天王星の衛星と環

天王星の衛星と環（てんのうせいのえいせいとわ）では、天王星の衛星と環について述べる。

ファイル:Uranus-Portia-Cressida-Ophelia-NASA.gif

天王星の衛星 ポーシャ、クレシダ、オフィーリアが写っている（ボイジャー2号撮影）

2007年現在、天王星には27個の衛星と11本の環が発見されており、衛星はすべて命名されている。

衛星[]

天王星の衛星がウィリアム・ハーシェルによって初めて発見されたのは1787年のことである。ハーシェルは2個の衛星を発見した。後にこの衛星の名前は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する妖精から、チタニアとオベロンと命名された。なお、この時ハーシェルは「6個」の衛星を観測したが、そのうち4個は恒星を誤認していた事が後に明らかになっている。

更に、1851年にウィリアム・ラッセルが2個の衛星を発見し、アリエルとウンブリエルと名付けた。1948年にはジェラルド・カイパーがミランダを発見している。

その後の天王星の衛星にはシェイクスピアかアレキサンダー・ポープの作品中の登場人物名がつけられている。

1985年から1986年にかけてボイジャー2号が天王星に到達し、新たに10個の衛星が発見された。このうちコーディリアとオフィーリアは一番外側の環を挟むように公転する、いわゆる羊飼い衛星（<注>環 (天体)記事中の羊飼い衛星(shepherd moon)を参照）である。

ペルディータ (S/1986 U10) は、ボイジャー2号により1986年に撮影された写真の中から1999年にエリック・カルコシュカが発見したが、その後観測されておらず一度衛星から取り消されていた。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡による観測によって2003年9月3日に再発見され、衛星であると確認された。

1997年以降に多数発見された天王星の赤道面と無関係の軌道を持つ外周の衛星に関しては、順行軌道の衛星は1例だが『空騒ぎ』、他の逆行軌道の衛星は『テンペスト』より命名されている。

1997年9月6日、ブレット・J・グラッドマン、フィリップ・D・ニコルソン、ジョセフ・A・バーンズ、ジョン・J・カヴェラーズらがハッブル宇宙望遠鏡で2個の衛星を発見した。

1999年7月18日、グラッドマン、カヴェラーズ、マシュウ・J・ホールマン、ジャン＝マーク・ペティット、ハンス・ショールらが3個の衛星を発見した。

2001年8月13日、ホールマン、カヴェラーズ、グラッドマン、ダン・ミリサルェヴィクらが2個の衛星を発見した。また同じ日に撮影された写真から、2003年に新たな衛星が1個発見された。

2003年8月25日にマーク・R・ショワルターとジャック・J・リサウアーが2個、同8月29日にスコット・S・シェパードとデビッド・C・ジューイットが1個の衛星を発見した。

環[]

ファイル:Uranian rings scheme.png

天王星の衛星と環の関係

天王星は環を持っている。環は直径10m以下の暗い物質で構成されている。

1977年にジェイムズ・L・エリオット、エドワード・W・ダンハム、ダグラス・J・ミンクらによって、カイパー空中天文台からの観測で9本の環が発見された。恒星の前を天王星が横切ったときに恒星の光が何度か掩蔽され点滅した事による発見であった。その後、ボイジャー2号により2本の環が発見され現在は11本の環が知られている。

1797年12月、ウィリアム・ハーシェルは天王星に環を発見したと発表した。当時はこの説は認められず、1977年に正式に発見されたときも、ハーシェルの望遠鏡では視認不可能だったと考えられた。しかし、発見後に判明した天王星の環のデータとハーシェルの記録とがほぼ一致することが判明したことから、ハーシェルが環を実際に見た可能性が高くなってきた。ハーシェルの記録が正しいと仮定した場合、現在では天王星の環が視認できない要因として、カッシーニによって観測された土星の環同様に、天王星の環が200年の間に拡散した可能性が考えられている[1]。

en:Rings of Uranus

表[]

天王星の衛星と環

名前		直径 (km)	質量 (kg)	軌道傾斜角（度）	離心率	軌道半長径 (km)	公転周期（日）*	発見年	由来**
（ζ環）		2,500				38,000 ～ 40,500		1986
（6環）		～ 10				41,840		1977
（5環）		～ 10				42,230		1977
（4環）		～ 10				42,580		1977
（α環）		～ 10				44,720		1977
（β環）		～ 10				45,670		1977
（η環）		～ 10				47,190		1977
（γ環）		～ 10				47,630		1977
（δ環）		～ 10				48,290		1977
VI	コーディリア	40 ± 6	4.5×1016	0.085	～ 0	49,770	0.335034	1986	[1]
（λ環）		～ 10				50,023		1986
（ε環）		～ 100				51,149		1977
VII	オフィーリア	43 ± 8	5.4×1016	0.104	0.010	53,790	0.376400	1986	[2]
VIII	ビアンカ	51 ± 4	9.3×1016	0.193	0.001	59,170	0.434579	1986	[3]
IX	クレシダ	80 ± 4	3.43×1017	0.006	～ 0	61,780	0.463570	1986	[4]
X	デスデモナ	64 ± 8	1.78×1017	0.113	～ 0	62,680	0.473650	1986	[5]
XI	ジュリエット	94 ± 8	5.57×1017	0.065	0.001	64,350	0.493065	1986	[6]
XII	ポーシャ	135 ± 8	1.68×1018	0.059	～ 0	66,090	0.513196	1986	[7]
（ν環）		3,800				66,100～69,900		?
XIII	ロザリンド	72 ± 12	2.54×1017	0.279	～ 0	69,940	0.558460	1986	[8]
XXVII	キューピッド	～ 17.8	3.8×1015	～ 0	～ 0	74,800	0.618	2003	[9]
XIV	ベリンダ	81 ± 16	3.57×1017	0.031	～ 0	75,260	0.623527	1986	[10]
XXV	ペルディータ	～ 26.6	1.3×1016	～ 0	～ 0	76,420	0.638	1999 1986	[11]
XV	パック	162 ± 4	2.89×1018	0.319	～ 0	86,010	0.761833	1985	[12]
（μ環）		17,000				86,000～103,000		?
XXVI	マブ	～ 24.8	1.0×1016	～ 0	～ 0	97,734	0.923	2003	[13]
V	ミランダ	471.6 ± 1.4	(6.6 ± 0.7) ×1019	4.338	0.001	129,390	1.413479	1948	[14]
I	アリエル	1157.8 ± 1.2	(1.35 ± 0.12) ×1021	0.041	0.001	191,020	2.520379	1851	[15]
II	ウンブリエル	1169.4 ± 5.6	(1.17 ± 0.13) ×1021	0.128	0.004	266,300	4.144177	1851	[16]
III	チタニア	1577.8 ± 3.6	(3.53 ± 0.09) ×1021	0.079	0.001	435,910	8.705872	1787	[17]
IV	オベロン	1522.8 ± 5.2	(3.01 ± 0.07) ×1021	0.068	0.001	583,520	13.463239	1787	[18]
XXII	フランシスコ	～ 12	1.3×1015	145.2	0.146	4,276,000	-266.6	2001	[19]
XVI	キャリバン	～ 98	7.3×1017	140.9	0.159	7,231,000	-579.7	1997	[20]
XX	ステファノー	～ 20	6×1015	144.1	0.229	8,004,000	-677.4	1999	[21]
XXI	トリンキュロー	～ 10	7.5×1014	167.1	0.220	8,504,000	-759.0	2001	[22]
XVII	シコラクス	～ 190	5.4×1018	159.4	0.522	12,179,000	-1288.3	1997	[23]
XXIII	マーガレット	～ 11	1.3×1015	56.6	0.661	14,345,000	1694.8	2003	[24]
XVIII	プロスペロー	～ 30	2.1×1016	152.0	0.445	16,256,000	-1977.3	1999	[25]
XIX	セティボス	～ 30	2.1×1016	158.2	0.591	17,418,000	-2234.8	1999	[26]
XXIV	ファーディナンド	～ 12	1.3×1015	169.8	0.368	20,901,000	-2823.4	2001	[27]

*軌道周期が - になっているものは天王星の自転に対して逆行している。

**作者名が記されていないものは全てシェイクスピアによる作品。

1. ↑ 『リア王』リア王の三女。
2. ↑ 『ハムレット』ハムレットの恋人。
3. ↑ 『じゃじゃ馬ならし』じゃじゃ馬カタリーナの妹。
4. ↑ 『トロイラスとクレシダ』ヒロイン。
5. ↑ 『オセロ』オセロの妻。
6. ↑ 『ロミオとジュリエット』ヒロイン。
7. ↑ 『ヴェニスの商人』富豪の娘。
8. ↑ 『お気に召すまま』公爵の娘。
9. ↑ 『アテネのタイモン』妖精。
10. ↑ ポープの『髪盗人』ヒロイン。
11. ↑ 『冬物語』シチリア王女。
12. ↑ 『夏の夜の夢』いたずら好きの妖精。
13. ↑ 『ロミオとジュリエット』妖精の女王。
14. ↑ 『テンペスト』ミラノ大公プロスペローの娘。
15. ↑ ポープの『髪盗人』空気の精霊。
16. ↑ ポープの『髪盗人』土の精霊。
17. ↑ 『夏の夜の夢』妖精の女王。オベロンの妃。
18. ↑ 『夏の夜の夢』妖精の王。
19. ↑ 『テンペスト』君主。
20. ↑ 『テンペスト』野蛮な男。
21. ↑ 『テンペスト』飲んだくれの執事。
22. ↑ 『テンペスト』道化師。
23. ↑ 『テンペスト』魔女。
24. ↑ 『空騒ぎ』主人公の使用人。
25. ↑ 『テンペスト』ミラノ大公。
26. ↑ 『テンペスト』キャリバンの崇拝する神。
27. ↑ 『テンペスト』ナポリ王子。ミランダの恋人。

架空の衛星[]

• エリヌス谷甲州の『航空宇宙軍史』シリーズの『エリヌス－戒厳令』『終わりなき索敵』に登場。1986年に発見された天王星6番目の衛星という設定（『戒厳令』が書かれたのはヴォイジャー2号の接近前）で、軌道要素は実在する衛星のパック (S/1985 U 1) に似ているがエリヌスの方が大きい。

表・話・編・歴 太陽系 太陽 Solar System XXX 惑星 岩石惑星（水星 - 金星 - 地球 - 火星） - ガス・氷惑星（木星 - 土星 - 天王星 - 海王星） 準惑星 メインベルトの準惑星（ケレス） - 冥王星型天体（冥王星 - ハウメア - マケマケ - エリス） 太陽系小天体 小惑星 - 太陽系外縁天体（冥王星型天体以外） - 彗星 - 流星物質 - 惑星間塵 太陽系外周部 エッジワース・カイパーベルト - 散乱円盤 - ヘリオポーズ（ - 惑星X - オールトの雲）（未確認） 衛星と環 地球（月） - 火星 - 木星 - 土星 - 天王星 - 海王星 ： 冥王星 - ハウメア - エリス ： 小惑星 ■Portal■Project

表・話・編・歴 天王星の衛星 コーディリア | オフィーリア | ビアンカ | クレシダ | デスデモナ | ジュリエット | ポーシャ | ロザリンド | キューピッド | ベリンダ | ペルディータ | パック | マブ | ミランダ | アリエル | ウンブリエル | チタニア | オベロン | フランシスコ | キャリバン | ステファノー | トリンキュロー | シコラクス | マーガレット | プロスペロー | セティボス | ファーディナンド

特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。