君は愛しい僕の傷

ページ名:君は愛しい僕の傷

媒体:小説

作:土干士工(ともとしたくみ)氏

ひ弱な落ちこぼれ男子高生と格闘女子高生のふれあいを中心したたぶん青春小説らしい。

作者曰く胸糞注意。

むつかしい単語や引用が多いが、これはこれで関心を広げてくれるし主人公像の表現として必要なものだったと思われる。

舞台

・府

 コンクールなどの記述から、大阪府もしくは京都府に所在する架空の市が主な舞台と思われるが、

関西弁のキャラクターは登場しない。

ひょっとすると東京府時代が続いたパラレルワールドなのかもしれない。

 

・卯都宮

 詠家の実家。愛弓も行ったことのある街。

語感同様の北関東がモデルとすると、

関西弁不在と相まって心理的・物理的距離があまり感じられないことが東京府仮説が頭をもたげる理由の1つ。

 

・虎井市

 架空の政令指定都市、武蔵野家が住んでいたらしい。

 

・双野市

 架空の地方工業都市あまり豊かとはいえず治安の悪い公園などもある。主な舞台、徳陽高校もここに所在。

 

・徳陽高校

自主自立もとい放任主義的な校風。詠曰く狂気にあふれている。

日和見主義の不甲斐ない大人たちと裏腹に生徒会が権力を発揮……してるわけでもない。

生徒会は生徒会で日和っているが、愛弓などの実力者を用心棒的立ち位置で登用する面も。

 

・双野市立佐鳥高校

 徳陽付近の荒れた高校。ギャンググループ《雷神》を擁する。

・東双野植物園

 詠が雅より教えられた、藤の花が映えるデートスポット。彼はここで愛弓とのデートを狙っていた。

 

主要登場人物

主人公と3ヒロイン

・詠透也(ながみとうや) 2年3組 163cm

 虚弱体質で気が小さく成績不良、「足りない頭で~」などと自嘲する記述もあるが、

歯科医の息子らしく教養や知的好奇心は人一倍、国語の成績も良いらしい。

強い女の子が好き、そんな子が苦しみ堕ちるところも好き。両親は不仲

 

・早風愛弓(はやかぜあゆみ) 2年3組 4月5日生まれ O型

 実家が空手道場。ナチュラルショートの黒髪に淡い小麦色の肌。

正義感の強い風紀委員で、勉強こそあまり得意ではないが、

強い優しいかわいい三拍子そろった徳陽高校最強のアイドルと讃えられていた。

だがその栄光も鈴音の転入から狂い始め……

汗っかき体質。実家方針で恋愛はご法度。香水は柑橘系?

 

・武蔵野鈴音(むさしのすずね) 2年3組 160cm(愛弓より少し長身) A型

 実業家の父とファッションモデルの母を持ち、徳陽高校に転入してきた万能の天才少女。

色白の細身ながら巨乳で見事な金髪ロング、褐色の大きなどんぐり眼に高い鼻筋。

外面の取り繕い含めて完璧な悪魔。普段は電車通学。

知力体力財力魅力の限りを尽くしてクラスを掌握し、愛弓のお株を奪い尽くし追い詰めていく。

幼少期は虚弱体質だったらしく、克服のために日本拳法を始め才能を開花させた。

あずあず・くーちゃんなど積極的に人のあだ名を作っちゃうタイプ。

雅を「かわいいけど怖い子」と表する

 

・梓川雅(あずさがわみやび) 高2

 少し下がった目尻がお淑やかな印象を強めるお嬢様、華道部部長、左利きで黒タイツ派?

流れるようなハーフアップ長い黒髪からローズ系の香り。

1年の頃に府最優秀賞をとった天才。

詠曰く「引力と同じぐらいの斥力も持つ」

恐ろしいほどに整った立ち振舞い、別け隔てなく丁寧な態度、ただし下心には厳しく容赦ない一面も見せる。

着痩せするタイプで思いの外引き締まった筋肉もついている。

武では大男をなぎ倒す愛弓や鈴音には及ばないものの、

物怖じしない芯の強さは家柄と親衛隊だけによるものではないようだ。

長袖に黒タイツの着こなしがトレードマークで、虎徹曰くカメラの前でも全く変わらないタイプ。

とはいえ詠よろしく腕に傷を隠してるわけでもなさそうである。

鈴音を評して曰く「あの方は信用なりません」

 

2年3組

・野々原受里亜(ののはらじゅりあ)

 剣道部の幽霊部員のち退部。

一見不真面目そうだが勉強もスポーツも音楽も料理も総合力の高いクラスの女王蜂で背も高い。

鈴音は彼女と3人の友人を巧みに懐柔し、四天王的取り巻きに収まらせた。

通称はノノちゃんだが、四天王を気安くそう呼べる者は多くなさそう(´・ω・`)

 

・篝美歌(かがりみか)

 鈴音や受里亜とつるむ派手な四天王で手芸部。

 

・吉川真尋(きっかわまひろ)

 上に同じ。通称きーちゃん

 

・福地棗(ふくちなつめ)

 四天王の一角。ウェーブのボブヘア、軽音部。

 

・松方博道(まつかたひろみち) 

 長身痩躯、サッカー部エースにして学園有数のイケメン、成績も優秀。

詠とは幼馴染み、裏切ったり助けたり。堕ちて不登校になったり復活したり、濃い逸話が続く人物。

栗色のエアリーヘア。

 

・廿六木空河(とどろきくうが)

 痩せ型だが長身、端正な顔だが獰猛な目つき。知力といい体力といい只者ではない。

稲妻形に刈り込んだ銀髪のウルフモヒカン。メタリックブルーの髑髏ピアスもつけた、学年きってのアウトロー。

鈴音とは牽制しあいつつ、ただならぬ仲に……?

 

・城之内虎徹(じょうのうちこてつ)

 映画部で詠の貴重な友人、上品な童顔に亜麻色のストレートヘアながら彼同様の小男ゆえ女子に恵まれない。

だが情報通で処世に長けた面もある。雅にホの字だが、つい最近まで美歌にご執心だったらしい。

・野呂田千鶴(のろたちづる)

 愛弓とは中学時代からの親友で陸上部。詠より背が高く、脚も長ければ髪も長い。

切れ長の目に黒縁メガネをかけ、大人びた色気と甲斐性で小規模ファンクラブもあった美少女。

律儀な性格で、鈴音が放埒カラーに染めたクラスの秩序を(命の恩人らしい)愛弓に代わって取り戻そうと奮闘した。

 

・網走軍治(あばしりぐんじ)

 千鶴の彼氏。普段はコミュニケーションの達人、ムードメーカー。

 

・大迫竜司(おおさこりゅうじ)

 鈴音より30cmほど大きい、柔道歴10年の巨漢。混沌をもたらす彼女にお灸を据えようとするが……

武人として行動に愛弓との共通点がみられ、詠に気づきを与える結果になった。

 

・寺野深雪(てらのみゆき)

 高い鼻、釣り上がった瞳にベリーショートヘアの男勝りな柔道部員。竜司の変貌と原因たる鈴音に激しく憤る。

鈴音からはゆきちゃんと呼ばれたり。

 

・一ノ宮久々梨(いちのみやくくり)

 手足や肩幅が折れてしまいそうに細いが、それで艶美にも見える黒髪セミロングの少女。

詠同様の虚弱体質、体育は見学のことが多い。現代日本文学派。

 

・相崎縁(あいざきゆかり)

 ウェーブがかった茶髪。日和見主義者とか二枚舌とか。

 

・園田祈(そのだいのる)

 クラスの文化系代表的な男子で特待生、屈指のモテ男。鈴音の転入までは彼こそがクラス1の成績だった。

 

・加奈子

 受里亜たちにいじめられていた少女。愛弓という抑止力の失脚でついに不登校となってしまう。

 

・望月沙耶(もちづきさや)

 クラス委員ながら気弱さゆえ、問題児の対処は愛弓頼みだった。目尻の下がった柔和な顔立ち。

 

・青葉

 愛弓の親友だが運動音痴。傑に偽装ガールフレンドとして利用されているふしがある。

 

・香寺孝之(こうでらたかゆき)

 詠たちの2年3組の担任、愛車はフォルクスワーゲン。

有名大学を出た善良なエリートでそれなりの色男ながら、詠曰く統率力皆無。

鈴音の転入から一ヶ月あたりで一気に老け込んだとも。


・重盛八雲(しげもりやくも) 高2

 長い黒髪を後ろで束ねた美術部部長の優男で、理事長の甥。

背が高く選抜リレーでオーバーテイク……のみならず騎馬戦では八艘飛びでの孤軍奮闘を見せた。

鈴音すら恐れぬ雅の態度には、親衛隊のみならず彼の力も影響してるのかもしれない。

そのセンスと家柄により、雅と幼馴染、いやそれ以上の浅からぬ縁? があるようだが……

 

・牛来勇魔(ごらいゆうま) 2年5組 163cm

 背は低いが派手な髪型と着崩した制服が威圧的な不良。詠を暴力とカツアゲで苦しめている

 

・倉沢亜紀斗(くらさわあきと)&田中征吾(たなかせいご) 2年5組

 長身で体格のいい勇魔の取り巻き。ドレッドヘアと角刈り。

 

・早風愛矢(はやかぜあや)

 愛弓の妹で猫アレルギー。美少女だが決定的に表情の欠けた鋭い目つきで陰鬱な雰囲気。

姉をひどく嫌っており、また詠の闇を見抜いているようなフシもある。

 

・新藤傑(しんどうすぐる) 高2

 愛弓の彼氏。普段はすごくいい人らしい。詠と鈴音の謀略ターゲット。

 

・黒淵雷(くろぶち) 高1

 《雷神》のヘッド。

鈴音すら心配されるほどの強さと影武者を立てる慎重さを併せ持つらしく、ヤクザの息子などの噂が絶えない。

 

・江口

 華道部で雅親衛隊。古武道を嗜む。背中までの黒髪を後ろで結んでいる、眼鏡の奥に鋭い瞳、無愛想で寡黙な面あり。

 

・中塚

 江口と対をなす親衛隊。黒い短髪、眉の上でぱっつん、小柄で細づくり。

わりかし気さくだがかなり毒舌。

はたから見ればおっかなく、

雅の交際範囲を狭めているように思える2人について情報通の虎徹は小指を立てて噂を示唆した。

3人はどういう関係なんだっけ?

 

・朝比奈辰美(あさひなたつみ) 3年3組

 長身痩躯、硬質のリクルートヘア。真面目な優等生ながら快活さと洒落を忘れない生徒会長。

年齢性別問わず支持を集め、弱い者いじめに憤る一方いじめられる側の弱さも許さない。

詠にしてみれば勇魔の次くらいに相性の悪い人物と思われる。

 

・小賀潔彦(おがきよひこ)

 早風道場の門下生で愛弓の親友、筋肉質に引き締まった長身の美男子。

 

・望月有紗(もちづきありさ)

 沙耶の姉で柔和な顔はよく似ているが片側白ヘアピンで額は大胆に晒している、妹は対照的に溌剌とした雰囲気。

長身脚長発育良好、3年有数の美少女と言われる放送部部長。

 

・星崎万恋(ほしざきまれん) 2年6組

 愛弓・雅をも凌ぎ、世代一の人気を誇った徳陽三大美少女の筆頭。

栗色のショートボブに淡い眉、長いまつげと二重まぶたに彩られたつぶらな瞳。みずみずしい唇の中に純白の歯。

ハードなチアダンスをこなし、バストも立派なのに小柄で華奢な小尻。

ステレオタイプな媚び方と最大公約数的な個性は詠から複雑な印象を持たれている。

 

・幽霊ちゃん

 ネット上で鈴音をあることないこと非難する匿名のアカウント。

招待は万恋であるとか、むしろ鈴音の自作自演であるとか、真相やいかに。

 

各章あらすじ

・第1傷

 愛弓とクラスメイトになった詠。

十海高校総合格闘技部の女子エース転入の噂に、級友たちは愛弓とどちらが強いのか色めき立つ。

 

・第2傷

 怪我を押して登校する詠、心配しつつ送り出す母。

カツアゲに頭を悩ませながら、詠は調理実習時の諍いと愛弓たちによる仲裁を目にする。

 

・第3傷

 選り抜きのテニス部員、町田さんが愛弓とコートで真剣勝負から、運命のカツアゲ日。

詠が一計を案じ愛弓が公園に駆けつけ勇魔たちと対決するまで。

 

・第4傷

 逆恨みを案じて詠の護衛を買って出る愛弓。古傷をさらけ出し答える詠。

 

・第5傷

 ついにやってきた噂の最強転入生、鈴音。

体育の授業のたび様々な種目で愛弓を圧倒する彼女により、クラスの勢力図は一変してゆく。

 

・第6傷

 詠は虎徹より恋愛相談を受ける。

部活を終えて雅に複雑な敬愛と苛立ちを募らせる詠は、

雅にだけ特別に感じる不安と憧れの正体に1つの答えを見出すのであった。

 

・第7傷

 護身術の授業。愛弓の本分にはしばし踏み込まずにいた鈴音であったが、ついに自重なき挑発を重ね激突する。

 

・第8傷

 戦い終わって打ちひしがれながら早退する愛弓。無責任に囃し立てる級友と細やかな推理で詠を追い詰める祈。

愛弓の友人たちによる必死の擁護で小康状態を取り戻し、舞台は詠の帰宅後、劇中劇に移る。

 

・第9傷

 傑との口論後、眠れぬ夜を過ごす詠。愛弓からのメールと回想。

翌朝彼は朝食の席で傑が自らの早風家訪問を知った経緯について考察。

校内でただならぬ様子を感じさせる雅と八雲を追った詠は、衝撃的な光景を目にする。

 

・第10傷

 雅について、八雲について。詠と虎徹は互いの情報交換に務める。

そして鈴音を中心とした集団下校。ついに《雷神》が目の前に現れた。

 

・第11傷

 衣替え。盗まれた愛弓の道着。始まった雅たちとの下校、クラスを覆う猜疑心と主力の喪失。

 

・第12傷

 鈴音と竜司の対決、彼の衝撃的な変貌。

愛弓と竜司、自分と虎徹。二組の共通点に不思議な納得を覚える詠。

詠雅虎徹は幸せなトーク(?)をして終了

 

・第13傷

 劇中劇夜星涼のライトノベル、《神眼》の3巻と解説からスタート。

さらに詠は愛弓の苦境と心情について「稚拙極まる断章群」を綴り眺める。現状本作最高の迷場面(笑)

舞台は詠が調べた仲間たちのネット事情に移る。さらに外界の美人格闘家2人の紹介。伏線か。

 

・第14傷

 運命の体育祭、そのプログラム。焦燥と意地のために堕ちていく愛弓。

空河と鈴音の露骨な触れ合い、彼女の計算に対する詠の考察、厳格な生徒会長の登場。

彼から逃れた詠の前に勇魔一味が迫る。詠を人質とし、弱った愛弓にまで報復を企む勇魔。

愛弓への気遣い以前にアドレス消去で要求に答えられぬ詠、必死の叫びで助けを求める前に現れたのは……

 

・第15傷

 詠が垣間見た雅の強さと弱さ。愛弓の打ち明けた偽善と計略。

展覧会、鈴音の折鶴、博道の傷、不吉な伏線が続く。

 

・第16傷

 体育祭を終え、鈴音の家に招かれたみーくんこと詠。謎のラブレター差出人として語られる「幽霊ちゃん」。

際どいワンピース姿の鈴音と、長い一日が始まった。

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