7 ルッツとハーディ

ページ名:7 ルッツとハーディ

【キャスト】
ルッツ
ハーディ


(村はずれの丘で、ルッツが笛を吹いている)

ハーディ「…やっぱりここにいたのか。おい、ルッツ!」

ルッツ「んぎゃぁぁぁぁぁっ!?」

ハーディ「う、うるさっ…!」

ルッツ「えっ、誰! 誰!? えっ、まさかジード団長!? うわぁぁぁぁ! ごめんなさいサボってたわけじゃないんです! ちょっと休憩してたらこんな時間で…」

ハーディ「落ち着け! ジードさんじゃなくて僕だ!」

ルッツ「…ふえ? はぁ~…、良かったぁ…。ハーディかぁ…」

ハーディ「お前な…。人が声かけただけで発狂するなよ…。臆病なのは大人になっても変わらないよな、お前」

ルッツ「気を抜いてる時に話しかけられたら、誰だってビビるだろ普通!」

ハーディ「だとしても驚き方がオーバーなんだよ…。全く、ほら」
(何かをルッツに投げてよこす)

ルッツ「おっと! …何だこの瓶?」

ハーディ「精神安定の飲み物みたいな物だ。どうせ、訓練が怖くてサボってたんだろ。それ飲んで、少しは落ち着きな」

ルッツ「…サンキュな」
(瓶の中身を一気に飲み干す)

ルッツ「…あ、結構ウマいなこれ! 何が入ってるんだ?」

ハーディ「薬草とハーブ。それと飲みやすくするためにフルーツの果汁をブレンドしてある。全部村で採れる奴だから、名産品とかにできないかと思ってな。試作品を配って、感想を聞いてるんだ」

ルッツ「…お前って、凄いよなぁ。村のモンで、こんなの思いつくんだから。俺なんかにはとても真似できないや」

ハーディ「それはお互い様だろ。ルッツは剣術が、同年代じゃ一番じゃないか。それに笛の腕だって、都でも通用するくらいだ。お前はもっと自分に自信を持て」

ルッツ「いや、無理! だって俺は何もできねぇから! 剣はあくまで稽古の時の話であって、実戦じゃ全然役立たずに決まってる! 笛だって一人で吹くのが好きな訳であって、人前でなんて緊張で演奏できるわけない!」

ハーディ「威張りながら言うことじゃないだろ!?」

ルッツ「だってよぉ…。怖いんだよ。もし俺が戦って、負けたりでもしたら誰かが傷つくだろ? 演奏だって、失敗したら聞いてくれた人ががっかりするだろうし…」

ハーディ「はぁ…」
(ハーディがルッツをでこぴんする)

ルッツ「あでっ! 何すんだよぉ!」

ハーディ「お前は失敗した時のことを考え過ぎだ。心配しなくてもお前は強いし、笛の腕だって都の演奏家並みだ」

ルッツ「でもよぉ…」

ハーディ「これは僕だけじゃなくて、アレンとかジードさんも言ってたことだぞ。それでも信じられないか?」

ルッツ「…俺は」

(村の鐘が鳴る)

ハーディ「おっと。もうこんな時間か。…そろそろジードさんのとこに戻った方がいいんじゃないのか?」

ルッツ「ゲッ…、そうだった…! うあぁぁぁどうしよう…。絶対怒られる…」

ハーディ「全く…。僕が適当に言い訳を考えといてやる。早く行くぞ。行かなきゃ余計に怒られるだろ」

ルッツ「だよなぁ…。でも、大丈夫かな…」
(ハーディが手を差し伸べる)

ハーディ「いいからさっさと行くぞ。僕だってこの後予定があるんだ」

ルッツ「わ、分かったよ…。ジード団長への言い訳、頼んだからな…?」

ハーディ「任せておけ」
(二人で手を繋いで丘を駆け下りていく)

ルッツ「…やっぱ、敵わないよなぁ」

ハーディ「ん? 何か言ったか?」

ルッツ「いや、別に何でも?」

ルッツ(…いつもありがとうな。ハーディ)

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