南域に入り、深い森の中の道を進んでいくと突如空が開ける。
南域最大の都市、カンザーローブは豊かな緑に囲まれた街である。
建築物の多くは木製で、わずかに石造りの建物が見られる。
ここでは他の地域と異なり、明確なヒュームとエルフ、ツリーフォークの間の垣根が存在しない。
様々な種が渾沌としつつ、等しく森の恵みによって支えられている。
南域に入ると、高温多湿な環境になり、雨季には滝のような雨が降る。
この雨の恵みによって豊富な果実や動植物が生育する。
この地のツリーフォークの花人種は他の地域以上に色鮮やかで、華やかである。
エルフやヒュームも植物性の染料で染められた織物を身に着けており、やはり色彩が豊かである。
この地では鉱物の産出場所が限られており、多くの場合は魔導灯ではなく油による灯火を使っている。
植物性の油はカンザーローブの特産で、東域だけでなく帝国でも蒸気機関用の機械油として使われている。
また、この地の果実を使った酒は遠く王国まで届けられ、乾かした果実と共に交易品になっている。
しかし、多雨なこの地域は恵みだけでなく、他の地域にはない病ももたらす。
南域独特の病は「雨病」とも呼ばれ、外から入ってくる者は注意が必要である。
カンザーローブの外れにある石造りの建物が南域行政府である。
国土の大半を密林が覆う南域では、中央とは違った意味でツリーフォークの発言権が強い。
カンザーローブは歴史的にみると新興の都市であり、王家は存在するが市民の代表と見る傾向が強い。
その中でも、王家の補佐役として強い力を持っているのがツリーフォークのデロン・ナガルマである。
ナガルマ家はカンザーローブが帝国から独立して以来、その発展を見守ってきた家系である。
現当主のデロンはもう百歳を超える老ツリーフォークだが、国の生き字引として王を補佐する一人である。
もう一人の有力者はエルフの長老ガレ・ハで、彼はナガルマ家と共に南域を帝国から独立せしめたワガ
・ハの家系である。
この二者は長命のエルフとツリーフォークがヒュームの王家を補佐するべきという考えの元、カンザーローブの王となったフォーリナ・メルガの子孫を助け、国政を運営している。
現王はフォーリナ三世で、南域は初代フォーリナの頃から女王も珍しくない。
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