hhesseーntkwmk

■▲hhesse―△ntkwmk戦（自戦記：hhesse）

• 主流の▲３七銀

　指定局面からの指し手
▲３七銀△８五歩▲３五歩△同歩▲同角△３七桂▲１六歩

（１図）

　▲３七銀は先述した通りかつてよく指されていた一手。作戦選択の幅も広い。それに対して△８五歩はやはり飛車先を早めに決める一手だ。これに対しては３五歩から交換しにいくのが定跡。

　ここで素直に応じずに△６四角とする手もあるが、本局では△同歩からの歩交換を許した。先手にとって不満はないように見えるが、実は角をつり出すための作戦だったということは間もなくわかる。

　▲１六歩は様子を見る一手にすぎなかったのだが、後々実は大切な一手だったと思い知る。

 

• 土居矢倉

　1図からの指し手
△３四歩▲４六角△６四角▲７九玉△４三金左▲１五歩△３二玉▲２六歩△９四歩▲９六歩

（２図）

　△４三金左は奇妙な一手に見えるが、コンピュータソフトによって見直され注目されている「土居矢倉」と呼ばれる形だ。矢倉は左辺に駒を偏らせているため角交換をした後打ち込みに弱いとされているが、この形ならその弱点を解消できる。

　なにより先手の飛車先が決まっていないため悠々と囲いを完成させることができる。後々ソフトに解析させてみたところ、１五歩に代えて６八角と戻るべきだったようだが、陣形の構築で立ち遅れている中で手損するのは気が引ける。

　そのため、端攻めに活路を見出すことにした。

 

• 端で戦果は上げたが

　2図からの指し手
△４六角▲同銀△６四歩▲３七桂△６三銀▲１四歩△同歩▲１三歩△同桂▲１四香

（３図）

　角交換から後手は着々と陣形を整えていく。△６三銀の後▲８八玉と入城するのが自然のように見えるが、その後△８一飛とされると土居矢倉の完成。角の打ち込み所がない布陣となる。一方で先手は隙が多い。よってここでは攻めるしかなかった。

　土居矢倉の利点はもう一つある。それは左辺を焦土化されても右辺に逃げられるということ。よって本譜のように端で戦果を挙げても響きが弱い。どこかで左辺に手を付けなければいけないのだが……。

 

• チャンスを逃した後手

　3図からの指し手
△１二歩▲５五歩△同歩▲1三香成△同歩▲２五桂△２二銀▲３三歩△同銀▲同桂成△同金△２五桂

（4図）

　終局後の感想戦では△１二歩に代えて△３六角と打ったらどうだったか、という振り返りが行われた。防戦一方にならずに反撃の余地を残すことができる。

　その後の▲５五歩がここしかないというタイミングの一手。先に１三香成と手順前後してしまうと手抜かれる恐れがある。この後の５五銀～４四銀のドリブルが狙い筋。

　あらかじめ味をつけてから1筋、そして3筋を攻め込んでいく。ここで攻めが切れても先述の攻めが残っているので、多少指しやすさを感じ始めた。

 

• 先手もチャンスを逃す

　4図からの指し手
△4三金▲１八飛△１四香▲５八飛△８六歩▲同銀△６五歩▲３三歩△４二玉▲６五歩△８八歩▲同玉△６九角

（5図）

　形勢はよくなっているが、▲１八飛に代えて素直に５五銀から狙い筋を敢行すべきだった。△３七角▲５八飛△５五角成▲同飛△５四香からどう指せばいいかわからなかったのだが、▲５三歩△同金▲７一角△５二飛▲５三角成△同飛▲６二銀で十分攻めがつながる。

　本譜のように一度△１四香と打たせれば反動が弱くなるのでは、と期待していたが、ここでは▲２七角があり、そうなると逆転してもおかしくはなかった。結果的には助かったが、チャンスを逃したせいで後手からの猛攻を呼んでしまう。

 

• 秒に追われた終盤

　5図からの指し手
▲５九飛△４七角成▲５五銀△５四歩▲４四銀△５五桂▲７七金寄△６五桂

（6図）

　反撃されながらも狙い筋が実現できたのでいよいよ寄り筋。しかしこのあたりから秒読みが始まったので優勢と言えど気持ちは焦っていた。

　6図からの指し手
▲３二歩成△５一玉▲７三角△６二飛▲４三銀成△７七桂成▲同銀△４三金▲５三歩

（7図）

　確実に寄せられているはずだったが▲５三歩がひどい一手。▲７一銀が正着だった。

 

• 詰みを逃す

　7図からの指し手
△６七銀▲４二銀△６一玉▲６二角成△同玉▲８二飛△７二金▲８一飛成△７八銀成▲同玉△４五角▲８八玉△７八金▲９七玉△７七金▲同桂△７八角成▲８四銀まで111手で先手の勝ち

（8図）

　▲８四銀にかえて△６一金以下の詰みがあった。終盤力に課題を残した形となったが、古い定跡から新しい形へと発展するという場面が現れたので、今あえてこの指定局面戦をやる意味はあったと思う。