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ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ Wilibard Joachim von Merkatz | |
Wilibalt yoahim fon melcats | |
所属: | 銀河帝国 |
性別: | 男性 |
搭乗艦: | ネルトリンゲン シヴァ ヒューベリオン |
声優: | 納谷悟朗 |
表・話・編・歴 |
ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(Wilibard Joachim von Merkatz)は、銀河英雄伝説の登場人物。
元は旧銀河帝国(ゴールデンバウム王朝)の宿将。その後は亡命してヤン艦隊の客員提督(ゲスト・アドミラル, Guest Admiral)になるなど流転の人生を歩んだ。乗艦は帝国軍時代はネルトリンゲン、ヤン艦隊時はシヴァ→ヒューベリオン(PCゲーム『銀河英雄伝説IV』での旗艦はユリシーズ)。副官はベルンハルト・フォン・シュナイダー。
銀河帝国の貴族の出身。時系列上の初登場は帝国暦482年、駆逐艦ハーメルンIIが脱出した後、メルカッツ艦隊の哨戒宙域に無事到達した時になる(メルカッツは登場せず彼の名前だけ登場)。
宇宙暦796年/帝国暦487年初頭、58歳の時にアスターテ会戦に大将/分艦隊司令官として参加。翌年上級大将となり、ブラウンシュヴァイク公爵の要請(実際は家族を人質に行われた脅迫)によってリップシュタット連合軍の戦闘指揮官に就任。旧王朝の終焉を知りながら、少しでも命脈を伸ばすために奮戦する。ガイエスブルグ要塞陥落によって敗北を悟り、自決を試みるが副官のシュナイダーに制止され、彼の勧めで同盟に亡命。亡命による二階級降等の同盟軍中将待遇でイゼルローン駐留艦隊(ヤン艦隊)の客員提督に就任する。
宇宙暦798年/帝国暦489年4月、フェザーンの謀略によりヤンがハイネセンでの査問会で不在の間隙を突いて行われたガイエスブルグ移動要塞を用いての第8次イゼルローン攻防戦において、イゼルローン駐留艦隊の指揮権を一時預かり、ケンプ・ミュラーの猛攻を阻止し、司令官代理のキャゼルヌをして「流石だな、メルカッツ提督は」と言わしめる。
宇宙暦798年/帝国暦489年8月、本人の承諾なしに「銀河帝国正統政府」の軍務尚書(形式上の階級は元帥)に指名され、一時ヤン艦隊から離れるが、翌年のラグナロック作戦で一旦ハイネセンに帰着したヤン艦隊に再び合流。5月のバーミリオン会戦の終盤に同盟が降伏した為、ヤンに要請されて「動くシャーウッドの森」と表現された潜伏隊の司令官に就任。7月16日にレサヴィク星域に於いて破壊される予定だった戦艦や宇宙母艦を強奪し、同時に4,000人の志願兵を新たに指揮下に加えた。
同年11月の第2次ラグナロック作戦開始前に、ハイネセンを脱出したヤン一行と合流。12月にはヤンと供にエル・ファシル独立政府の元に赴き、革命予備軍参謀長に就任。イゼルローン再奪取作戦では艦隊指揮を執り、再奪取に戦功を上げた。
宇宙暦800年の回廊の戦いでは右翼艦隊を指揮し、元同僚のファーレンハイト艦隊を追い詰める等の功績を挙げた。同年、ヤンが死んだ後もイゼルローン要塞に残り、翌801年の帝国軍対イゼルローン革命軍による回廊の戦いでは伏兵としてワーレン艦隊を急襲し、ユリアンの初めての作戦/指揮を成功に導いた。
同年6月1日、シヴァ星域会戦でユリアン達がブリュンヒルトに突入した後ビッテンフェルト艦隊の猛攻を受け、乗艦のヒューベリオンが被弾。副官のシュナイダーに看取られながら息を引き取った。63歳。
歴戦によって培われた老練の手腕を持ち、艦隊指揮能力はヤンやラインハルト、或いは帝国軍の双璧に比類すると称される。その戦術は「堅実にして隙なく、常に理にかなう」と評され、ラインハルトやヤンのような派手さはないものの、後世の一般的な軍人達にとっての範となり、戦術の教本にもしばしば取り上げられたとされる。外伝においては、ミュッケンベルガーとその地位を交代して、代わりに銀河帝国宇宙艦隊司令長官になるべきだという意見が、帝国軍内で多かったと言われる。指揮の特色は、帝国軍では雷撃艇、同盟軍ではスパルタニアンを駆使した近接戦闘での強襲を得意とする事が挙げられる(アニメ版では、回廊の戦いの際、この戦術で敵将がメルカッツであることをファーレンハイトが気づいた、という演出がなされている)。同盟軍、門閥貴族軍等、全く異なる集団をそれぞれ巧みに統率し、数個艦隊を統帥できる将器であったが、立場の複雑さから多くの兵権を与えられる事はなかった。「銀河帝国正統政府」においては軍務尚書に推薦されているが、この政府は実態はあって無きがごとしであり、メルカッツに軍政家としての力量があったかどうかは未知数である(少なくとも当人はラインハルトの同盟領侵攻時には、このまま政府にいても何もできないと、ヤンの下へと馳せ参じた)。
リップシュタット戦役ではシャンタウ星域でロイエンタール艦隊と戦って戦況を有利に展開させ、さらにミッターマイヤーの挑発に乗って出陣したブラウンシュヴァイクやフレーゲルが危機に陥った時には救援として出陣して「双璧」の艦隊に損害を与えている。回廊の戦いやシヴァ星域会戦でも常に一定の戦果を上げており、ヤンからも地味だが堅実かつ外連味の無い用兵をすると評価されている。回廊の戦い直前に、ロイエンタールとミッターマイヤーが会話の中でこの見解を披露し、ロイエンタールからは「全宇宙で俺に勝てる数少ない将帥の一人」と言わしめた(他はラインハルト、ヤン、ミッターマイヤーである。この時点でキルヒアイスとビュコックは亡くなっている)。リップシュタット戦役後は同盟に亡命、終生ラインハルトと敵対する道を選んだが、ラインハルト自身はメルカッツを逃したことを残念がっており、メックリンガーなども、第11次イゼルローン攻防戦の検証の際に、メルカッツが帝国に残っていればラインハルト陣営に重鎮として迎えられていただろうとその境遇に同情している。
寡黙で実直な人柄。「ヤン艦隊唯一の紳士」と称される。貴族出身のため、以前は他の貴族同様選民思想の持ち主だったが、若い下級兵士達との交流を通じて自分の間違いに気がついた…とシュナイダーに告白している(ラインハルトの場合は、アニメ版においてアラヌス・ザイデル伍長との交流が描かれているが、メルカッツの場合は具体的描写は無い)。アスターテ会戦の時も、当初はラインハルトの能力に懐疑的だったものの、第4艦隊を全滅させた頃からその才覚に気づいており、帝国貴族中で最も早くからラインハルトを認めていた。しかしゴールデンバウム朝の宿将として、帝政を壟断するラインハルトに与するのを良しとしなかった、当初はラインハルトと敵対しようとは考えておらず、リップシュタット戦役では中立の立場を取ろうしていたが、ブラウンシュヴァイク公に横槍を入れられ、貴族連合軍の総司令官を受けざるを得なかった。
重厚で生真面目な性格のためゴールデンバウム朝時代には軍首脳から「有能だが部下として使いづらい」と評され(劇場版第2作)、宮廷での社交活動にも興味を示さず、孤高を保ち、面白味の無い人物と思われていた。しかし、それ故に陥れられる事もなく、軍人のみならず貴族間での人望も高かった。物語の最初であるアスターテ会戦でラインハルトの配下に配属されたのをはじめ、貴族連合、同盟、銀河帝国正統政府…など、常に運命によって翻弄され自分の意思とは無関係に立場を規定されてきた。
同盟軍においては、各自が好きなように振舞う雰囲気の強いヤン艦隊にあって実に規則正しい生活を送り、「兵士達は彼の姿を見て時計の針を合わせる」などと言われていた。また、亡命後も旧帝国の軍服を着用し続けるなど、ある種の矜持を示すと共に「亡命者」である自らの立場を正しくわきまえていた。(この軍服の件はヤンも「ビュコック提督が帝国の軍服を着ても似合わないだろう。それと同じで…」と認める発言をしている。)ヤン艦隊と接するようになって以来それまでは関心を示さなかったユーモアにも反応を示すようになったことが、副官シュナイダーの観察として描かれている。政争の具にされたエルウィン・ヨーゼフ2世の消息を気にかけ、回廊の戦いでかつて僚友として共に戦ったファーレンハイトが戦死した際、喪に服し、会議に参加しなかったことなどに誠実な人柄が伺える。
ヤン艦隊にあっては、階級上はヤンに次ぐ高さであったにもかかわらず、銀河帝国から自由惑星同盟に亡命してきたという自分の立場を十分にわきまえ、常に一線を引いた態度を保ち、自らの分を超えず、それでいて的確な助言を与えて艦隊首脳陣からの信頼を得ていた。ヤンの死後(イゼルローン共和政府成立後)においては、もはや亡命者という立場でもなくなり、戦略の立案や別働隊を率いるなど積極的な活躍が見られるが、後継者たるユリアンの良き支えに徹して決して自ら前に出ることはなかった。
家族がいる事だけは明らかだが、作中には全く登場しない。リップシュタット戦役における総司令官を固辞したにもかかわらず、ブラウンシュヴァイク公に、家族の命を盾に脅迫され、やむなく受諾した事のみが記述されている。そのため人数・メルカッツ本人との関係は一切不明である。なおOVA版においては、ブラウンシュヴァイク公による脅迫内容が具体的になったため、神への生け贄の儀式に使われるに相応の容姿と年齢の娘がいる事だけが明らかになっている。またヤンと対面した時、息子がいればこのくらいの年齢かもしれないという感想を抱いている事から、息子はいないようである。
彼の死後、それを伝えるためシュナイダーがメルカッツの遺族のもとに旅立っている。
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