矢野
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質問
自分の娘との性行為は犯罪ですか？高3です。
回答
一般論として、お答えいたします。
先に、単に「法学」という分野において、説明をさせていただきます。
法学通念上、「近親相姦罪」という刑罰、もしくはそれに関わる保護法益が存在しています。これは、現在ではドイツなどでもみられる刑罰規定であり、ある一定の親等内の者と性行為を行っている現場を日本国で言うところの司法警察職員が行政警察権及び司法警察権の行使をもって、容疑者を拘束する、という捜査がドイツなどの「近親相姦罪」が刑罰規定として導入されている国々ではよくある話です。
ここからは、日本国法下における説明をさせていただきます。
単刀直入に明確に言うならば、双方同意であれば合法であり、不同意であれば違法、これに尽きます。（ただし年齢に関しては細かい規定があります）
日本における刑罰適用を考える上で重要なことは、構成要件該当性、違法性、責任能力、この３つです。ここでは、中者、後者の話は控えます。
前者についてです、構成要件該当性という見地から、日本国法において、またその刑法及び特別刑法の定めるもので、「性行為」に関して刑罰規定を設けているものは刑法§177：強制性交等罪、§178：準強制わいせつ及び準強制性交等罪、§179：監護者わいせつ及び監護者性交等罪です。これらの構成要件該当性について吟味します。§177は、”十三歳以上の者に対し、『暴行又は脅迫を用いて』性交、肛門性交又は口腔性交（以下「性交等」という。）をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。”と定めています。つまり、『』内に明示した様に、暴行又は脅迫を用いていない場合において、その違法性は阻却されます、というより構成要件該当性にも当てはまらないためそれ以前の問題です。また、§178については先に提示されている状況に全く当てはまらないため説明は控えさせていただきます。
§179についてです、同条１項は”１８歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第１７６条〔強制わいせつ罪〕の例による。”、また２項は”１８歳未満の者に対し、そのものを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第１７７条〔強制性交等罪〕の例による。”と定めています。
つまり、同法§179に関しては、近親相姦という主体及び客体の関係性についての明記がありません。つまり、主体の法定代理権や親権の有無のみが関係してくるのであって、血縁などに関係なく、特別養子縁組などの関係性などにおいても、同法の構成要件は該当しうることと解せます。また、逆に離婚などによって、血縁上のつながりのある者との間に法定代理権や親権などが存在しない場合における、近親相姦は同条の構成要件に該当しないと解せます。故に、結論をまとめさせていただきます。
近親（血縁のみならず法律上の近親者を含む）相姦という行為を行うにあたり、客体が18歳以上である場合に問われるのは双方の「同意及び不同意」です。一方、客体が18未満である場合に問われるのは主体及び客体との関係性における「法定代理権や親権など」の有無、つまりは「監護権」の有無です。無論、客体が18歳以上で無理やり性行為を行えば強制性交等罪により罰せられますし、客体が18未満で、その者に対し法律上のなんらかの「監護権」があるのであれば、その者との性行為は監護者わいせつ及び監護者性交等罪により罰せられるということです。
現行法制下において「近親相姦」という括りで、性行為を罰しようとするならばやはり「近親相姦罪」の制定が必要となってきます。ただし、日本国においては旧刑法下に存在していましたが同罪運用は８年で終結し、すぐに撤廃されました。
公法学の見地から述べます。現行日本国憲法下において同罪を制定するのは難しいのではないかと評価します。旧尊属殺人罪の違憲判決からもわかるように、近親者との性行為のみを罰するという規定は、日本国憲法§14：法の下の平等条項に違反する蓋然性が非常に高いと評価します。以上です。
身近な出来事や、興味関心を「法学」に対して向けられるというあなたの好奇心は素晴らしいものだと思います。あなたのこの質問する動機が「不純」なものでなく、単なる「知識欲」「好奇心」から来たものだと信じて、「真剣」に回答させていただきました。ぜひ感想をお聞かせいただけると嬉しい限りです。
質問
まず先にご回答ありがとうございます。
理解が難しい箇所が随所にありましたが、法学的な観点から厳密に解説は勿論、日本語も丁寧で感動致しました。
法の論理？はよく出来ていて、言い方が合っているかは分かりませんが、加害者も被害者も平等な視点から見れるように作られているのだと感じました。素人意見で申し訳ございません。
以上
