Chryso_la-ntkwmk

• 角交換相振り飛車

今回は初手から▲７六歩△３四歩▲６八飛△３五歩▲２二角成△同銀▲８八銀△４二飛と続く、角交換相振り飛車を指定局面として採用した。

　相振り飛車は他の戦型に比べると定跡が整備されていない部分があり、その自由さに惹かれて採用する棋士は絶えない。各々の棋風に合わせて手を選べる余地があるのが特徴の戦型だ。

　ここ最近ではその相振り飛車に角交換を組み合わせる動きもみられている。振り飛車には角交換という格言は今や昔、といった情勢だ。プロ間でもまだまだ試行錯誤が続いており、どう攻めていくか、どこで角を使うか、そもそも従来の金無双や美濃囲いといった囲いが有効なのかどうか、などなど明らかになっていない部分が多い。

　振り飛車党の多いアマチュアなら、今後なおさら研究が必要になる戦型となるだろう。早めに自分なりの定跡を確立しておけば、勝率が高くなる可能性は十分ある。よって今回はこの局面を指定した。

■▲Chryso_la―△ntkwmk（観戦記：hhesse）

• 従来にない出だし

　指定局面からの指し手
▲７七銀△３三銀▲１六歩△７二金▲２八銀△８二銀▲８八飛△６二玉▲６六銀△４四銀▲４八玉△９四歩▲９六同△２二飛▲８六歩△２四歩▲８五歩△２五歩▲３八金

（１図）
　通常相振り飛車はどちらかの角道を止めてスタートする。しかしながら今回は角が初めから手持ちにあるので、駒組にはだいぶ制約が生まれる。先後ともに銀でもって飛車先を守るが、その隣には玉はいかない。２筋を守るのは金だ。

　これは相掛かりではよく見られる形で、玉を極力戦場に近づけない意味がある。しかしながら一方で相居飛車のように角道を開けるための歩は突かれていない。そのため相掛かりとも違う形だ。すでに従来にない出だしとなっている。

• 強襲

　１図からの指し手
△２六歩▲同歩△同飛▲９五歩△同歩▲９二歩△同香▲８四歩

（２図）
　後手の飛車先交換は自然に見える。しかし、この瞬間を見計らって先手は９筋に手を付けてきた。金が上がっていないことを見越して▲６五角と打とうというつもりだ。

　従来の相振り飛車は囲ってから戦端が開かれる展開が多いが、角交換相振り飛車の場合はもうこの時点で仕掛けていける。この攻めは成立するのか。

 

• 切り返しがあったか

　２図からの指し手
△４二金▲８三歩成△同銀▲８四歩△９四銀▲５六角△８七歩▲同飛△８六歩▲同飛△８五歩▲８八飛△８二金

（３図）
　▲６五角と打たれたら後手陣はすでに火がついてしまうように見える。香を拾われたら▲２七香で将棋は終わり。しかし、△４二金にかえて△同歩▲３四角△９二角成▲６七角成ではどうだったか、という意見が感想戦で出された。

（参考１図）
　これなら△２七香と打たれても飛車を横に逃げられる。桂香が拾えるので先手が良いことに違いはなさそうだが、馬を作られるのはやや気持ちが悪い。ピンチになりかねない展開が見送られたので先手はもう攻めるのみ。相手に立ち直られる前に壊滅状態に追い込みたい。

• つながっていく攻め

　３図からの指し手
▲９六歩△７四角▲同角△同歩▲９五歩△同銀▲１五角△２二飛▲９五香△３三銀▲３一銀△３二飛▲４二銀成△同飛▲８三歩成△同金▲９二香成△１四歩

（４図）
　端を攻めて銀が採れることが確定したタイミングで▲１五角が絶妙の好打。この瞬間なら飛車の引き場所を２二に限定でき、いつでも３一銀を狙っていける。狙いの３一銀を実現し、さらに香車も成って優勢は明らかだろうか。

　後手はひとまず角を追っ払いたいが……。

• 寄り形

　４図からの指し手
▲３三角成△同桂▲８一成香△２二飛▲３四桂△２四飛▲４二桂成△２七歩

（５図）
　駒は十分そろっているので、逃げることなく角を切っていく。さらに飛車を活用しようとしてきた手を逆用し、桂馬を成りこんでいった。左右から挟む理想の寄り形だ。

　後手は２筋から攻めて一矢報いたい。

• 速攻が実った勝利

　５図からの指し手
▲３九銀△２八銀▲８二銀△３九銀成▲同金△２八歩成▲７一銀まで８５手で先手の勝ち。

（６図）
　一度銀を引き、質駒を打たせるのが好手順。さらに△３九銀成～△２八歩成とされても、王手がかからないため安心して寄せることができる。

　投了図以下は△７三玉▲８二銀△同金▲同銀不成△８四玉▲９五金△同玉▲９六香△同玉▲９八飛△８七玉▲８八金△７六玉▲７七金の詰みがある。それでなくとも必至をかければ十分の局面だ。

　一瞬の隙をつき一気にリードを奪った先手の勝利となった。