった。
それにより、「通りすがり=共通の異物」であるディケイドに引きずられる形で互いに接近、融合崩壊を始めてしまった。
渡が終盤で他のライダーと共にディケイドに敵対したのは、本来想定していた「リ・イマジネーションライダーの破壊と、それに伴う新たな物語の創造」が烏有に帰したことで、自身を含む原典側のライダーで同じことを実行しようと決めたからだろう。
つまり、この場にいる平成ライダー達は最初からディケイドに倒され、破壊される覚悟で立ち向かっていったのである。
「世界の破壊者」「全てを破壊」などと謳われながらそれらしい挙動を士が見せなかったこと、それ自体が大掛かりな伏線となっていた。
最終的に激情態と化したディケイドにより全てのライダーは破壊され、そのディケイドも仮面ライダーキバーラの力を得た夏海の手で倒されたことでライダー達とその世界は復活し、「破壊と創造」は完遂された。
だが、肝心のディケイドは本来「異なる世界を繋ぐ」ための存在であり、士個人の物語は存在しない。
ともあれこの時点で渡の目的は完遂されたわけだが、知っての通り『ディケイド』の物語には続きがある。
リ・イマジネーションライダーやユウスケを始めとする仲間達の存在により復活した士は、対峙した鳴滝を前に「世界を巡る終わらない旅こそが、ここから始まるディケイドの物語」と定義し、仮面ライダーディケイドに変身した。
この時を以てディケイドは「ライダーの敵」から、人々の尊厳と自由を守る「仮面ライダー」となった。
渡の想定ではそれぞれの作品の枠組みはそのまま強固となるはずだったが、存続したライダー達の世界はA.R.WORLDを介して共通項となったディケイドが橋を架けたことにより、
1:1の関係性が破壊され、「平成ライダーシリーズ」というより大きな枠組みが創造された。
映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』や『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』での共闘はそれによって実現したものでなのかもしれない。
ディケイドはもはや個々の物語を繋げるための敵ではなく「平成ライダー10号」であり、同じ平成ライダーの名を持つことによって、渡の想定とは異なる形でライダー達の物語は繋がり、違った形で永遠となったのだ。
そしてここから10年後。
「創造は破壊からしか生まれない」という渡の言葉に倣うかのように、平成を統べる仮面ライダーの王が、全てを破壊し、全てを創造するための決断を下すことになる……。
「追記・修正行くよ、キバット!」
「キバッていくぜ!!」
[#include(name=テンプレ2)]
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*2 渡が第1話より前、最初にコンタクトした時点での士は記憶があり、まだベルトを持っていた=大ショッカーの大首領だったことを踏まえると、本来の想定では士が手を貸すのはA.R.WORLDにおける敵側だったと思われる。
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