【キャスト】
ルッツ
ハーディ
(村はずれの丘で、ルッツが笛を吹いている)
ハーディ「…やっぱりここにいたのか。おい、ルッツ!」
ルッツ「んぎゃぁぁぁぁぁっ!?」
ハーディ「う、うるさっ…!」
ルッツ「えっ、誰! 誰!? えっ、まさかジード団長!? うわぁぁぁぁ! ごめんなさいサボってたわけじゃないんです! ちょっと休憩してたらこんな時間で…」
ハーディ「落ち着け! ジードさんじゃなくて僕だ!」
ルッツ「…ふえ? はぁ~…、良かったぁ…。ハーディかぁ…」
ハーディ「お前な…。人が声かけただけで発狂するなよ…。臆病なのは大人になっても変わらないよな、お前」
ルッツ「気を抜いてる時に話しかけられたら、誰だってビビるだろ普通!」
ハーディ「だとしても驚き方がオーバーなんだよ…。全く、ほら」
(何かをルッツに投げてよこす)
ルッツ「おっと! …何だこの瓶?」
ハーディ「精神安定の飲み物みたいな物だ。どうせ、訓練が怖くてサボってたんだろ。それ飲んで、少しは落ち着きな」
ルッツ「…サンキュな」
(瓶の中身を一気に飲み干す)
ルッツ「…あ、結構ウマいなこれ! 何が入ってるんだ?」
ハーディ「薬草とハーブ。それと飲みやすくするためにフルーツの果汁をブレンドしてある。全部村で採れる奴だから、名産品とかにできないかと思ってな。試作品を配って、感想を聞いてるんだ」
ルッツ「…お前って、凄いよなぁ。村のモンで、こんなの思いつくんだから。俺なんかにはとても真似できないや」
ハーディ「それはお互い様だろ。ルッツは剣術が、同年代じゃ一番じゃないか。それに笛の腕だって、都でも通用するくらいだ。お前はもっと自分に自信を持て」
ルッツ「いや、無理! だって俺は何もできねぇから! 剣はあくまで稽古の時の話であって、実戦じゃ全然役立たずに決まってる! 笛だって一人で吹くのが好きな訳であって、人前でなんて緊張で演奏できるわけない!」
ハーディ「威張りながら言うことじゃないだろ!?」
ルッツ「だってよぉ…。怖いんだよ。もし俺が戦って、負けたりでもしたら誰かが傷つくだろ? 演奏だって、失敗したら聞いてくれた人ががっかりするだろうし…」
ハーディ「はぁ…」
(ハーディがルッツをでこぴんする)
ルッツ「あでっ! 何すんだよぉ!」
ハーディ「お前は失敗した時のことを考え過ぎだ。心配しなくてもお前は強いし、笛の腕だって都の演奏家並みだ」
ルッツ「でもよぉ…」
ハーディ「これは僕だけじゃなくて、アレンとかジードさんも言ってたことだぞ。それでも信じられないか?」
ルッツ「…俺は」
(村の鐘が鳴る)
ハーディ「おっと。もうこんな時間か。…そろそろジードさんのとこに戻った方がいいんじゃないのか?」
ルッツ「ゲッ…、そうだった…! うあぁぁぁどうしよう…。絶対怒られる…」
ハーディ「全く…。僕が適当に言い訳を考えといてやる。早く行くぞ。行かなきゃ余計に怒られるだろ」
ルッツ「だよなぁ…。でも、大丈夫かな…」
(ハーディが手を差し伸べる)
ハーディ「いいからさっさと行くぞ。僕だってこの後予定があるんだ」
ルッツ「わ、分かったよ…。ジード団長への言い訳、頼んだからな…?」
ハーディ「任せておけ」
(二人で手を繋いで丘を駆け下りていく)
ルッツ「…やっぱ、敵わないよなぁ」
ハーディ「ん? 何か言ったか?」
ルッツ「いや、別に何でも?」
ルッツ(…いつもありがとうな。ハーディ)
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧