狂歌百物語(姑獲鳥) - いにしえwiki
09.盆前の 案子の米の 薄暗く 子に引かれつゝ 出るうぶめかも(花前亭)010.子をおもふ 親の心の 闇の夜の 深きに迷ふ うぶめ鳥かな(文昌堂尚丸)011.一柄杓 手向の水の はかなくも 行きて帰らぬ 流れ灌頂(長年)012.迷ひ出る うぶめも雨の ふる寺に 赤子の守は 人に
09.盆前の 案子の米の 薄暗く 子に引かれつゝ 出るうぶめかも(花前亭)010.子をおもふ 親の心の 闇の夜の 深きに迷ふ うぶめ鳥かな(文昌堂尚丸)011.一柄杓 手向の水の はかなくも 行きて帰らぬ 流れ灌頂(長年)012.迷ひ出る うぶめも雨の ふる寺に 赤子の守は 人に
菱持)014.幽霊の 剝がせどへげぬ 門守り 釘打つほどな 金印の札(升友)015.戸守りの 札吹きへがす 秋風の 怪しき音に 驚かれぬる(文昌堂尚丸)016.賊除けの 札へがさんと 幽霊は 恋の重荷を 運んだる門(道艸)017.剃刀で 剃つたやうにぞ 剝がしける 髭題目の 門の
)003.丑三ツの 頃に出でけり 雪女 初夜は五つの 障りありとて(松の門鶴子)004.雪女 粧ふ櫛も 厚氷 差す笄かうがいや 氷なるらん(文昌堂尚丸)005.雪女 見てはやさしく 松を折り 生竹ひしぐ 力ありけり(星屋)006.寒けさに ぞつとはすれど 雪女 雪折れのなき 柳腰
宝市亭)005.琴の音の 通へる松に 鳴神の 獣の爪の 跡も見えけり(雛室正女)006.雷の 毛物狩り入る 洞穴に 怒るまなこや 稲妻の如(文昌堂尚丸)007.夕立の 来べきと見れば 雲に添ひて 毛物は軒へ さがる鳴神(水々亭楳星)008.雷の けものの爪の 鋭きは 砥石の出づる
されし 枕ふつと 目の覚めて 破るゝ壁も 凄き小夜風(峯大谷 緑塵園千別)005.返されし 枕にさぐる 床の間の 寝たる勝手も 早や違ひ棚(文昌堂尚丸)006.さながらに 枕返しも 手やひかん 丁児の寝たる 形なりを見し夜は(青梅 尺雪園旧左)007.聞きてさへ 頭痛に闇の 夜の
むじ巻く風は横立よこたて十文字すごく手鑓てやりの鎌鼬見つ(善事楼喜久也)004.臑すねに持つ 疵はたしかに 鎌鼬 笹原はしる 風のそはりて(文昌堂尚丸)005.飯めしを炊く 鎌鼬とて その疵の 直りし跡や 鋳掛目いかけめと見ん(江戸崎 広丸)006.辻風の 鎌鼬にも 切られたる
)011.立山の 地獄の道の 案内者は 岡目に見ては 凄き世渡り(東風のや)012.亡き人に 再び逢うて 立山に 思ひの胸も 燃ゆる小地獄(文昌堂尚丸)013.ふんどしの 名の越中の 物がたり 金きんは縮みて 総毛立山(五息斎無事也)014.雇はれて 出る幽霊は 立山に 足を元手
8.猪熊を 書きし姿は 坊主凧 空には風の 高唸りして(青葉茂住)009.抜き打ちに 眼鞍馬まなこくらまの 竹切や 斜に飛びくる 猪熊の首(文昌堂尚丸)010.武士もののふに 討たれし首の 唸り声 いま凧の絵に 残る猪熊(国吉)011.地震ほど 身を震はして 退のきにけり 鯰髭な
08.地網なる 播磨さらしは 小坂部の 赤手拭に 織り出だしけん(梅屋)009.石垣は 亀のかたちの 高櫓たかやぐら 小坂部姫や 万年新造(文昌堂尚丸)010.天守には 日ごと化粧けはひの 小坂部の 姫が向かへる 鏡天井(春の辺道艸)011.小坂部の 姫もすよるは 夜もすがら 年
園友成)025.皿ゆゑに 井戸へ命を 捨て鐘の 音も哀れに 菊が怨念(筬丸)026.十枚の 皿を一枚 割る企たくみ その執念ぞ 深き古井戸(文昌堂尚丸)027.かぞふれば 数の減りにし 残り菊 はかなく褪せる 霜の剣に(佐野 糸屑)028.皿ゆゑに 身を損ねたる 怨念の 恨みの数