ウェルペイは漁師の働く漁港と、軍港という二つの性格を持っている。
蒸気機関開発以前は荒れた東海を渡るのは自殺行為とされ、北海共々避けられる航路であり、軍港もグラツィアに整備されていた。
だが、魔導鉄道が開通し、ザルゼリアから大量の物資が運びやすくなったことや、ローランディア大陸沿いの航路が使えるようになることから、次世代の軍港としての整備が進められている。
一方、農耕の街としてもウェルペイは帝国では貴重な食糧生産地であり、この街の生産する麦は帝国の食の一端を支えている。
だが、肝心の生産者の口に入るほどの豊かな実りはめったに期待できず、農家の口に入るのは豆や芋、というのは帝国ではありふれた光景である。
そうして国民全体に豊かな実りに対する強い羨望があることや、神話の時代には南域までの広い範囲に帝国の支配が及んでいたことなどから、帝国には南征と領土再占領を悲願とする者も多いのだという。
帝国は歴史的には、一度民主化されている。
しかし、その時代は帝国にとっては暗黒の時代であった。
政治に対する十分な教育が行き届かぬまま民衆に開かれた政治をするのは悲劇でしかない。
結果として帝国は民主政治を行った数百年の間に、領土の七割以上を分割、独立、占領という形で失った。
そこから再び現在の帝政に戻ったのだが、弱体化した帝国からの独立の波は止まらず、多くの都市国家群を生み出した。
そこから現在の強国の座に返り咲くまでは、さらに多くの時間と、民衆の血と涙を要したのである。
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