頭頸部がんー中咽頭がんーヒトパピローマウイルスー治療強度低減

ページ名:頭頸部がんー中咽頭がんーヒトパピローマウイルスー治療強度低減

 


【照射線量の低減】

Yom SS et al. J Clin Oncol. 2021. PMID 33507809
・ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がん(OPSCC)に対する放射線治療における照射線量の低減
・化学放射線療法  vs 加速照射による放射線治療単独(週6回照射)
・第2相ランダム化試験、NRG Oncology HN002
<結論>化学放射線療法が予め設定したエンドポイントを両方とも満たした。グレード3以上の急性期有害事象は、加速照射と比較して、化学放射線療法に多く認められた。
・対象:p16陽性中咽頭がん、T1-2 N1-N2b M0 または T3 N0-N2bM0、喫煙歴 10パック-年以下
・化学放射線療法群(シスプラチン毎週投与併用60 Gy/6週間)と加速照射による放射線治療単独(60 Gy/5週間)にランダム化
・従来の2年無増悪生存率 85%を上回り、1年のMDADI(MD Anderson Dysphagia Inventory)における平均スコアが60以上である群を第3相試験の試験群とすることを想定した。
・306例がランダム化された
・2年無増悪生存率:化学放射線療法群 90.5%で、2年無増悪生存率 85%以下という仮説を否定(p=0.04)
・加速照射による放射線治療群の2年無増悪生存率:87.6%(p=0.23)
・1年のMDADI平均スコア:化学放射線療法群 85.3、加速照射群 81.8
・2年全生存率:化学放射線療法群 96.7%、加速照射群 97.3%
・急性期有害事象(G3-4)発生率は化学放射線療法群で高かった(80% vs 52%, SS)
・晩期有害事象(G3-4)発生率:21% vs 18%(p=0.56)。

 

Chera BS et al. J Clin Oncol. 2019. PMID 31411949
・ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がん(OPSCC)に対する化学放射線療法における照射線量の低減
・第2相試験、米国
<結論>HPV関連中咽頭癌に対する低用量シスプラチン併用の60 Gyの強度変調放射線t治療による化学放射線療法レジメンの臨床成績は良好なものであった
・対象:p16陽性、中咽頭がん、T0-T3 N0-2c M0(AJCC 8th editionでは T0-3 N0-2 M0)、喫煙歴なし / 最小限
・化学放射線療法:シスプラチン 30 mg/m2を週1回投与し、強度変調放射線治療(IMRT)を用いて60 Gyを照射
・T0-2 N0-1(AJCC 7th editon)の患者に対しては放射線治療単独で治療を行った。
・(化学)放射線療法10-12週後にPET-CTを撮影し、頸部郭清の必要性を評価した。
・主要評価項目:2年無増悪生存率(PFS)
・114例が登録、経過観察期間(中央値)31.8ヶ月、81%の患者は少なくとも2年以上経過観察された
・80%の患者は喫煙歴 10パック-年以下であった。
・2年局所領域制御率:95%、、遠隔無再発生存率:91%
・2年無増悪生存率:86%、2年全生存率:95%
・EORTC QOLスコアの平均(治療前/治療2年後):全体 79/84、嚥下 8/9、口腔乾燥 14/45。
・CTCAE PRO スコア平均(治療前/治療2年後):嚥下 0.5/07、口腔乾燥 0.4/1.3
・34%の患者が栄養チューブ依存となり、依存期間の中央値は10.5週で、永続的な依存となった患者はいなかった。
・晩期有害事象(G3+)の発生を認めなかった。


【セツキシマブ併用】

Gillison ML et al. Lancet. 2019. PMID 30449625
・ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭がんに対する放射線治療
・セツキシマブ併用 vs シスプラチン併用
・ランダム化試験(非劣性試験)、NRG Oncology RTOG 1016
<解釈>HPV陽性中咽頭がんにおいて、シスプラチン併用化学放射線療法と比較して、セツキシマブ併用放射線治療後の全生存および無増悪生存は不良な結果であった。
・対象:HPV陽性中咽頭がん、T1-2 N2a-3 M0 または T3-4 N0-3 M0(AJCC 7th)、Zubrod PS 0-1
・(1:1)の割合で、セツキシマブ併用群とシスプラチン併用群にランダム化を行った。
・セツキシマブ併用群:放射線治療開始の5-7日前にセツキシマブ 400 mg/m2を開始、その後セツキシマブ 250 mg/m2を毎週、7回投与(合計 2,150 mg/m2)
・シスプラチン併用群:シスプラチン 100 mg/m2 を3週毎、2回投与(合計 200 mg/m2)
・全例に対し強度変調放射線治療(IMRT)を用いて加速照射 70 Gy/35回(週6回、6週間)の照射を施行した。
・主要エンドポイント:全生存(OS)
・2011年6月-2014年7月、987例が登録され、849例がランダム化された;セツキシマブ併用群(425例)、シスプラチン併用群(424例)
・セツキシマブ併用群(399例)、シスプラチン併用群(406例)が適格であった。
・経過観察期間(中央値)4.5年
・セツキシマブ併用群は全生存の非劣性クライテリアを満たさなかった(HR 1.45, 95% CI上限 1.94, 非劣性 p=0.5056, log-rank p=0.0163)
・5年全生存率:セツキシマブ併用群 78%(95% CI 73-83%)、シスプラチン併用群 85%(81-89%)
・無増悪生存はセツキシマブ併用群で有意に不良(HR 1.72, 95% CI 1.29-2.29, SS)で、5年無増悪生存率(セツキシマブ併用 vs シスプラチン併用):67% vs 78%
・局所領域再発もセツキシマブ併用群に多く(HR 2.05, 95% CI 1.35-3.10)、5年局所領域再発率(セツキシマブ併用 vs シスプラチン併用):17% vs 10%
・急性期毒性(中等度~重篤)(セツキシマブ併用群 vs シスプラチン併用群):77% vs 82%(NS)
・晩期毒性(中等度~重篤)(セツキシマブ併用 vs シスプラチン併用):17% vs 20%(NS)

 

Mehanna H et al. Lancet. 2019. PMID 30449623
・ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭がんに対する放射線治療
・セツキシマブ併用 vs シスプラチン併用
・第3相ランダム化試験、De-ESCALaTE HPV試験(アイルランド、オランダ、英国)
<結論>HPV陽性中咽頭がんに対する放射線治療において、標準的なシスプラチン併用と比較して、セツキシマブ併用は治療関連毒性を低減せず、腫瘍制御を悪化させた。
・対象:低リスクの(非喫煙者 または 喫煙歴 10 パック-年未満)HPV陽性中咽頭がん
・セツキシマブ併用群とシスプラチン併用群にランダム化
・放射線治療:75 Gy/35回
・シスプラチン併用群;シスプラチン 100 mg/m2を 第1日目、22日目、43日目に投与
・セツキシマブ併用群;セツキシマブ 400 mg/m2を投与後、250 mg/m2を週1回、合計7回投与
・主要評価項目:治療24ヶ月後時点での重篤な(G3-5)毒性発生率
・2012年11月-2016年10月、334例を集積(シスプラチン併用群 166例、セツキシマブ併用群 168例)
・急性期/晩期の治療関連毒性(G3-5)発生率は両群間に有意差を認めなかった(平均イベント数:シスプラチン併用群 4.8 vs セツキシマブ併用群 4.8, p=0.98)
・24ヶ月時点で、治療関連毒性(any grade)も両群間に有意差を認めなかった(平均イベント数:シスプラチン併用群 29.2 vs セツキシマブ併用群 30.1, p=0.49)
・2年全生存率はセツキシマブ併用群で不良で(98% vs 89%, HR 5.0, 95% CI 1.7-14.7, SS)で再発率もセツキシマブ群で高かった(6% vs 16%, HR 3.4, 95% CI 1.6-7.2 SS)


【導入化学療法】

Xu T et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2024. PMID 37574169
・ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がん(OPSCC)に対する導入化学療法への奏効に応じた治療強度の低減
・第2相試験(IChoice-01)(2019年1月-2021年7月)、中国
<結論>HPV陽性中咽頭がん患者において、導入化学療法への奏効に基づく放射線治療の線量の低減と化学療法併用の同時併用回避は可能。
・対象:p16陽性の中咽頭がん(OPSCC)、T1-2/N1-3M0(単発でリンパ節転移が3 cm以下のT1N1M0は除外)またはT3-4N0M0
・導入化学療法:DC(ドセタキセル 75 mg/m2 dL および シスプラチン 75 mg/m2 dL)3週毎、2サイクル
・導入化学療法の奏効が良好(原発およびリンパ節転移が50%以上縮小)を示した場合には強度変調放射線治療(IMRT)にて60 Gy/30回の照射を行った(コホートD)
・導入化学療法への奏効が不十分な場合には、シスプラチン併用の同時化学放射線療法(70 Gy/35回)を行った(コホートC)
・主要評価項目:2年無増悪生存率
・計48例が登録され、26例(54%)がコホートDに、22例(46%)がコホートCに登録された。
・経過観察期間(中央値)29.7ヶ月(6.9-48.0ヶ月)
・2年無増悪生存率:85%、、全生存率:94%
・コホートD:2年無増悪生存率:100%、全生存率:100%
・導入化学療法に伴う有害事象(G3-4):白血球減少 42%、低ナトリウム血症 4%。
・コホートCでは粘膜炎(G3-4)の発生率が高かった(62% vs 23%, p=0.022)
・MD Anderson Dysphagia Inventoryによる嚥下機能評価において、放射線治療3ヶ月後時点で一貫した悪化が認められたが、治療12ヶ月後時点ではいずれも治療前の状態まで改善していた。

 

Chen AM et al. Lancet Oncol. 2017. PMID 28434660
・ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭がん(OPSCC)に対する放射線治療の照射線量の低減
・第2相試験(2012年10月-2015年3月)、米国
<結論>ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭がんに対する化学放射線療法において、標準的なレジメンによる過去の成績と比較して、15~20%の照射線量を減量した化学放射線療法後の無増悪生存の悪化を認めず、毒性プロファイルの改善は改善していた。
・対象:中咽頭扁平上皮がん、III-IV期、p16検査でHPV陽性、Zubrod PS 0-1
・導入化学療法:カルボプラチン(AUC 6)+パクリタキセル(175 mg/m2)3週ごと、2サイクル
・化学放射線療法ではパクリタキセル 30 mg/m2 週1回投与を同時併用
・導入化学療法に対し完全奏効/部分奏効が得られた患者に対しては54 Gy/27回、部分奏効未満の患者に対しては60 Gy/30回の照射を行った。
・主要評価項目:2年無増悪生存率
・45例の患者が登録され、年齢(中央値)60歳(IQR 54-67歳)
・1例は治療を受けず、44例を解析した。
・導入化学療法に対し、24例(55%)で完全奏効/部分奏効、20例(45%)は部分奏効未満であった。
・経過観察期間(中央値)30ヶ月(IQR 26-37ヶ月)
・局所再発を3例(7%)、遠隔転移を1例(2%)に認めた。
・2年無増悪生存率:92%(95% CI 77-97%)
・有害事象(G3)発生率:39%、グレード4の有害事象の発生を認めなかった。
・導入化学療法中の有害事象(G3):白血球減少(39%)、好中球減少(11%)
・化学放射線療法中の有害事象(G3):嚥下障害(9%)、粘膜炎(9%)
・1例は治療3ヶ月後時点で胃瘻チューブに依存していたが、6ヶ月後には依存している患者はいなかった。


【放射線治療単独】

Takemoto N et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID 33373656
・ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がん(OPSCC)に対する強度変調放射線治療(IMRT)(放射線療法単独)
・第2相試験(2013年9月-2016年11月)、日本
<結論>注意深く選択を行った場合、真のHPV関連中咽頭がん患者では強度変調放射線治療単独治療は治療選択肢となりうる。
・対象:p16陽性 かつ HPV DNA陽性のIII-IV期(AJCC 7 editon)中咽頭がん
・T3/4、T1N1は除外し、喫煙歴は適格基準に含めず。
・化学療法を行わず、強度変調放射線治療(IMRT)により70 Gy/35回 または 70.4 Gy/32回の照射を行った。
・主要評価項目:放射線治療10週後の完全奏効 または 完全代謝奏効
・39例が登録、23例(59%)は10 パック-年以上の喫煙歴を有していた。
・36例(92%)は腫瘍の遺伝子型がHPV 16であった。
・37例(95%)で予定した放射線治療を完遂し、35例(90%)で完全奏効/完全代謝奏効が得られた。
・経過観察期間(中央値)51ヶ月(IQR 41-63ヶ月)
・1例(3%)に局所再発、3例(8%)に遠隔転移を認め、1例が原病死。
・2年無増悪生存率:94%(95% CI 81-99%)、全生存率:100%
・放射線治療期間中の主な有害事象(G3)は、粘膜炎 26%、嚥下障害 18%
・放射線治療終了1ヶ月後時点で、栄養チューブに依存していた患者はいなかった。
・晩期障害(G3-4)の発生を認めなかった。


 

 

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