登録日:2020/11/29 (日曜日) 19:06:00
更新日:2024/05/23 Thu 12:55:02NEW!
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講談社のモーニングに連載されていた、原作:西村満と作画:かわすみひろしによる料理漫画。単行本は全25巻で、文庫版は全13巻。
1998年から2006年にかけて連載され、累計発行部数は190万部に達している。
料理人が主人公というのはよくある設定だが、今作ではベトナム国にある日本領事館公邸の料理人という立ち位置から始まる。
そのため政治色が色濃く反映されており、初期はベトナム戦争やホーチミン関連の話題などがよく出てくる。
また単行本14巻以後はベトナムを離れ国家情報担当大使となった倉木に付いてベトナムを離れたため、アメリカ合衆国や中国など世界各国に視点が変わる。
あらすじ
日本有数の名門であるNKホテルに勤務していた料理人・大沢公は、かねてより組織の歯車となって大量の料理を作っては消費するという立場に疑問を抱き料理長と袂を分かって退職する。その後彼はベトナムで日本領事館公邸の料理人面接を受けて見事合格し、家族を残して単身ベトナムへ出発。決して食材に恵まれていない環境にありながら、各国大使や政府高官などを相手に食卓外交を繰り広げていく。
主要登場人物
- 大沢公
本作の主人公。物語開始時点で既に妻帯者で1人の娘がいるが、どちらも日本に残して単身ベトナムに在住している。
心のこもった料理を通してお客さんに対し気持ちを届ける事を信条としており、温厚な性格も相まって多くの人から信頼を得ている。過去のエピソードを含めて激怒したシーンは僅かで、怒るとストレス発散のためキッチンを徹底的に掃除する癖がある。
専門はフランス料理だが全般的に料理は熟せ、醤油を使ったフランス料理は国粋主義者のフランス人相手にも一切疑われないほど卓越している。またエリゼ宮でG8サミット後の晩餐会で料理を振る舞ったり、全世界の料理人No.1を決めるシェフサミットに日本代表として出場するなど並みの料理人を超える経験や腕前をしている。
女性関係は好意を持たれる事が多く、後述のホアや弟子の愛からはストレートな好意を、他の女性からも男性として意識されるようなシーンが垣間見えたりする。しかし本人が誠実かと言われると若干疑問視され、妻はそもそも過去の職場の上司から寝取った女性であるうえに、服飾事業立上げを目標とした妻を酔った勢いで押し倒して妊娠させるなど、鈍感ではあるもののやる事はやっている。
- 倉木和也
物語全般を通して大沢公の上司にあたる立場の外交官。T大卒のキャリア組で、チャイナスクール出身者ではあるが台湾問題では理解を示すなど主流派からは離れている。日中国交正常化の任を担当していたのだが、ニクソン・ショックが起こった際に責任を取らされ出世街道から外れて国内の資料室勤務となってしまう。とはいえ対アジア外交の切り札としては十分有効的だったため、在ベトナム特命全権大使に就任し十分に任を全うする。
当初はそのまま外交官を辞任する気であったが、時の首相に説得され引き下がる。遊軍大使として外交次官級の待遇を受けつつも様々な策謀に飛び込んでは解決する手腕を見せ、最終的には中国大使に任命される。
見た目も相まって温厚な人物と誰もが思わされるが、その実かなり狡猾で知略家気質な人物。ベトナム大使館で大沢公を雇ったのも、彼の人格や実績ではなく過去の経歴からパーキン*1を本場で作った事があるからという理由であった。だが大沢公の腕前は彼の想定を超えていたのもあって、ベトナムを離れてからも何かと重用する姿が見られ、最後の中国大使任命の時には何が何でも連れて行こうとするまで手段を選ばなかった。
キャリア組にしては珍しく財閥結婚ではなく恋愛結婚であるが、妻は先立たれており成人済みの娘がいる。娘からは母の死がキャリア組の女性らによる苛めが原因で父もそれを見殺しにしていたと非難され、その溝を埋めるのに苦労をしていた。
- 大沢ひとみ
大沢公の妻。序盤はショートカットだったが、後に髪を伸ばしている……が、出産後またショートカットに戻した。娘と息子が1人ずついる。
かなり口より手が先に出る性格らしく、ベトナム単身赴任の際には関節技を決めたり元旦の夫婦喧嘩では生々しい切り傷をつけるなどかなりパワフル。更に大吟醸片手にエアロビができると自負するまでに酒豪。
過去に大沢公の上司と恋愛関係にあったが、不器用すぎる彼に対して不満があったのと積極的にアプローチしてくれたのを契機に別れている。
夜の営みの合図はビーフストロガノフであり、これは大沢公の謹慎中に家まで行って作った思い出の料理が理由。
- 大沢かおり
大沢公と大沢ひとみの娘。小学生でテニスの稽古を受けている。
料理馬鹿の父親と比べると非常におとなしいものの、料理の腕は確かなものであり血は争えなかった模様。
倉木から中国へ家族共々引越するよう相談を受けた時は、両親を慮って賛成の立場を取るなど優しい性格。
- 大沢匠
劇中で妊娠・出産した大沢家の第二児にして長男。最終回に至るまで乳児だったため台詞等は無い。
祖父・巧とは読みが同じであるが、これは父・公による意図的なもの。なお当初祖父が考えていた名前は『味平』。
- 大沢巧
大沢公の父親。うさぎ亭という個人料理店のオーナーで、自らもキッチンに立ち料理を奮っている。
大沢公の限られた食材で最高の料理を作るという思考は父からの影響が強く、未だに頭の上がらない存在らしい。
顔を合わせれば頑固さもあって口喧嘩となるケースが多いが、キッチンに並び立つと息の合ったコンビネーションで料理を作る。
- 忠さん
大沢巧のうさぎ亭で長らく働いているコック。本名不明。かなり頑固で昔気質な性格。
かつてはレストランに勤務していたが、ある日トマト嫌いの大臣に対してトマトのシャーベットを振る舞ったが激怒され自信を失っていた。後に自信を取り戻して自分の料理店を持つようになった。
妻には先立たれ、娘が一人いる。
- 相田
NKホテル勤務時代の大沢公の先輩で、彼に料理の基本を叩き込んだ人物。そして彼女を寝取られている
序盤にベトナムのアメリカ大使公邸料理人として登場して以後、実力をつけつつあった大沢公の良き相談役や相棒として活躍する。一度はNKホテルを辞する大沢をまだ実力不足だと殴ってでも引き留めたりついでに寝取られた恨みを晴らして、多くのシェフが手伝ってくれた設宴で名声を分配しようとする彼にオーナーとしての本懐を叩きこむなど、過去現在も先輩としての教えを多く叩き込んだ。
が、非常に口が悪く他人を傷つける癖があり、それが原因で二人の女性と険悪な仲になっている。
後にベトナムのフランス大使公邸料理人として勤務していたマリーと恋仲になり、彼女の妊娠や結婚をしたりベトナムを離れてマルセイユで料理店『Aida』を開店する。ミシュランの星を目指して日々健闘しており、最終的にナイフ&フォークマークを得た。
- ミン・ホア
ベトナム編の事実上のヒロイン。28歳で既婚歴があるがバツイチで娘が一人いる。
ベトナムの日本大使公邸で従事する料理助手だが、日本語とベトナム語が出来る事から通訳を任される事もある。
公に対しては料理に対する真摯な態度や裏表の無い優しい性格に強く惹かれ、少なくとも劇中では二度キスをしている。外交官の古田とはかつて恋仲であったが、劇中ではお互いにどこか未練を残したままである。
- 青柳愛
ベトナム帰国後から登場するヒロインの一人。登場初期は23歳。
元はバックパッカーで世界中を旅行しており、片言であれば10か国語以上は理解できる天才肌。T大卒で、卒業後は音羽証券という大手企業に就職したが5日で退職し、そのフットワークの軽さから女実業家タイプと評されている。
大沢公をベトナム在住時に雑誌に勝手に掲載されていた記事を通じて知り、ラーメンを食べにマンションから出てきた所を捕まえて弟子入り志願をする。その後は料理助手という立場から倉木大使の旗下で共に活動するが、師弟の垣根を超えた感情を抱いてもいた。
同じT大卒で同期の江口悟とは倉木大使の職場で再会し、互いに憎まれ口を叩く仲でありながら徐々に距離を縮めていく。
大沢公認で独り立ちができてからは、彼の後任として倉木の中国大使赴任に着いて行った。
- 江口悟
T大卒のキャリア組で代々外交官を系譜してきた名家出身者。しかし世襲制度を嫌い、内部から改革を進めている。
帰国後の倉木大使をサポートする補佐官として登場して以後、通訳やソムリエなどをするなど活動は多岐に渡る。しかし自らの行為が裏目に出た場面も少なからず存在し、そのたびに支援してくれる腐れ縁の青柳愛に好意を抱くようになった。
一度外務大臣の娘と政略結婚をされそうになったが、左遷を覚悟の上で固辞している。
- 北島萌
青柳愛の中学生時代の友人で、和食料理専門の板前。
かつては料亭『たかくら』に勤めていたが、腕の無い後輩に先を越された事に不満を持ち親方を殴って辞職。日本料理の講習会を開く際に大沢らと面会するも、潔癖とも呼べる程の和食主義者として振る舞い握手すら拒んだ。調理場にもコックスーツではなく板前服で入る、所々で江戸っ子用語が入るなど徹底して板前である自負を持っていたが、様々な交流な経験を経て態度は軟化し様々な料理に対する理解を深めていく。
女だと舐められるのを非常に嫌い、スカートはアルバイト先でも一切履かず、初対面の人には北島三郎を名乗ろうとする。
最終的には台湾領事館に勤め、競馬の談義で盛り上がるなど天職を得たようだ。
- 上村信蔵
NKホテルの総料理長。かつての大沢公の上司であり、通称鬼瓦。
傲慢不遜な物言いで誤解されやすいが、大沢公に対する評価は非常に高く見習い時代の記憶をハッキリと覚えているくらいには見守っていた。現に彼がフランス料理について教えを乞うため職場に現れた時には、頭を下げて職場復帰してきたと誤解するくらいには勘違いし、終盤にNKホテルに復帰すると決まった時には鼻歌混じりに嬉しそうな顔を見せた。
ベトナム勤務時代で対決した時は、ただ資源を無駄に消費するだけの料理だと酷評されるシーンもあったが、後に大沢公から絶賛されるほどに腕前が上昇していた。さらに「本物のフレンチシェフならそれが例え卵をご飯にぶっかけたものでもフランス料理になる」と名門レストランの総料理長らしい風格を見せつけた。
劇中で行った事のある国
- ベトナム社会主義共和国
物語開始当初から大半を占めるほど在留していた国。ベトナム戦争の傷跡や貧困問題、国際条約のしがらみなど様々な問題が描写された。
ベトナムを離れて以後はそれほど話題に出る事は無くなったが、時折当時の関係者から離れて以後の話を聞く事がある。
- タイ王国
料理人が不在なのと倉木大使が休暇を取っていた時期が被っていた時に、応援のため派遣されていた事があった。
後に副首相と友好関係を築くべく再度来訪した。
- フランス共和国
極右勢力の大統領候補者が当選してしまった事で急遽政治的パイプラインを構築すべく倉木大使らが派遣された。
またエリゼ宮の晩餐会のため、その前準備等を含め訪れている。
あからさまにそうと明記されていないが、劇中描写の多くがそうであると物語っている。
伝統料理の作法や文化に触れるため、ホテルの中ですら監視されていると知りつつも観光した。
- インドネシア共和国
休暇中に父・巧に諭されてバリ島に家族と旅行。
だが実際は忠さんの一人娘の駆け落ち説得のためであり、旅行の殆どはそれに費やされた。
アメリカ大使公邸の料理人の体調不良で、設宴の代役として大沢公が出張している。
現実世界で同時期に発生した連続自爆テロ事件も題材としており、大切なものを失った人物が出演した。
- 中華人民共和国香港特別行政区
中国国内の行政特区であり難しい政治問題を抱えた地域。一応日本総領事公邸がここにも位置する事から別個表記とする。
青柳愛の独り立ちのため派遣され、彼女の成長を経験と共に重ねていく。
- サハラ共和国
直接訪れた訳ではないが、大使館の中に入って日本料理講習会や資金繰りの相談などを受けている。
大使館内は治外法権のため日本の法律は適用されず、それ故に家賃の滞納問題や週刊誌へのタレこみ脅迫などの世知辛い問題があると描写された。
- ポルトガル共和国
エリゼ宮での活躍を評価された大沢公が、日本代表としてシェフサミットに参加すべく来訪。
同時にあまり馴染の無い両国家の歴史を江戸時代末期から遡るきっかけとなった。
- 中華人民共和国
広東省広州市に来訪。前書記長直々から設宴のため呼び出されたが、実際には口実を得るための罠だった。
かなり日本人差別の色濃く残る地域であると描写され、同時に倉木大使の過去が深く掘り起こされてもいる。
TVドラマ
2015年1月に、ジャニーズ事務所のアイドルグループ嵐の櫻井翔主演で放映している。
基本は原作に沿っているが、何故かミン・ホアだけ設定など全て差し替えらえたレイ・ティー・蘭なる人物に変えられている。
余談
様々な料理や各国文化などの情報を史実に準じて描写しているが、中には物語の都合上敢えて変更しているような情報もある。例えば沖縄のタコスライスの起源は注釈で明記されるほどのフィクションで描かれていたり、ホー・チ・ミンの遺児とされる政治家が政治的重要性の高い立場にいるなど現実では存在しないルーツのキャラもいた。
続編にあたる『グ・ラ・メ! -大宰相の料理人-』では、ベトナム時代の大沢公がサブキャラとして登場。主人公の師匠という立ち位置。
本日の追記・修正は以上となります、倉木大使。
大変結構でした、大沢シェフ。
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▷ コメント欄
- 辛いフランス料理や青マンゴー、タコライス。色々ありましたな -- 名無しさん (2020-11-29 19:51:05)
- ○○(食材)は嫌いだから使わないでくれ→あえて使いました。本当の美味しさを知ってください なやり取りが結構あるのが気になった。結果的にいい話になってることが多いとはいえ、客の立場からするとどうなんだろうね -- 名無しさん (2020-11-29 20:28:22)
- ベトナムハノイにある和食レストランにもこの漫画が置いてあるね(全巻はないけど) -- 名無しさん (2020-11-29 23:01:32)
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