よくわかる相掛かり

ページ名:よくわかる相掛かり

タイトル「よくわかる相掛かり」
著者 中座真
出版年 2012年

1.この本を読んだ経緯
相掛かりはこれからの相居飛車の主流戦法に躍り出るかもしれません。近年、居飛車党は初手▲2六歩を選ぶことが多くなりました。理由としては次に△3四歩とされたら▲2五歩として振り飛車の主力戦法であるゴキゲン中飛車を封じる他に、相居飛車になっても早繰り銀のような速攻が選択肢として増えたことなどが挙げられます。

こういうこともあって後手が居飛車党の場合二手目は△8四歩を指すことも増えてきています。その場合、三手目をどうするかは少々悩ましくなるところ。▲7六歩として、△3四歩と付き合ってくれれば横歩取り模様になるのですが、現在この戦型は青野流・勇気流の登場によって先手が主導権を取りやすくなっています。

後手としては△8五歩、もしくは△3二金として角換わりに持ち込みたい。この際に若干困るのは先手です。角換わりはかつて先手の方が有利だった戦法ですが、現在では後手の対策が増えたため好んで選びたくなる戦法とは言えなくなってきています。かといって角道を止めて雁木に組もうとしても、手堅く戦うことはできますが、一方で主導権を後手に渡してしまいかねません。

よって、最近では△8四歩に対し▲2五歩と伸ばす三手目が増えつつあるのです。一昔前の相掛かりは相居飛車の将棋としては傍流に属し、定跡の整備も他の戦法に比べて遅々としたものでしたが、近年では上記のような情勢もあって急速に見直しが進んでいます。筆者自身も相居飛車をよく指すのですが、相掛かりについてはよくわからないところが多いので、実戦と観戦に役立てるために本書を購入いたしました。

 

2.著者中座真さんについての紹介
中座七段は26歳でデビューした棋士。年齢制限ギリギリで三段リーグを勝ち上がった経緯は、『将棋の子』などを読んでご存知の方も多いでしょう。
プロ入り後は横歩取り後手番の定番戦法である△8五飛の創始者として知られるようになります。
筆者の横歩取りの認識は、これに対して山崎流や新山崎流がどう戦っていくか、というところでしばらく止まっていました。
事実15年近く横歩取りの後手番と言えば△8五飛であって、それほどの耐用年数を誇った戦法を開発した中座七段の功績は素晴らしいものと言えるでしょう。

3.本の構成
序章 本書の概要
第1章 ▲2六飛型
第2章 ▲2八飛型
第3章 その他の相掛かり
第4章 相掛かり手筋集

4.読んだ感想

第1章は昔からある形の浮き飛車が詳細に検討されています。


プロでは飛車先交換した後に引き飛車にするのが主流だったようですが、ネット将棋ではこのように浮き飛車にする形が良く見られます。
自分だけ飛車先交換しておいて相手にはさせなければ有利に立てる、というのは誰もが考えるところでしょう。初級者にとってこの形の解説が手厚いのは嬉しく、後手番を持った際にどういう対応を採ればいいのかがわかるのはありがたいところです。

第2章では数年前まで定番だった引き飛車型が紹介されています。基本的な戦略は3六に銀を据える棒銀(UFO銀)。そこから▲4六歩として腰掛け銀へとスイッチする形や、まっすぐ2筋を攻めていく形、そして△8五飛と構えられた時にどうするか、など様々な手順が検討されています。
なお、この章の最後で後手が引き飛車に対して飛車先交換を遅らせ、△6四歩とする変化が取り上げられています。本書刊行以前の相掛かりは引き飛車棒銀を採用し、2筋を攻めていく一方で時には腰掛け銀にし、さらには浮き飛車も攻めていくという先手にとって幅広い作戦を取れるものだったため後手としては受け身になることが多かったそうです。
しかし、この待機策がしっかりと検討されるようになると逆に後手が主導権を握れるようになった、というのは続編とも言える『相掛かりの新常識』で詳しく紹介されることとなります。

第3章では浮き飛車が定着する前に定番だったひねり飛車、△3四歩と開けられた時に▲3六歩とシフトするタテ歩取り、そして飛車先交換に対して△1四歩と突く作戦などが紹介されています。最後の△1四歩については最近の相掛かりでよく指されている飛車先交換前に▲9六歩と指す戦術と似た形ではありますが、これに関してはあくまでも定跡外しとみなされているのみです。

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