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綾波 レイ(あやなみ レイ)は、『新世紀エヴァンゲリオン』及び『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』のキャラクター。声優は林原めぐみ。英語版吹き替えはアマンダ・ウィン=リーが担当していたが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』からはブライナ・パレンシア(Brina Palencia)へと交代した。
色白で青色の髪と赤い瞳を持つ細身の少女。生年月日などに至るまで記録は全て抹消された[1]、14歳。ほとんど感情を表に見せず、寡黙で無表情。他者への興味が希薄だが、ネルフ司令・碇ゲンドウに対してのみ心を開いていた。後に交流を持ち、親身に接してくれた碇シンジにも心を開く。それに伴い、自我の芽生えと感情も僅かながらに見せ始めるも、その直後使徒の侵食にあい、悲惨な最期を遂げる(二人目)。
本作における最大のキーパーソンとして、重大な役割を果たす。EVA零号機の暴走事故により重傷を負い、初登場時は包帯姿。
先述のように他者との交流などはほとんど見られないが、碇ゲンドウにはとびきりの笑顔を見せるなど、絶大な信頼を寄せている様子。出会ったばかりの頃のシンジが父(ゲンドウ)を貶した時、強い怒りを示していた。一方、シンジに対してはヤシマ作戦での会話や出来事から、以降「碇くん」と呼び、彼を意識している様子。劇中では彼女自身が心配、怒り、戸惑い、驚きなど、感情の表れと思える表情を見せるほとんどの場面にシンジが関わっていた。シンジが自身の内面世界で対話する際は、常に彼女も居た。
レイが直接交流を持った人物に多少なりとも感情や人間性を見せているのは、ゲンドウを除けばシンジを始めとした他のチルドレンのみである。鈴原トウジがフォースチルドレンに選出された際には、彼が危険な任務に加わることでシンジの心がまた傷つくのを心配するようになっており、他者との交流による心の成長を伺わせていた。
惣流・アスカ・ラングレーとは、本来なら年齢も同じで一番近い距離にある同性なのだが、初対面時にやや高飛車な挨拶をしたアスカに対し冷淡な態度を取り、以後もほとんど関心を見せなかった。アスカからは、EVAを操縦することだけが自分の存在意義であるという、自分と一致する部分を感じるためか、近親憎悪に近い敵意を向けられており、ファーストや優等生、人形(機械人形)と呼ばれていた。またエヴァパイロットとしてゲンドウからの優遇や、シンジを巡る女としての嫉妬心も向けられていた。アスカのシンクロ率の低下が顕著に表れ始めた際には、忠告をしても、彼女からは逆切れされ、拒絶されている。劇場版での精神世界の中でも、シンジとアスカの激しいやりとりの最中、シンジにアスカのことを分かろうとしたのかを問い詰めている。
日常生活においても他者との交流を持たず、極端な感情を示すことが少ない少女だが、庵野秀明曰く「感情を知らないだけ」。
古い集合団地(『新劇場版:序』では「第3新東京市市営住宅第22番建設職員用団地6号棟」)の402号室に独り住まい。部屋はコンクリートむき出しの殺風景なもの。カーテンは昼間から閉め切られ、僅かに光が差し込む程度。掃除をしていないのか廊下の床には埃がかぶっている。彼女はスリッパを履いてこれを避けている。
自室には生活用品や家電製品なども必要最低限のものしか置かれておらず、装飾品や、調度品の類は一切存在していない。唯一、零号機の起動実験時に割れてしまったゲンドウのメガネを、ケースに入れて大切に所持している。私服なども着用している場面はなく、多くの場合学校の制服で活動していた。
肉が嫌い[2]。一度ラーメンを食べに行った際には、ニンニクラーメン チャーシュー抜きを注文していた。余談だがこのラーメンをモチーフとしたカップ麺「にんにくラーメンチャーシュー抜き」が、期間限定で2009年5月下旬から6月初旬までローソンにて発売された。
自身が趣味として認識しているかは不明だが、読書をしている姿が度々描かれている。
用途・効果・目的は一切不明だが、漫画では赤木リツコから薬の投与を受けている。
彼女の出自については謎が多く、脚本決定稿では2010年に現れたレイについて「7歳に見えるが5歳」という記述があることから、少なくとも2005年に誕生し、本来の人間より早く成長している。
小児期の容姿を見た赤木ナオコが一目で碇ユイを想起したほど似ていることから、肉体はユイのクローンと考えられているが、『スキゾ・パラノ』によると、厳密には「肉体はユイとアダムの遺伝子を半分ずつ受け継いでいる肉体」だと言われている[3]。肉体の出生に関しては、EVAに取り残された碇ユイをサルベージしたもの(cf.『EOE』のパンフレット)。
彼女の魂はリリスの魂であり、肉体は多数存在するため、何らかの原因で死んだ場合、魂を新しい身体に移し変えることで復活する。記憶に関しては、セントラルドグマで定期的にバックアップを取られていた為、前の肉体で最後に保存した記憶までが次の肉体に受け継がれるものの、感情面は保存される事はない。結果として記憶は受け継がれるものの、それに伴う感情というのは受け継がれない。魂の宿っていない体は、パイロットなしでエヴァンゲリオンを起動するための「ダミーシステム」のコアとして活用されている。
作品中には3人が登場する。1人目のレイはNERVがゲヒルンから改名する以前、赤木ナオコに対してゲンドウの陰口をそのまま本人に伝え、激昂した彼女によって扼殺されている(漫画版ではこの事件とナオコの死の詳細が描かれた)。シンジが初めて出会ったのは2人目のレイであり、第弐拾参話のアルミサエル戦においてレイが自爆死した後に登場したのが3人目となる。先述したように、この時点では彼女にはシンジに心を開きつつあった感情は消滅していたらしく、彼に対する接し方が劇中序盤の頃のようになっている。
人類補完計画を遂行するにあたり、サードインパクトにより全ての生命の肉体を還元し、魂を肉体から解放した際、ゼーレの計画ならば黒き月へ、ゲンドウの計画ならば初号機の元へ人類の魂を導く必要があり、それが可能な存在がアダムやリリスであるとされる。故にその魂を宿され造られた存在(カヲルとレイ)がいる。彼らが魂の道標となれる存在であり、本作において重要なキーパーソンと成る。
劇場版において、ゲンドウの思惑によりアダムとリリスの禁じられた融合により補完計画の発動が画策されるが、直前にシンジの存在を感じ取った彼女は、ゲンドウからアダムだけを奪い去り、自らを「人形じゃない」と告げリリスに還ることを選択。ゲンドウの元を去りシンジの下へと向かった。その後EVAシリーズ(初号機含む)が自分と同化し、シンジに人類の未来の選択を委ねたことにより、シンジの願いを叶える存在になった。
髪や目の特異な色を除き、その外見や容姿はシンジの母親に酷似している。先述した初号機からユイをサルベージする過程で生み出されたコピー的存在であることに、その原因がある。
モノローグでは、自らを「血を流さない女」と表現しているが、第壱話で流血している事から、月経がない事の隠喩らしい。
原作(アニメ版)に最も近しい貞本義行による漫画版を含み、彼女のキャラクターは基本的に同一のもので統一されている場合が多い。一方では第5巻以降からは彼女視点で描かれる場面が増える。
最初から「碇くん」と呼んでいた他、ヤシマ作戦以降シンジに対して以前よりも親密な態度を示す描写が加えられており、また、アニメであったゲンドウを非難するシンジに平手打ちを食らわす描写はない。後には彼女の中でシンジの存在がゲンドウ以上に大きくなっていった事が、彼女自身のモノローグで語られている。第5巻では、シンジの2度目の来訪の際には自分からシンジを家に上げて紅茶を入れてようとしているが、実は今まで入れたことがなかったため、適量が分からず紅茶の葉を山盛り入れようとしていた。
停電した基地内でアスカがミサトを探す際に「暗闇でも歩けて便利」という理由で同行するように要求されると、自分に関係ないとしてあっさり拒否している一方で、アスカが加持リョウジに渡すようにシンジに命じたがシンジが渡さずに返した手紙を気にしたりしており、アニメ以上に碇親子とそれ以外の人物との関心にギャップが現れている。ゼルエル戦後に、初号機に取り込まれたシンジのサルベージ成功に影で貢献した。
アニメ同様に2人目のレイが自爆し、そのさまを目前にしたシンジは「君を失いたくない」と悲しみ、シンジとの絆が互いにかなり深かった様子。
ゲンドウが自分のことを気遣っているように見えて、実は他人(ユイ)のことを思っているのに気づいていた描写や、シンジの母・ユイとの繋がりを明らかにするような描写が数多く追加されている。
『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2nd』(漫画:林ふみの)では、リナレイ[4]のキャラクター性が基本となっており、出生の経緯が謎に包まれているなど、背景は原作と同様の設定ではあるものの、感情表現も豊かで明るく活発な性格となっている。
『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』(漫画:高橋脩)ではオリジナル版とリナレイを合わせた印象で、「リナレイより大人しく、原作アニメより社交性が高い」といったキャラクターとなっている。『鋼鉄2nd』と近しい。
『新世紀エヴァンゲリオン 学園堕天録』(漫画:眠民)では原作に近いキャラクターとなっている。また、多少の天然キャラを思わせる性格も見え隠れしている。
彼女の登場シーン、及び性格や人格には旧世紀版から特に変更は見られない。ただしゲンドウと冬月の会話において、レイとシンジとの邂逅自体が仕組まれた物であった事が示唆されている。またシンジ同様に、旧世紀版における呼称「第1適格者(ファーストチルドレン)」は用いられず、「第一の少女」と呼ばれている。ヤシマ作戦において、零号機の暴走事故の際に落としたゲンドウの眼鏡をケースに入れて携帯している描写が見られる。またアニメ版と比較するとかなり肌が色白になっている。
「朝、教室に入る時に『おはよう』と言う」「シンジ、ゲンドウ、自分の間の微妙な好意感情を口にする」「シンジのために料理の練習をする」「ゲンドウとシンジの心の距離を縮めようとゲンドウをシンジ達との食事会に誘い、関係者各位の協力を取り付けると同時に、直前までシンジにその事実を隠す」「3号機の起動実験テストパイロットを代わってくれたアスカへの『ありがとう』の電話」等々、シンジのみならず、複数の他者へ関する感情が旧世紀版より明確に発露している。
アスカとのエレベーターでの会話は新劇場版でも存在するが、会話の内容がよりアスカを気遣うものに変化している他、この時にはアスカのビンタを受け止めている。また、EVAに搭乗することを拒否したシンジがネルフを去る際にゴミ箱に捨てたS-DATを、ゲンドウの眼鏡同様に零号機のコクピットに持参して、「碇くんが二度とエヴァに乗らなくてもいいようにする」という決意で第10の使徒との戦いに臨む等、彼女にとってゲンドウと同じようにシンジが大切な存在になっている描写が明確に見られる。旧世紀版と同様、N²兵器を使い第10の使徒を特攻の形で殲滅しようとした際には、起爆の直前、援護してくれた2号機と搭乗者(マリ)が爆発に巻き込まれることを避けるため、「ありがとう」の言葉と共に後方へ払い飛ばした。
その後、第10の使徒に零号機ごと捕食され取り込まれてしまうが、「せめて綾波だけは助けたい」というシンジの強い願いから、初号機のコアにサルベージされる。この一連の出来事が初号機の覚醒を促すこととなった。
SEGAからセガサターン用ソフトとして発売されていたゲームシリーズを始め、多くのゲーム作品では原作(アニメ版)の印象を忠実に再現したキャラクターとして登場しており、イメージもほぼ同一となっている。
『新世紀エヴァンゲリオン 綾波育成計画withアスカ補完計画』など、原作の印象とは全く異なるレイをメインに据えたキャラクターゲームも登場している。
『新世紀エヴァンゲリオン2』ではレイが死ぬと何度でも新しいレイが現れる。戦闘で死亡した場合、その戦闘結果は「死亡」とはならず「意識不明の重体」と発表される。経験に乏しい3人目以降のレイは精神的に未熟とされており、デフォルトのレイとパラメータや傾向に差異が大きい。また、以前のレイが持っていた友情・愛情などの感情はリセットされている。
『スーパーロボット大戦シリーズ』では零号機の自爆イベントで途中で離脱してしまう事が多い。『第3次α』では初号機と弐号機との合体攻撃や、ロンギヌスの槍が必殺武器として装備されるも、命中率や攻撃力をアップさせる精神コマンドを覚えない上に、ロンギヌスの槍はストーリー後半で無くなってしまう為、攻撃性能は低い。唯一の利点はパスキューマシンでパイロットの気力が下がっていくイベントの時で、サイボーグの獅子王凱と鋼鉄ジーグ、バーチャロンの面々、レイの6人が気力が下がらない(作中では、凱とジーグはサイボーグだから影響が無いと語られるが、レイについては誰も指摘しない)。
苗字の由来は、大日本帝國海軍特型駆逐艦II型一番艦「綾波」から[5]。名前の由来はアニメ『美少女戦士セーラームーン』のセーラーマーズ=火野レイからで、同シリーズに関わった幾原邦彦をスタッフに引き込もうという狙いがあった(この試みは成功しなかった)[5]。また「零(れい)」との掛詞でもある[5]。
無表情で感情の起伏が乏しく、どこかしら「お人形」を彷彿とさせるキャラクター像は綾波が誕生する前にも存在したが、あまり目立つものではなかった。しかしそれらを全て体現しながらも物語の枢軸に据えられた「綾波レイ」というキャラクターの登場で、後のアニメのみならず、ゲーム、漫画、ライトノベルなどのキャラクターデザイン、造型に大きな影響を与えた。このような現象で生まれたキャラクター、または同系統に属するキャラクターは「無口系」「綾波レイ系」「無感情系」などと呼ばれる。
アニメ雑誌「月刊ニュータイプ」においてアニメヒロインを分析する企画記事が書かれた際、アニメ黎明期(1970年代~)から既に確立されていた種のヒロイン系統(ノーマル系、お嬢様系、男勝り系、セクシー系)に加え、90年代に入って新規に開拓された「5番目」のタイプのヒロインが綾波であったと解釈し、体系付けていた。
また、エヴァブームの最中にはイメクラでも人気があり、「綾波始めました」の看板を出した店もあった。綾波レイはヒロインの一人(もしくはメインヒロイン)というだけではなく、印象的な容貌とクールな性格から『新世紀エヴァンゲリオン』という作品を象徴するキャラクターになり、ファンのみならず作品を知らなくても彼女だけは知っているという人も多い。ブーム当時、綾波レイの等身大フィギュアは30万円程度で売り出され、非常に高い支持と人気を得た。
イメージモチーフはキャラクターデザイナーを勤めた貞本義行から、筋肉少女帯の「何処へでも行ける切手」という曲において、綾波の包帯のイメージを得ている事が一つ挙げられる[6]。色白・青色の髪・赤い瞳などから、アルビノ的造形を指摘されるが、実際のところは「将来的にゲーム化された際、髪が青で目が赤ければドット絵でもレイと分かるだろう」という商業的、デザイン上の理由で決められている[6]。以下、キャラクター設定の経緯についての貞本の発言を挙げる。
貞本「目を赤くしたのは庵野さん。庵野さんが、確かにそれで行こうと言ったんだけど。…(中略)…(プロデューサーに)なんか特徴が足りないって言われて。髪の毛の色と目の色は、やっぱりアニメっぽくしてくれと。見た瞬間にキャラクターがわかる色にしてくれと。…(中略)…それで髪の毛の青だけは、前の企画の『ウル』の主人公が一人だけ青なんですよ。それだけ持ってきて、女の子、全てのキャラクターは黒なんだけど、女の子だけ髪の毛を青にしたいと。それでやったらなんか、庵野さんが「赤い目にしない?」とか言い始めて。「えーっ、赤い目?」それで塗ってみたら、あっ、かっこいいって。」 ― 『スキゾ・エヴァンゲリオン』165ページより「赤い目」という設定は、庵野が愛好する萩尾望都の『スター・レッド』からの引用と思われる。また、黒い靴下を履いている理由については、貞本義行が中学生時代、女子ハンドボール部員がこぞって黒い靴下を履いているのを見て「戦う(スポーツ)少女=黒い靴下」と認識したことによるもの[7]。
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