ntkwmkーChryso_la

ページ名:ntkwmkーChryso_la

・青野流
 今回は初手から、▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲5八玉と続く、いわゆる「青野流」を指定局面に採用した。

 横歩取りは江戸時代から今に至るまで指され続けている戦型だ。後手の同意がないと成立しないこと、そして一歩損と引き換えに一手得をもらえることから基本的には後手が積極的に動きやすい作戦として知られてきた。そして、実際の勝率も年度によっては後手のほうが五割を超える年もあるくらい、居飛車党にとっての主力戦法として採用され続けてきた。

 しかしながら、現在横歩取りは後手が指さない戦術となっている。基本的には年度あたり200局、多い時には300局近く採用されることもある横歩取りが、2018年度は100局にやっと届くところまで落ち込んでしまった。その原因となっているのが青野流の隆盛である。

 先手で横歩取りを指すにあたっては、▲3六飛~▲2六飛と一度飛車を2筋に戻す手順が欠かせないとされてきた。しかし、それでは手損になってしまって後手に主導権を握られてしまう。この二手を省き▲3四飛のまま他の手に回せないか、と考えたのが青野照市九段(とその弟子)だ。▲5八玉と居玉を解消した後▲3六歩と右桂を活用する戦術は、シンプルでありながら抜群の破壊力を持っているため近年になって採用する棋士が増えた。

 なによりこの流行に拍車をかけたのが、将棋ソフトですらこの青野流には苦戦するという事実だ。あらゆる対策を駆使しても先手のほうが勝率が良いため、現在ではソフトですら横歩取りを指さなくなっているという。青野流は現状、先手の最強戦術と表現しても差し支えないだろう。

 では、こうした現状をアマチュアはどう認識したらいいか。青野流は狙いがわかりやすいということもあって採用するアマも増えてきている。しかしながら、それは狙いが絞りやすくなることを意味するのではないか。青野流を採用されても手順によっては後手が主導権を握る展開はある。しっかりと対策を行えば、この流行を逆用して勝率を上げやすくなるのではないか……そんな狙いを込めて今回はこの局面を指定した。

 

  • 4二玉型

 指定局面からの指し手
△4二玉▲3六歩△7二銀▲3七桂△6四歩▲3八銀△6三銀


(1図)

 △4二玉は3二金と5三歩にヒモを付けた手。青野流を相手にした時にはこの地点のケアがとても大切になる。とはいえ、一方で玉が戦場に近づいてしまうので注意が必要だ。
 4二玉型と中原囲いを組み合わせる対策はプロでもよく指されているが、7二銀はやや珍しい。さらに腰掛け銀を目指す指し方もいささか挑発的だ。この瞬間5三の地点に利いているのは玉しかいないので、4五桂が成立するようにも思えるが……。

  • 仕掛けを見送る

 1図からの指し手
▲9六歩△8二飛▲8七歩△2二銀▲3五飛△2三銀▲4五桂△8八角成▲同銀


(2図)

 先手は仕掛けを見送った。もし▲4五桂と跳ねていたらどうだったか。以下△8八角成▲同銀△3三歩▲2四飛△2三歩▲2五飛△4四歩に、▲7七角という手がある。


(参考1図)

 △7六飛とされても▲8二歩の筋があるので桂馬は簡単に取れない。こちらの方が青野流らしい指し方だったか。

 ▲9六歩は何気ない端歩のように見えるが、左桂を活用する狙いも込めている。よって後手は飛車を引いて▲8七歩を打たせた。

 一度飛車を引いてから桂馬を跳ねていく。しかしこの時点では金にヒモがついているためやや効果は薄い。角交換後どれだけ手が作れるかが焦点になるが……。

 

 

  • 後手満足か

 2図からの指し手
△3四歩▲2五飛△2四歩▲2七飛△5四銀▲2二歩△2二金▲5三桂成△同玉


(3図)

 すぐに4五桂を取りに良く指し方もあるが、いつでも取れる駒であるため後手は焦らない。銀冠と腰掛け銀を作ることに専念していく。

 じっくりとした展開になると不満なのは先手だ。桂馬を黙って取られるわけにはいかないので、一度手裏剣を利かせた後桂馬を捨てて歩を補充する。形を乱して戦いやすくするつもりだ。

 

  • 舵取りが難しい先手

 3図からの指し手
▲7七桂△3二金▲6六角△5五歩▲9五歩△3三桂▲8六歩△4四歩▲8五桂△6五銀▲5五角△4三金▲8七銀△5四角


(4図)

 先手は左桂を活用し、さらに△3二金と戻った手を咎めるために角を打っていく。しかし△5五歩と止められてしまうと響きが弱い。桂損であるためなるべく忙しい展開にしたいのだが、後手の陣形に隙がなくなってしまっている。

 ▲9五歩~▲8五桂と端に狙いをつけていくが、一度銀を角にぶつけられ利きをずらされてしまうと、すぐに端攻めは敢行しづらくなる。狙い筋を作るためにも一苦労する展開だ。後手はそれを尻目に、中央の好位置に角を打ち込んでいく。

 

  • 角の働きの差

 4図からの指し手
▲2六飛△2五歩▲2九飛△2四銀▲4八金△3六角▲3七銀△5四角▲9三桂成△同香▲9四歩△同香▲同香


(5図)

 後手は角を軸に陣形に厚みを加えていく。のびのびと働いている後手の角に対して、先手の角が大変狭い。こうして駒と駒の間に働きの差が生まれてくると形勢にも影響が出てくる。

 この差を埋めていくために先手は端攻めに活路を求めていく。後手もここは素直に面倒を見ていく方針だ。

 

  • 打開できるか

 5図からの指し手
△4五桂▲4六銀△5六歩▲同歩△5七歩▲6八玉△7六銀▲同銀△同角▲8七銀△5四角▲9九飛


(6図)

 左桂を跳ねていよいよ先手陣を乱していく。続いて銀を交換し、駒を打ち込んで弾きに来られても無理はしない。シンプルに指しても十分な形勢と見ているか。

 このままでは先手がじり貧に陥ってしまう。破っておいた端を頼りに、飛車を回ってどうにか状況を打開しようと試みていく。これで形勢が傾くか。

  • 寄せに入る

 6図からの指し手
△9八歩▲同飛△7五桂▲7六歩△8七桂成▲同金△7五桂▲7七金△8七銀▲9五飛△7六銀成▲同金△同角


(7図)

 一度歩を叩いて飛車を吊り上げておいて、8七に駒を打ち込んだ時に飛車取りになるようにするのが手筋の一着。角の利きを一度は遮られても桂馬を打ち込めばこじ開けることができる。

 先手の攻めの時間が全く回ってこない。終局は近いか。

  • 勝負あり

 7図からの指し手
▲7九桂打△6七桂成▲同桂△8七角成▲5九玉△8六馬まで100手で後手の勝ち。


(8図)

 桂を成り捨て、逆モーションで角を成りこむのが技ありの一手。金駒ならともかく、桂馬は一度しか受けに効かないためこうした展開に弱い。

 玉を早逃げしていくが△8六馬で王手飛車がかかり、勝負あった。じっくりとした展開に持ち込み、青野流の長所を抑え込んでいく後手の方針が勝った形だ。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧