- 角換わり腰掛け銀新型同型
今回は初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7六歩△3二金 ▲7七角△3四歩▲6八銀△7七角成▲同銀△2二銀 ▲4八銀△3三銀▲3六歩△6二銀▲4六歩△6四歩 ▲3七桂△4二玉▲7八金△6三銀▲4七銀△7四歩▲6八玉△7三桂▲4八金△6二金▲2九飛△8一飛 ▲6六歩△1四歩▲1六歩△9四歩▲9六歩△5四銀▲5六銀と続く、角換わり新型同型を指定局面とした。
この局面は去年度最もプロ間で注目が集まった戦型といっていい。従来相居飛車の主力戦法だった矢倉は採用数が減り、それに取って代わるように流行した雁木は徐々に対策が整ったために主流とはなりえなかった。横歩取りは青野流が強力なため後手が回避、相掛かりは採用数が増えているもののまだまだ定跡が整っていない。
そんな中でどんな駒組を目指したらいいかが明確で、先手も後手も勝ちようがある角換わりに人気が集まったのは当然といっていい。そして、この駒組はプロのみならずアマチュアも採用するようになった。
角換わり腰掛け銀というと基本的には先手必勝で、後手は工夫しなければ太刀打ちするのは難しい、そしてその工夫をアマチュアに理解することはなお難しい……そうした認識が一般的だった時代はもはや去った。現在の角換わりは日々戦略が模索され続け、定跡もその都度変わりゆく戦型となっている。最適解がないに等しいので、これまで角換わりを指したことのない人にとってもゼロから学ぶチャンスが生まれているといっていい。こうした自由度の高い戦型を前にしては、対局者それぞれがいかに創意工夫を行えるかどうかがカギになる。対局中だけでなく、対局までの準備期間でいかに戦術を練るかも重要になってくるので、今回はこの局面を指定局面とした。
■▲Chryso_la―△YUGEN1262戦(観戦記:hhesse)
- ひねった受け方
指定局面からの指し手
△4四歩▲4五歩△5二玉▲4四歩△4一飛▲7五歩△同歩▲7四歩
(1図)
後手の実質的な初手は△4四歩。同型を維持し駒組を発展しやすくする手だが、この瞬間争点を与えるので勇気がいる手だ。先手は逃さずに仕掛けていく。
これに対しては同歩が主流だが、ここでは玉を寄った。そして取り込みに対して飛車回り。部分的にはよく出てくる筋だ。果たしてこの局面でも有効なのか。
先手は一歩得たことを生かして桂頭を攻めていく。
- 馬を作って一歩リード
1図からの指し手
△4四飛▲5八玉△4六歩▲7三歩成△同金▲4五桂△4一飛▲8二角△6三金▲6五歩△同歩▲4六角成
(2図)
先手の桂得は確定だがこの瞬間歩切れなのでやや怖いところ。走ってきた飛車に対しては玉を寄って金にヒモを付けた。戦場に近づくが、仕方のないところか。
後手は歩を垂らしていくが、取ったばかりの桂をつながれてみるとやや響きは弱い。角打ちに対しては金を引くのではなく△7四金と上がる手もあったところだ。以下▲6五歩△同銀▲同銀△同金▲7三角成という手順が予測される。この変化も馬が玉に近い位置にいる上に、金が上ずってしまっているので選びにくいか。
一連の手順を踏まえると、歩の垂らしに変えて先に飛車を引いておけばよかったのではないか、と感想戦で検討された。先手は良い位置に馬ができたので、これ以降盤面を有利に進めたい。
- 馬の力が強い
2図からの指し手
△4四銀▲6四歩△6二金▲2四歩△同歩▲同馬△3三桂▲3四馬
(3図)
先手は卒なく6筋に拠点を作っておいてから、本命の2筋を攻めていく。▲2四同馬に対して△3三桂は、働いていない桂と中断で威張っている桂の交換を狙った手であるため悪くない指し手のように思える。
しかし、▲3四馬が盲点に入りやすい手だ。単純な王手だがとても受けにくい。たとえば△4三歩などと受けてしまうと▲3三桂成△同銀▲同馬△2二飛成となって、桂跳ねを逆用されてしまう上に飛車のの働きがなくなってしまう。馬の力を最大限に活かした先手が完全に優勢を作った恰好だ。
- 飛車を働かせたい
3図からの指し手
△4三銀▲3三桂成△同銀▲同馬△同金▲2二飛成△3二歩▲5五桂△5四銀▲4二歩△7一飛
(4図)
先手は狙い筋を実現していよいよ寄せの段階に入ってきた。飛車の働きに格段の差が生じてしまったため、後手はどうにかして飛車の進路を広げていきたい。
▲5五桂と着実に駒をはがしていく手に対し、銀を上がりようやく飛車の活用の目途が立った……かに見えたが、▲4二歩がそれを防ぐ軽手。
たとえば△同飛と取ってしまうと▲1一竜と駒を補充され、▲5一銀や▲4三歩のような上下からの攻めに耐えられない。よって逃げるしかないが、やはり歩が前にいる筋にしか回れないため迫力に乏しい。
- 巧みな寄せ
4図からの指し手
▲6三銀△同銀▲3三龍△同歩▲4三金△6一玉▲6三歩成△4六桂▲5八玉△7二飛▲6二と△同玉▲6三銀△7一玉▲8三金
(5図)
一度銀を質駒にしてから龍を切っていくのが巧みな手順。こうして左右から挟み込むことによって受けが効きにくくなる。
▲6三歩成に対して△同金と取ってしまうと寄せが速くなってしまうので、後手は桂を打ってアヤを付けておいてから飛車を上がり玉の退路を広げていく。しかし、やはり銀と金で飛車を挟み込まれてしまうと受けにくい。終局は間近だ。
- 駒を足すのが寄せの基本
5図からの指し手
△9二飛▲7三歩△6一角▲9二金△同香▲6二飛△8三角打▲5二金△8一金▲6一金△同角▲同飛成△同玉▲5二角△7一玉▲7二歩成△同金▲同銀成
(6図)
後手もなんとかして凌ごうとはするが、先手は着実に玉を寄せていく。駒を足しながら攻めていけば少なくとも逃がすことはない。4三で遊んでいた金も加われば盤石だ。
銀が成ったところで投了となった。投了図以下は△同玉▲6三角成△8三玉▲6一角△8二玉▲7二角成△9一玉▲8一馬まで。先手の快勝となった。先に有利を作った先手がリードを広げて勝利となった。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧