イエロー・マジック・オーケストラ (アルバム)(Alfa ALR-6012)は、音楽グループ「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」のデビューアルバム。アルファレコードから1978年11月25日にリリースされた。
解説[]
- 細野晴臣によるプロデュースで、坂本龍一と高橋幸宏と3人で楽曲を提供した。このとき高橋自身は作曲経験が浅かったため、坂本から作曲の方法を聞いたり、鼻歌を坂本が書き留めて譜面化するなどしていたという。細野主導で作業が進められたため、アルバム全体としてはアメリカン・ロックの雰囲気を持っている。
- 「東風」以降(LPレコードのB面)のノンストップ構成は、当時ディスコ向けメドレーアルバムをリリースしていたミーコの影響によるもの。また、ジョルジオ・モロダーのアルバム『永遠の願い』からも影響を受けたと細野はコメントしている。
- ジャケットデザインは脇田愛二郎。
- アルバム制作費は当時の倍に当たる800万円をかけていた。
- アルバムには収録されなかったが、お蔵入りした「インド」(仮タイトル)がある。
- 翌年アルファレコードがアメリカのA&Mレコードと契約。本アルバムをリミックスした『イエロー・マジック・オーケストラ (US版)』がホライズン・レーベルからリリースされる。アメリカでのリミックス版を「米国版」(またはUS版)、オリジナルを「日本版」と呼ぶこともある。現在ソニーからは「日本版」「米国版」の他、解説などを省略した廉価版として両方が入った2枚1組のものも発売されている。
- 2005年1月26日にバンド「といぼっくす」がアコースティック楽器で本アルバムを完全カヴァーしたアルバム『アコースティックYMO』をリリース。シムーンとマッド・ピエロではヴォーカルに細野晴臣が参加。コンピューター・ゲームの電子音までも生楽器で再現している。
ゴダール3部作[]
- 「東風」「中国女」「マッド・ピエロ」(日本語に訳せば「気狂いピエロ」)の名称はすべてジャン=リュック・ゴダールの映画タイトルから取られており、『ゴダール3部作』と称される。ただし、高橋がゴダール好きで、それに同調した坂本がタイトルを借りたのみであり、映画との関連はまったくない。
- ゴダール映画の仏語・英語タイトルは「東風」=「LE VENT D'EST(英語:Wind From The East)」、「中国女」=「La Chinoise」、「気狂いピエロ」=「Pierrot Le Fou(英語:Pierrot Goes Wild)で、YMOの楽曲名とは異なっている。日本人からは英語タイトルからゴダール映画を連想できるが、英米人は直接的には連想できない。これは、反米・共産主義者であったゴダールがアメリカ人に極めて評判が悪かったからとの考察がある(All About YMOとゴダール映画)。実際、映画「東風」「中国女」は共産主義礼賛的な部分、「気狂いピエロ」はアメリカ人をバカにした描写があって、3作とも大半のアメリカ人にとっては嫌悪感を催す内容となっている。このように、このアルバムのB面曲のタイトルからは非常に良く練られた販売戦略が伺い知れる。
- 1966年に国内公開された映画「気狂いピエロ」の「気狂い(きちがい)」という単語は1978年日本のテレビ・ラジオでは発言を憚られる言葉となり、実際、映画の紹介番組などでは「気狂いピエロ」の扱いには苦慮していた。ところがタイトルが「マッド・ピエロ」であれば、日本人は容易にゴダールを連想でき、かつ日本国内で題名をアナウンスもできる。
収録曲[]
- コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ” - COMPUTER GAME "Theme From The Circus"
(作曲:イエロー・マジック・オーケストラ)アーケードゲーム「サーカス」の音をシンセサイザーで表現。シーソーの音、風船が割れる音、失敗時の葬送行進曲などがリアルに再現されている。曲後半からドラムの音が挿入され、ゲーム音がリズムに合わさり、次の曲へと連結される。アルバム制作当初、実際のゲーム機の音を収録してみたが、面白くなかったので全てシンセサイザーで作りなおした。 - ファイアークラッカー - FIRECRACKER
(作曲:マーティン・デニー)細野晴臣がYMOデビュー戦略として、「チャンキー・ミュージック」と銘打ち、このマーティン・デニーのディスコ・カヴァー曲を売り出そうとしていた。細野の初期の構想メモに書かれている。アメリカでヒットした際には、デニーから3人に自分の曲をカバーしてくれたお礼と、ヒットを祝福する手紙が届いたという。 - シムーン - SIMOON
(作詞:クリス・モスデル / 作曲:細野晴臣)曲名はアラビア砂漠などで砂嵐を起こす熱風を指す。細野は映画スター・ウォーズのC-3POとR2-D2が砂漠を歩いているイメージで作った。曲自体はYMO結成前から断片ができていた。歌詞はこの曲のために書き下ろしたもので、細野からクリス・モスデルに「アラビアっぽい曲になるので、それにあった詞をつけてほしい」という主題の説明があった[1]。1996年、東京スカパラダイスオーケストラがアルバム『トーキョー・ストラット』にてカヴァーしている。 - コズミック・サーフィン - COSMIC SURFIN'
(作曲:細野晴臣)細野晴臣の作品(シングル『ライディーン』のB面に収録されているのはパブリックプレッシャーのバージョン)。元々は鈴木茂、山下達郎とのアルバム『PACIFIC』に収録されていた(そのヴァージョンもシングルカットされている)。細野はそのアルバム製作時点で既にテクノへの路線を目指す意思があったと回想している。高中正義がギターで参加している。 - コンピューター・ゲーム “インベーダーのテーマ” - COMPUTER GAME "Theme From The Invader"
(作曲:イエロー・マジック・オーケストラ)アーケードゲーム「スペースインベーダー」の音をシンセサイザーで表現。バックでは「サーカス」の音が流れている。 - 東風 - TONG POO
(作曲:坂本龍一)詳細は「東風 (曲)」を参照。 - 中国女 - LA FEMME CHINOISE
(作詞:クリス・モスデル / 作曲:高橋幸宏)詳細は「中国女 (曲)」を参照。トラックシートでは英語タイトルが「Le Chinoise」である。 - ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック - BRIDGE OVER TROUBLED MUSIC
(作曲:イエロー・マジック・オーケストラ)タイトルは細野晴臣。曲名を尋ねたところ、困ってサイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋 (Bridge Over Troubled Water)』(1970年)の駄洒落になった。ちなみに、仮タイトルは「アイ アイ アイ」である。 - マッド・ピエロ - MAD PIERROT
(作曲:細野晴臣)作詞者名はクレジットされていないが、ヴォコーダーで何かを歌っている。しかしこれまで一度も歌詞カードに掲載されたことがない。ベストアルバム『テクノ・バイブル』では「Instrumental」と記述されている。ちなみに、トラックシートではこの曲のタイトルは「MAD Pierrot - 気狂いピエロ」である。 - アクロバット - ACROBAT
(作曲:細野晴臣)躁気味のゲーム音と葬送行進曲が交互に流れる小品。“コンピューター・ゲーム”の音が背景音として使われている他、構成やメロディーの類似から「曲の終了とともにアルバムの頭に戻る」という意匠が施されている。米国版では削除された。コンピューターゲームの2曲とこの曲は同じ曲、「Computer アクロバットのテーマ」として録音されている。ちなみに、「アクロバット」とはアーケードゲーム「サーカス」の別名である。
参加ミュージシャン[]
- 坂本龍一 - キーボード、エレクトロニクス、パーカッション、オーケストレーション
- 高橋ユキヒロ - ドラムス、パーカッション、エレクトロニクス、ヴォーカル
- 細野晴臣 - ベース、エレクトロニクス、キーボード、アレンジメント
- 松武秀樹 - マイクロ・コンポーザー・プログラミング
- 橋本俊一 - ヴォーカル(「シムーン」)
- 高中正義 - エレクトリック・ギター(「コズミック・サーフィン」、「中国女」)
- 布井智子 - セクシー・ヴォイス(「中国女」:本業は当時のアルファレコード社長秘書。フランス語が堪能だった)
参考[]
- ↑ NICE AGE YMOとその時代1978-1984 ISBN 4-401-63080-7
外部リンク[]
All Abou Japan「テクノポップ」:「YMOとゴダール映画」
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