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『めし』は1951年に公開された成瀬巳喜男監督による日本映画。原作林芙美子、脚本田中澄江、井手俊郎。後に『浮雲 』、『放浪記』などと続く原作:林、監督:成瀬の映画作品の第1弾。
原作は1951年に朝日新聞に連載された、林芙美子の長編小説。連載中に林が急逝したことにより、未完の絶筆となった。そのため、映画化にあたり成瀬らによって独自の結末が付与されることとなった。当初は千葉泰樹が監督する予定だった。また、村田信三役は伊豆肇に決まっていたが、スケジュールの都合で小林桂樹に交代した。当時大映専属で仕事が減っていた小林は、この作品で東宝に貸し出されて認められたことをきっかけに移籍することになる。
当時の成瀬は、戦後の『浦島太郎の後裔』(1946年)前後から始まった「スランプ」と目される時期で、作品の質、興行収入共に振るわない低空飛行が続いていた。そうした中で制作されたこの作品は、林のリアリティー溢れる描写を盛り込んだ上で、「倦怠期の夫婦」という暗鬱な題材ながら軽妙な処理で親しみやすい高質のホームドラマに仕上がった。※
公開後にはこの作品は大きな興行的成功を収め、「成瀬復活」を世間に印象付けることとなった。※作品の成功には原作のチョイス、川端康成の監修によるアレンジが奏功したことはもちろんだが、分けても主演の上原、原両名の清潔感溢れる演技の貢献は大きい。原は当時、一連の小津安二郎作品で「永遠の処女」と呼ばれる神話性を持ったスター女優であったが、この作品では市井の所帯やつれした女性を演じ、新境地を開拓している。
成瀬にとっても、この後数多くの女性映画を手掛ける嚆矢となった作品で、監督としての円熟期を迎える契機となった。
ただし、映画独自の結末には林文学のファンなどからは批判を受けることもあり、「この夫婦は別れるべきだった」、「林自身はそのような想定をしていた」などの意見がある。なお林自身がどのような結末を想定していたかは実際には不明である。
また原作にも描かれる大阪の名所が数多く登場し、観光案内としての楽しみ方も出来る作品である。
※岡田茉莉子のデビュー作となった『舞姫』(1951年)や、田中絹代を主演に迎えた『銀座化粧』(1951年)などを評価する向きも特に現在において散見され、当時から長く続いたこうした系統的な評価は必ずしも絶対的なものとは言えない。
大恋愛の末に結ばれた岡本初之輔、三千代の大阪在住の夫婦は結婚から5年を経て、倦怠期に突入していた。世間からは美男美女の幸福な家庭と見られているが、些細なことで衝突が続くようになっている。そんな中、初之輔の姪である里子が家出をして大阪へやってきた……
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