2話ストーリー

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「ん…、ここは…?」
布団から体を起こした鳥飛亜は辺りを見回す。知らない部屋だった。
しばらく自分の状況を図りかねていると、精悍な男と冷酷な印象の男が部屋に入ってきた。

「目を醒ましたか。お前は二日も眠っていたのだぞ。

冷酷な印象の男が布団の上の鳥飛亜に話しかけると、横にいた男―駆路守と名乗った男が、現在の状況を話してくれた。

自分が空から落ちてきた事。
駆路守たちは大将軍の圧政に立ち向かう為のレジスタンスで、鳥飛亜が落ちてきた混乱に乗じて窮地を脱した事を。

鳥飛亜は自分の記憶が曖昧で、はっきり言えるのは自分の名前くらいだと駆路守に告げた。

「鳥飛亜君、と言ったか。見れば君も年齢は若いが武者のようだ。どうだろうか、君も私たち絆我斗(ばんがーど)衆に参加してはもらえないだろうか」

駆路守がそういうと、横で見ていた冷酷な印象の男が駆路守の言葉を遮った。

「駆路守、こいつが役に立つかも分らんのに貴様はいつもそういう…」

「まぁまぁ襲弐、俺たちはいつでも人手不足なんだし、協力者は多いほうがいいだろう?」

鳥飛亜をそっちのけで言い争う二人を傍目で見ながら鳥飛亜は考えていた。

(間違いない…ここは…)

「…僕、やります!絆我斗衆に参加させてください!」

ため息をつく襲弐と喜ぶ駆路守、対照的な二人の顔を見ながら、鳥飛亜は覚悟を決めるのだった。


◇ ◇ ◇


絆我斗衆の一員となった鳥飛亜は、しばらく雑用などをこなしながら襲弐に訓練でしごかれ、次第にその実力を認められていった。
指揮官である駆路守を始め、ぶっきらぼうだが面倒見のいい襲弐(しゅうじ)、諜報活動を行っている古鈴斗(ふりんと)やぞんどげーたちと親睦を深めていくのであった。

一方駆路守たちは、単独で行動することの多い超将軍の各個撃破を狙い、情報を集めていた。
超将軍の一人が付近に滞在していると諜報員の電瑠汰(でるた)から情報がもたらされたのはそんな時である。

「江宇呂波(えうろぱ)の町に超将軍が一人で滞在しているという情報をつかみました。その街の裏手には広大な森があり、そこを抜ければ超将軍に奇襲がかけられます」

電瑠汰の言葉に一時騒然となるが駆路守は静かに、と言うと、さらに続けた。

「江宇呂波といえば、猛者飛銀たちのアジトもそう遠くはない。途中で合流し、奇襲をかけることが出来れば超将軍の撃破にも希望が見える…か。
よし、ではその情報をもとに江宇呂波襲撃作戦を立案し、決行する。超将軍がいつまで江宇呂波に滞在するかもわからない以上、早急に動く必要がある。
作戦決行は明日の夜。猛者飛銀には私が伝書鳩を送る。解散!」

「「「把ッッッ」」」

その命令を聞きながら駆路守の前に跪いていた電瑠汰は、悟られないように口元をゆがめた。

(ふふ…森を…抜けることが出来ればな…)

古鈴斗たちがその場を後にする中、奥の壁にもたれながら襲弐は、部屋から出ていく電瑠汰の背中をじっと眺めるのであった。


◇ ◇ ◇


その後駆路守たちにより作戦が立案され、襲弐からその内容を聞いた鳥飛亜は初めての実践について武者震いを抑えきれなかった。

「どうした鳥飛亜、震えているのか」

襲弐が、鳥飛亜の様子を見てそう言った。

「おじ…襲弐さん、違います!これは武者震いですよ!」

「フン…貴様の実力は評価している。剣術の腕前も良いし指揮能力も悪くない。古鈴斗たちともよくやっている。
まぁ、せいぜい頑張ることだ…。ところで今、少し聞き捨てならない事を言いかけなかったか?」

「い、言ってません!!」

「フン…そうか。まぁいい。…鳥飛亜、オレはまだ『お兄さん』だぞ」

鳥飛亜にそう言うと、襲弐は去っていった。

(危ない…勘違いしたみたいで助かった。気を付けないとな…)

襲弐が去った方向を見つめながら、鳥飛亜は一人胸をなでおろすのだった。


◇ ◇ ◇


――作戦当日

「これから、江宇呂波襲撃作戦を開始する!厳しい戦いになると思うが、我ら天宮の未来がかかっている!
皆、全力で臨んでくれ!以上だ」

駆路守の号令により、作戦が始まる。駆路守たちは隊列を組み森へと進軍する。
伝書鳩で連絡していた場所までくると、猛者飛銀たちと合流した。


江宇呂波の町は後方を樹海、前方には広大な河を望む肥沃な大地に恵まれた中規模の町である。
主要産業は狩猟がメインではあるが、農耕も盛んに行われており
大きな道からは外れているがその生産力から交易商人の往来が絶えない豊かでのどかな街であった。…今の大将軍に変わるまでは。

真駆参大将軍統治となってからは、その生産力に目を付けられ税と称してほとんどの物資を国に徴収され、町民は常に貧困にあえぐ状況が続いていた。
町の後方に位置する樹海にも、魔物や妖怪の類が現れ危険な場所になってしまい町民たちの食い扶持であった狩猟も立ち行かなくなっていた。

魔物や妖怪が現れる危険な場所…と言ってもそれは町民たちにとっての話で、戦闘訓練を積んだ絆我斗衆の精鋭たちには雑魚に毛が生えた程度であり、敵ではない。
――そう、だれもが思っていたのだ。その樹海に立ち入るまでは。


「駆路守さん!この魔物の数、尋常じゃありません!それに襲弐さんが!!」

四方、いや八方を中型の魔物に囲まれた鳥飛亜たちは、苦戦を強いられていた。
気が付けば襲弐や猛者一族たちともはぐれてしまっていた。
樹海の入り組んだ構造に、この魔物の数だ。下手に動けば次は自分たちが分断されることは容易に想像できた。

「グッ…、魔物がここまでこの森に根付いていたのか…!お前たち、なんとか突破するぞ!」

「「「了解!」」」

駆路守の号令に返事をするや、鳥飛亜が先陣を切り魔物の包囲に穴を開ける。
しかし次から湧いてくる魔物たちが鳥飛亜たちを再度囲もうと追い立てる。

「なんとかして襲弐さんと合流しないと…!!」

(!!)

樹海の中には魔物の声や剣戟が絶え間なく聞こえている。
その中から何かに導かれるような感覚を受け、鳥飛亜は隊長たちを誘導する。

「駆路守さん!こっちです!」

鳥飛亜が駆路守たちを導くと、襲弐が魔物相手に息を切らしながら孤軍奮闘しているところを発見し、すぐさま駆け寄ろうとした。

「襲弐さん!今助けます!!」

「来るな鳥飛亜ッ!」

鳥飛亜たちが駆け寄ろうと声をかけた時、襲弐が叫ぶ。

普段とはまた違う迫力に押され身体が一瞬硬直すると、鳥飛亜の眼前を『ソレ』がかすめ通って行った。

「ッ…今のは…腕!?」

外したとみるとすぐまた蛇行しながら樹海に消えていった『ソレ』は、襲弐の一声がなければ鳥飛亜の頭を間違いなく砕いていただろう。

「お前たち離れるな!固まりながら周囲を警戒しろ!!あれはどこから来るか分からん!!」

見れば襲弐は致命傷ではないものの、傷だらけであった。それも魔物がつけた傷ではない。
おそらく先ほどの『何か』に傷つけられたのだろう。
鳥飛亜たちが警戒しながら襲弐と合流すると、樹海のどこかから声が聞こえてきた。

『フン…邪魔が入ったか…。あと少しであったのに残念である。
しかし貴様らは、我らに喰われて死ぬ運命にある。我が主の名は獣王、この饗宴(サーカス)の主。頑駄無軍団超将軍、獣王頑駄無である!』


◇ ◇ ◇


駆路守たちを覆い囲む無数の獣たちの波状攻撃、それに加えて樹海の木々の間からの謎の攻撃。
ここにきて駆路守たちは絶体絶命の危機に陥っていた。

「どうする駆路守、このままではジリ貧だぞ」

「策は…無いこともない」

駆路守が言う。

「ナニ!?あるなら早く言え馬鹿者!!」

「要はこの状況を変えればいいのさ、しかしそのあとは大変だぜ」

「なんでもいい!このままでは俺たちは魔物の餌だぞ!!」

「後悔しても知らんぜ…少し伏せてろお前たち!!」

言うが否や、駆路守は持っている『ザンバー』に気を込め、周囲を一閃した。

「うおおおお!!!でぇッ…やぁッッ!!!」

気を帯びた刀身は周囲を巻き込み、『ザンバー』を振り切ったときに気のみが駆路守の前方に射出される。
魔物たちが吹き飛んだその数秒後、辺りに木が軋むような音が聞こえ始める。

「お前たち!!こっちに飛べ!!」

いつの間にか後方に移動していた駆路守が、身をかがめていた襲弐たちに叫ぶ。

「チッ!なんだか分からんが飛ぶぞお前ら!!」

襲弐たちが駆路守の方へ飛んだ瞬間、周囲の樹木が爆音を響かせながら一斉に倒れ始めた。
逃げ遅れた魔物たちがその質量に押しつぶされ、阿鼻叫喚の様相をしばらく呈したところで、周囲に障害物はすっかりなくなっていた。

「すごい!障害物も、魔物も一網打尽ですよ駆路守さん!!」

「そうだな…しかし、ついでに倒されてはくれなかったようだな」

喜ぶ鳥飛亜を横目に見ながら、駆路守の視線は木々がなぎ倒された先にあった。

倒れた木々の間から起き上がる4つのシルエット。その奥に見えるもう一つの影。
あれがおそらく獣王頑駄無だろう。

『クッ…小癪な真似をしてくれたな…。我が主は、姿を見られたことにお怒りだ…。
この始末、貴様たちの死で贖ってもらおう。行くぞ皆の者!!」

 

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