WoTBにおける車種の分類は公式には「軽戦車」「中戦車」「重戦車」「駆逐戦車」とされているが、運用面から、もう少し細かく分類できる。
その分類と、各々の運用について。
中戦車
中戦車は次の3つに分類できる。
近接系
中戦車の中では良好な装甲(主に砲塔・車体前面上部)と、早めの装填速度を備えているのが特徴。コメットやT-43あたりが代表例。
良好な装甲と言っても、HE貫通を防ぎつつ、中戦車同士や軽戦車との、動きながらの撃ち合いならば、たまに跳弾が期待できるという程度であり、棒立ちでの撃ち合い、ましてや重戦車・駆逐戦車との撃ち合いには全く適さない。あくまで中戦車なので。
なお、その砲塔や防盾の装甲により、ハルダウンでの防御も可能ではあるが、区別する点は砲性能にある。俯角、貫通、照準精度が良好でない場合、単発交換の勝負となりがちな、一定以上の距離をおいたハルダウン戦は得意とまでは言えない。
開始から先頭に立って進み、会敵した場所で、ある程度前線を維持する事ができる。
中戦車同士がかち合った場合にも、自分から仕掛けて主導権を握りやすい。とにかく敵が見えたら撃ち合っていれば、この系統の持ち味を活かしやすいので、初心者にもわかりやすい。ゆえに近接系には強戦車扱いされるものが多い。
しかしその強いイメージが仇となって、味方を見ずに主戦場に向かい、敵集団に囲まれて早々に倒されたり、重戦車側となった主戦場に近づけず味方の援護に失敗する、という負けパターンが発生しやすい。
そしてこういう負けパターンの時、初心者ははたいてい「味方何やってんだ…」と思っているのも世の常である。
つまり、初心者にも分かりやすい強みを持つが、その強みに依存するあまり、全体的な戦況の把握を怠りがちという特徴があることを踏まえておきたい。
ハルダウン系
車体装甲や装填、機動においては標準的だが、優れた防盾と俯角を持ち、ハルダウンでの撃ち合いを得意とする中戦車である。
ドイツの中戦車や、アメリカ中戦車の多くが該当する。
これら車両は車体装甲や装填速度の点から、近接戦闘向きとは言えないが、俯角・精度・貫通が良く、地形の起伏を活かし、相手を寄せ付けない中距離戦に向いている。
このタイプの戦車で丘陵地で近接系と撃ち合う場合は、まずは距離を取っての単発交換に持ち込むと良い。踏み込むのは、相手を削って体力有利が確保できてからにしよう。後述の遊撃系に対しては、多少強気に攻められるが、相手駆逐の射線への誘いである可能性には注意。
もちろん基本は中戦車なので、他所への支援などに柔軟に動くことも忘れてはならない。
遊撃系
車体装甲はもちろん防盾も頼りないか、存在しない中戦車が該当する。
上記以外の中戦車はほとんどこれ。
典型的なのがドラキュラである。
他にも、アメリカ中T-20なんかは弱戦車と思われがちだが、それはこの戦車を近接系として使ってしまうからで、遊撃系として立ち回れば決して弱くはない。(それでもさすがに強戦車とまでは言えないが)
装甲が頼りない分、機動が優れていることが多い。また、ハルダウン系と同じく、装填速度の代わりに単発火力・貫通・精度のどれかは優れている。柔軟な陣地転換によってこれらを活かす立ち回りを行う。撃ち合う距離・地形の主導権は自分が握ると考え、移動によって常に有利な状態を維持するのである。
低Tier帯においてはどの戦車でも「純粋な」撃ち合いが多いが、ヘッツァーやKV-1を相手にする辺りから、正面からの撃ち合いでは分が悪くなり、次第に「弱い戦車」として認識されがちになる。
しかし上級者に使われると近接系以上に厄介な存在になりうる。あまりそういうイメージが無いのは、サポート能力を活かした立ち回りだからである。撃たれる側としては、睨み合っている相手ではなく、その横から「ついでに撃たれた」という認識しか持ちにくい。
いきなり背後から撃たれた。振り返ったとたん、逃げられた。諦めたらまた撃たれた。足止めしてたら他の戦車を撃破された。本気で追いかけようとしたら他の戦車に叩かれた。
相手からすれば卑怯とも取れる立ち回りこそが、遊撃系の真骨頂と言える。
この種類の多くは高貫通・高精度砲を持っているので、ページ「砲の種類」の当該項目も参照。
軽戦車
軽戦車の扱いは、ほぼ遊撃系中戦車と同じと考えて差し支えない。
遊撃系中戦車以上に機動力があり、装甲がないのが特徴。最前線で偵察後、最後尾まで退避し、マップの外周一杯を回って敵陣の裏取りに向かうという選択肢も、軽戦車の機動力が有れば有効な戦術の一つである。逆に立ち回りに対してそれくらいのことが出来なければ、単なる貧弱な中戦車に成り下がりかねない。
重戦車
ここでの分類基準は、(少なくとも同Tier帯に対して)有効な装甲の有無と、装甲がある場合の防御方法による。
装甲系
装甲系は重戦車らしい装甲を備えており、1箇所に留まって敵の砲撃を耐え続ける能力を備えているものを指す。
装甲系で重要なのは、敵を倒すことよりも、自分を撃たせて、その弾を弾くことであり、また、敵の行動を制限できることである。
1vs2以上で膠着状態を生み出すことにより、残りの戦力で味方に数的有利が生まれる。
防御方法により更に以下の2つに分類される。
豚飯タイプ
その名の通り、装甲系の中でも豚飯が得意な戦車。KVシリーズ、ドイツ重の多くが該当する。
イギリスFV215bは砲塔が車体後部寄りに付いているため、基本姿勢が豚飯になることが多いと思われるが、側面装甲が強いわけではないので、ここに分類できるかは微妙。
豚飯タイプの特徴としては、正面には弱点を有するが、角度をつけた側面は敵の砲撃を弾きやすい点が挙げられる。
豚飯が得意であるがゆえ、垂直な遮蔽物と相性がよく、市街戦でもっともその能力を発揮できる。
正面の弱点は、まず車体下部が挙げられるが、これはほぼ全ての重戦車に当てはまり、豚飯系特有というわけではない。
豚飯系が気にすべきはどちらかというと砲塔正面であり、防盾の外やキューポラ、ステレオスコープなどである。
砲塔正面に弱点があるということは、それを敵に向けざるを得ない攻撃の瞬間が一番弱いということでもある。
なので側面で弾く技術の習得はもちろんのこと、砲撃の瞬間をいかにして短く、また狙われにくくしつつ、かつ、確実に当てていくかが、豚飯マスターの鍵となる。
ハルダウンタイプ
アメリカT29,32,34辺りが典型的。
ハルダウンが得意という性質上、水平方向の遮蔽物つまり丘の起伏などと相性が良いが、起伏を乗り越えてくる軽中戦車にまで完全に対処できるわけではない。砂漠や丘陵地帯では、自分が見ている戦車に対してのみハルダウン姿勢を取れていても、油断は禁物な点には注意しておこう。
また、垂直方向の遮蔽しかない場所は出来れば避けたいが、やむを得ずそこを使わざるを得ない場合は、豚飯を使うことになる。
楔形タイプ
言うまでもなくIS-3以降のシリーズである。
独特の形状により、車体が正面を向いた時に装甲は斜めの角度を持ち、車体が斜めになると装甲が正面を向くという、ややこしい形状である。
正面を向いたときでも下部が弱点になるため、結局どこを向いていても常にどこかに弱点が現れるわけだが、見方を変えれば、角度によって弱点が多様に変化するとも言える。
つまり正面を基本としつつも常に左右旋回(フリフリ)を加えていると、相手は上部左右と底面のどれかに狙いを絞ることができず、結果として跳弾を誘いやすくなる。
但しあまりフリフリを大きくせず、どうしても狙わせるとしたら底面が望ましい。正面左右の貫通を許すと、弾薬庫を飛ばされる危険があるためだ。
豚飯でも飛び出し撃ちでも、装甲が正面を向いてしまうため、撃つ時は遮蔽物から直線で出るのではなく、旋回を混じえて、停止時に真正面を向くようにするなどの工夫が必要。
また、このシリーズはハルダウンも得意とするが、IS-3は砲塔のてっぺんに弱点を持つし、それ以外でもTierの関係上大口径HEによる削りを狙われやすいので、静止時間は常に最小限に留めるべき。
飛び出し撃ちタイプ
ここに分類するのは、次のような特徴を持った戦車である。
- 正面装甲が強め
- 砲塔が車体の前寄りについている
豚飯タイプと同じく、縦の遮蔽物と相性が良いが、砲塔が車体の前寄りについているため、豚飯では露出する車体側面の面積が大きくなる。加えてこの系統は側面装甲が貧弱であることが多く、かなりきつい豚飯ですら通用しないこともある。
反面、前面装甲が強い為、前面を撃たせる角度での飛び出し撃ちは得意である。
飛び出す時は、前側に来る履帯を極力出さないように注意。履帯を抜かれて足を止められると、そのまま連続して被弾する危険がある。
該当するのは例えばアメリカT1Heavy、M6、M103、E5や、ドイツのTiger(P)、VK45.02Aなど。
なお、アメリカM103やE5のような曲面装甲の場合は、飛び出し時に旋回も加えたい。そのほうが弱点の変化が増えて跳弾を誘いやすくなるからである。
この2種はハルダウンもある程度使えるが、やはり同様に常に動かす必要がある。
攻撃系
あえて否定的に言えば「装甲薄い系」であり、体力や跳弾で戦線を維持するような立ち回りはこのタイプの重戦車には期待できない。
この手の戦車は「叩ける状況では最大限叩き、そうでないときは最大限逃げ隠れる」が理想の立ち回りと言える。
KV-1Sやイギリスの高Tier重戦車、アメリカT57やフランス重などの自動装填付きが該当する。列挙した顔触れを見ても分かる通り、攻撃系と一括りにしても、その攻め方は多種多様である。
自分の射撃は確実に通していく技術と、味方との歩調を合わせ、自分だけが狙われないようにする技術が求められる。
また、機動性が重戦車にしては良好なものも多く、状況次第では、中戦車に同行し、装甲ハンデの少ない中戦車戦に乱入して荒らすことも可能。
なお、格下や中戦車等に対する豚飯やハルダウンならば、さすがにある程度通用するので、それくらいはマスターしておきたい。
駆逐戦車
駆逐戦車の細分類は分かりやすい。装甲もしくは機動力の有無ではっきりと分けやすいからだ。
標準系
低Tierから続く、駆逐の標準形。(但しアメリカT18は除く)
砲塔を持たず、装甲は薄く、機動もそれほどない代わりに、隠蔽と攻撃力に特化している。
後に挙げる「装甲系」「機動系」以外の全てと見て良い。
基本的には開始地点周囲の高台や茂みに待機し、車体を晒した敵を撃つのが仕事になるわけだが、だからといって一箇所に「芋る」ことが全てではない。
大抵のマップには、開始地点の周辺にも狙撃場所は複数用意されており、その場所によって射線は多様に変化する。
ただ単に「敵が撃たれに出てきてくれるのを待つ」だけではあまりにも能がなく、また、それなりに経験を積んだプレイヤーならば、危険な場所は把握しているので、あと少しで出てきそうに見えても、まず出てこない。
狙われている側からすれば、そこからの狙撃にさえ気をつければ、その駆逐は死に体となり、他の戦車に対する数的有利を生み出せる。その状況有利を許さないためにも、細かな陣地転換が求められる。
また、いくら隠蔽が優れているとは言え、一発でも撃てば見つかることがほとんどである。
これは「Blitz」と冠した名の通り、戦況を積極的に動かし、試合展開をスピーディーにしたいという制作者の意図と見ていい。
教育的指導ルールが仕様として組み込まれているようなもので、駆逐と言えど、ただ1ヶ所でのうのうと撃ち続ける戦車がいつも強いというのはゲーム上好ましくないと考えられているのである。
実戦の狙撃においてすら、狙撃ごとに移動することも戦術の内と言われる。
装甲系
次に装甲系の駆逐について説明する。
当てはまるのがAT2からトータスまでのイギリス駆逐と、ドイツおよびアメリカ駆逐のTier8以降に存在する。
この中でアメリカT28は正面装甲も期待できないが、総合的な性能バランスから見て、可哀想だがここに入れざるを得ない。
このタイプの戦車は(T28を除いて)装甲系重戦車とほぼ同等の立ち回りが出来るのが強みである。
たどり着けさえすれば(T28を除いて)前線役を受け持つことも可能で、常に旋回や移動を続けて弱点を狙わせなければ、(T28を除いて)重戦車に匹敵する守備力を発揮し、(T28を除いて)多少隠れられなくとも跳弾で耐えることが可能。
※以後(T28を除いて)は省略
注意点としてはまず、「正面においても必ず弱点は存在する」ということ。正面装甲最強と思われるアメリカT95であっても、車体下部を慎重に狙われればしっかり貫通される。
なので旋回や移動は常に続けておくことが必要。
また、遮蔽物が全く不要とまで考えるべきではない。装填中はやはり一方的に撃たれるしか無く、履帯切りを防ぐためにも、隠れるべき時は隠れておこう。
そしてもう一つ重要なのが、「前線役は得意だが近接戦は不得意」だということ。
敵を近くで見つけたら、すぐに突っ込んでいく駆逐が初心者に多いが、所詮は砲塔のない駆逐、横や後ろに回られたら終わりである。
「味方より前」であることが必ずしも「敵の目の前」である必要はないことを覚えておこう。
機動系
装甲系駆逐が重戦車に近いのに対し、中戦車に近いのがこのタイプ。
機動力を有し、また、旋回力が高いのも特徴。
旋回砲塔を持つアメリカ駆逐のM8A1~T25/2のほか、ドイツGrille15、ソ連Object263もどちらかと言えばここに分類できる。
装甲はObject263の正面を除いて期待はできない。また旋回においても、砲塔を有するアメリカ駆逐ですら、車体の旋回と合わせてようやく中戦車に対抗できる程度であり、履帯を切られると一気に不利に落ち込む。なので中戦車の代わりが完全に務まるとまでは考えないほうが良い。
初動で偵察役を務める事も可能ではあるが、上記の理由から、敵を見つけてもそこで撃ち合わず、まずは撤退すべきであろう。
Object263はその正面装甲を活かして、タックルから相撲に持ち込む戦術が有効であるが、当然ながら序盤は避けるべき。
最後に
自分の使う戦車の役割を、システム側で示されている「軽・中・重・駆」だけでなく、ここでの分類を参考にして考えて頂けると、その戦車に適した立ち回りがより良くできるようになるはずである。
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