装備から見る戦略
各国の軍の装備を見てみると、その国の戦略に合わせた装備を保有していることがわかります。
例えば、アメリカ軍は海外展開を主とするため多数の空母を保有しています。韓国軍では仮想敵国が北朝鮮なので、ヘリコプターや戦車などに重点を置いており、海上艦船はあまり多いとは言えません。
逆に、装備を見れば戦略のだいたいが掴めます。今回は日本の自衛隊がどんな装備をどんな戦略のために保有しているのか解説していきます。
自衛隊の装備に見る戦略
まず第一に、艦船です。日本は四方を海に囲まれる島国なので、海は他国との緩衝地帯になります。仮に日本に敵国が攻め入るとしても海の上を通過しなければならないので、海上自衛隊は多数の艦船を保有しています。
特筆すべきはイージス艦です。世界で数カ国しか保有していないイージス艦を、日本は現在7隻も運用しています。もっとも、あのアメリカ軍に比べれば少ない数ですが、面積で見ると小さい日本にこの数はむしろ多い方とも言えます。
イージス艦はかなりの対空防衛能力を持っており、弾道ミサイルの迎撃や自艦もしくは自艦隊に向かってくる対艦ミサイルや航空機も容易に撃墜することができます。防衛機密なので詳しくは謎ですが…
また、ヘリコプターを複数機同時に運用できる護衛艦を4隻、水陸両用車やホバークラフトを運用できる揚陸艦を3隻、洋上で他の艦船に燃料などを補給する補給艦を5隻保有するなど、制海権の確保と海を利用した部隊運用にかなり重きを置いています。
そのことは他の自衛隊にも表れています。航空自衛隊の保有するF-2は空対艦ミサイルを搭載可能で、海上での行動を重視しているため青系の洋上迷彩が施されています。また、陸上自衛隊では地対艦ミサイルも装備しています。
第二に航空部隊です。自衛隊がオスプレイ(V-22)を導入したというのはごく最近の話です。オスプレイは大別すると輸送機に分類されます。みなさんご存知の通り、オスプレイはメインローターを飛行機のように前方に向けて飛行することが可能です。これにより、従来の輸送ヘリよりも高速で飛行でき、固定翼の輸送機と異なり滑走路がなくても着陸することができます。オスプレイ導入は、遠くの戦地に迅速に部隊を輸送することが可能になることを表しています。
これほど部隊輸送を重視するのはなぜか、それは想定される戦場に基地がないからです。基地がない戦場、つまり離島を敵国に奪取された時、速やかに奪還する、これが近年の自衛隊の戦術なのです。
戦闘機の装備からもこれを読み取ることができます。航空自衛隊は、最近JDAMと呼ばれる精密誘導爆弾を導入しました。また、従来の対地ミサイルより長距離を飛行可能な巡航ミサイルも導入予定です。もちろん敵国本土を攻撃するためではなく、離島の敵部隊に打撃を加えるためです。上陸した地上部隊と協力し、火力支援を行うのが目的の装備です。
最後に、2018年に設立された「水陸機動団」から見える離島防衛戦略です。水陸機動団は、水陸両用車・輸送ヘリ・偵察ボートなどを有しています。簡単に言えば、海から敵が上陸した島に水陸両用車で攻め入り、陣地を確保したら輸送ヘリから追加の部隊を下ろし火力を増強する、といった戦略です。実際に総火演で訓練を見ましたが、素早い展開に驚かされました。
このような装備や部隊を活用し、
- 本土に飛来する弾道ミサイルや敵性航空機の迎撃
- 敵国部隊が離島に着上陸侵攻した場合の奪還
に比重を置いているのが現在の日本の戦略です。
国際情勢の変化により今後わずかな変化が見られるかもしれませんが、地理的条件は変わらないので基本的に変化しないと見て間違いないでしょう。
執筆:紫の13
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