ほぼミリ ステルス編

ページ名:ほぼミリ ステルス編

ほぼミリシリーズ


ステルスとは?
ステルス機などの「ステルス」は、敵から肉眼で見えなくなる訳ではありません。
レーダーに映らなくなる、というのが昨今の兵器開発における「ステルス」です。


レーダーに映らないとどうなるの?
レーダーに映らないということは、敵にロックオンされない、ということになります。よって、敵の攻撃を受ける心配がなく、一方的に爆撃・空戦などの任務を遂行することができます。


なぜレーダーに映らないの?
ステルス機などには、ステルス設計という特殊な設計技術が用いられているからです。
以下の文章で、ステルス設計についてわかっていることを解説します。


ステルス機に用いられる設計
まず第一に、電波吸収塗料という特殊なコーティングが用いられています。これは、レーダー電波を吸収する塗料…らしいのですが、どの国でも国家機密として伏せられているので、詳細は不明としか言いようがありません。
二つ目に、電波吸収塗料だけでは吸収できるレーダー波に限界があるので、反射してしまったレーダー波を補足されないような設計が施されています。レーダーは、そのレーダーの発射した電波が航空機などに反射して返ってきた時に初めて目標を認識します。つまり、そのレーダーに反射させないということが達成できれば航空機を捕捉されることはなくなります。
具体的には、できるだけ敵のレーダーに対して同じ向きの面を作らない設計にすることが行われます。
今回は、これに絞って各々の例を紹介していきます。


翼の設計
主翼、尾翼などは飛行機が飛ぶために必要なものですが、ステルス機においてはレーダー反射断面積(RCS)を増やしてしまうので翼は少ない方がいいのです。
米軍F-22、F-35、露軍Su-57などは、主翼、水平尾翼、垂直尾翼の3つに絞っています。
中国軍J-20では、カナード、主翼、垂直尾翼で、同じく3翼構成になっています。
米軍の試作機YF-22では、主翼の他に水平尾翼と垂直尾翼の機能を合わせた斜め45°外向きの尾翼の2つで制御しています。
「翼は少ない方がいい」という設計を突き詰めたのが、米軍B-2爆撃機です。全翼機という珍しい設計になっており、名前の通り機体が1枚の翼のようになっています。突起物も最小限になっていて、あの大きさでかなりのRCSの低さを持っていると言われています。


また、数だけでなく形状も重要です。レーダーに捕捉されやすい方向といえば正面、側面、真後ろなどなので、そこに対してレーダーを反射しない設計になっています。翼に並行な方向から見たとき機体軸に垂直・並行な辺を作るのは避けるのが一般的です。
配置も重要です。垂直尾翼がある場合、旧来の戦闘機のようにまっすぐ上に伸ばすと横からなど捕捉される機会が増えてしまうので、斜めに傾けて配置します。尾翼の下に安定翼(ベントラルフィン)を持つ中国軍J-20は、それも外側に傾けて配置しています。


エアインテークの設計
エアインテークとは、エンジンを燃焼させるための空気取り入れ口のことです。この設計も、RCS低減に関わります。
まず、丸型にしてしまうと側面などのRCSが増えることになるので敬遠されます。では四角にすればいいのかというとそう単純ではなく、同じ四角でも長方形より平行四辺形の方が良いのです。側面が斜めになることでRCSが低くなるのが理由です。
また一部のステルス機ではダイバータレスインテーク(DSI)という技術が用いられます。通常、機体に張り付く低速の空気を吸収しないように境界分離層というものがインテークの機体側に設けられます。それをなくすことで機体側のインテークの一辺を胴体と融合させることが可能となり、さらなるRCSの減少に繋がります。


エンジンノズルの設計
主に空戦時に後ろにつかれた場合など、従来の円筒形のエンジンノズルではRCSが大きくなってしまいます。そこで、エンジンノズルの円の部分を鋸刃状にすることで、レーダーを撹乱することができます。
また、米空軍F-22やYF-23では、吹き出し口から見て長方形になるようなノズルが用いられます。これも同じようにRCSを低減します。なお、F-22では推力偏向ノズルを用いるため、YF-23では地上からの赤外線による捕捉を防ぐためにこのような形状になっています。


武装の機内搭載
多くの非ステルス機では、翼の下などにミサイルや爆弾を搭載します。ですが、ステルス設計の機体でこれを行うとせっかくのステルス性が台無しになってしまいます。このような問題は、ミサイルなどを機内のスペース(ウエポンベイ)に搭載することで解決されます。ウエポンベイなど可動部の分割線も、斜めの辺が設けられています。
機銃なども格納式や非搭載になっている機種が多数です。
ちなみに、米空軍F-35は、武装を機外搭載した状態でも運用可能になっています。ステルス性が必要ない任務に対して搭載量を増やすのと、議会に非対称戦での有用性を示すのが目的です。


カウンターステルス
ステルス機が猛威を振るっているのを、各国の軍は黙って見ているわけではありません。いくつかのステルス機に対抗する方法が示されています。

  • 強力なレーダー波を放射し、わずかな反射を捉える
  • ステルス機が別の方向に反射したレーダー波を別の位置のレーダーで捉える

前者は、いくら電波を吸収したりどこかに飛ばしてしまうステルス機でも少しは反射する、という理論で各国に検証されています。一部報道では、強力なレーダーを搭載したロシア空軍のSu-35Sが米空軍のステルス機F-22をシリア上空でロックオンしたという情報があります。真相は定かではありませんが、本当だとすればステルス機の優位性が下がったことになります。
後者は、電波をどっかに飛ばしてしまうならその電波を拾えばいいのではないか、というものです。実現は前者よりも難しいと言われており、どのレーダーがどの電波を放射したか正確にデータを共有しなければならないのです。しかも、広範囲に多数のレーダーを設置しなければなりません。ただこれもステルス機に対抗しうる手段として各国で研究開発が進められています。


ステルス編はこの辺でおしまいです。


執筆:紫の13


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