和水町立中学校いじめ自殺

ページ名:和水町立中学校いじめ自殺

和水町立中学校いじめ自殺(なごみちょうりつちゅうがっこういじめじさつ)は、2012年(平成24年)7月10日に熊本県玉名郡和水町で発生したいじめ自殺事件。

自殺発見・アンケート調査

 2012年(平成24年)7月10日、熊本県玉名郡和水町立中学校3年の男子生徒(当時14歳)が、自宅で自殺しているのが発見された。遺書はなかった。
 学校は自殺を受け、全校生徒を対象にアンケートや聞き取り調査を実施。男子生徒が他の生徒から石を投げられたり、女子トイレにスリッパを投げ込まれる、首を絞められて失神させられる、制服のズボンを脱がされかける、などの行為を受けていたとの回答があった。
 しかし学校や教育長は「いじめはなかった」と早期に断定し、いじめの有無を調査しなかった。井上忠勝町教育長は生徒への調査、警察の見解などを踏まえ「精査した中ではいじめが(自殺に)直接原因となるようなことはなかったというのが揺るぎない信念」と述べた*1

ネットの知人にいじめ打ち明け

 2013年(平成25年)3月、遺族は「調査は不十分」として第三者委員会設置を町に要望。これを受けて第三者委が設置され、6月から調査を行った。2014年(平成26年)4月、第三者委は調査報告書を公表。11件のいじめを認定した上で、「自殺の要因の一つになった可能性は否定できない」とした。
 調査報告書では、男子生徒が生前、「自分がいじめられている」と県外の知人に伝えていたことが判明。第三者委は「『いじめられている』と他人に話した唯一の情報」と注目し「身近にいない人間だからこそ、本音を漏らした可能性も否定できない」と指摘した。
 報告書によると、生徒はインターネットの交流サイトで知り合った県外の女性と、電話でもやりとりをするようになり、1年のときに「自分はいじめられている」「学校が嫌、面倒くさい」と女性に伝えていた。女性は当時、生徒に学校へ行くよう助言したという。第三者委の聞き取り調査に女性が答えた*2
 但し、第三者委が認定したいじめ11件のうち少なくとも5件は、2年の3学期から自殺直前の7月までの行為だった。時期が特定されていないものもあり、いじめは長期にわたっていたとみられる。

提訴

 2014年(平成26年)10月、生徒の両親は町に総額1100万円の損害賠償を求めて提訴。訴状では「教諭らはいじめと認識せず、自殺を予見できたのに放置していた」と指摘。自殺後、当時の校長や町教育長が早期にいじめがなかったと断定したのは、事実関係の調査が早い段階で必要としている文部科学省の通達に反すると主張した。損害額は約9000万円とするのが妥当だが、「賠償金目的ではなく、息子の無念を晴らし、再発防止のため」として、8分の1程度に留めたとした*3
 2016年(平成28年)3月4日、熊本地裁で和解が成立。町側がいじめがあったことを認めるなどし、解決金350万円を支払う内容で、福原秀治町長が法廷で生徒の父親に直接謝罪し、「厳しい教訓とし、いじめ防止に努める。遺族に対する不適切な対応を重ねておわびする」とのコメントを出した。
 主な和解内容は(1)首を絞められ失神させられた、女性の名前で呼ばれからかわれた、ズボンに入った虫を押しつぶされた、などのいじめがあったと町が認める(2)町は男子生徒が自殺した当時の教育長や校長が当初「いじめはなかった」とした発言を撤回し、両親に陳謝する(3)町は再発防止に努める、というもの。いじめと自殺の因果関係の有無には触れられなかったが、両親の代理人弁護士は同日の記者会見で「いじめを認め、解決金を払い、(条項には)『自死という結果を重く受け止め、いじめ防止に努める』と書いてあり、因果関係を認めたものと理解している」と話した。
 父親は「裁判の場でも、町がいじめを認めた。裁判を起こしたことには意味があったが、全てが解明できたとは言えない。裁判が終わっても息子は帰ってこない。私たちのような思いをする人が二度と現れないように願う」と語った*4*5

*1 「中3自殺:いじめ直接原因を否定 熊本・和水町教育長」(毎日新聞、2013年03月11日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20130315000913/http://mainichi.jp/select/news/20130312k0000m040094000c.html
*2 「和水町の自殺生徒、「いじめ」知人に告白」(熊本日日新聞、2014年5月30日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20140603210434/http://kumanichi.com/news/local/main/20140530006.xhtml
*3 「和水町 請求棄却求める 熊本地裁 中3自殺訴訟 初弁論 [熊本県]」(西日本新聞、2014年12月19日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20150129220035/http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/134611
*4 「中3自殺、両親と町が和解 いじめ認め350万円支払い」(朝日新聞、2016年3月4日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20160304103855/http://www.asahi.com/articles/ASJ343FWWJ34TLVB001.html
*5 「中3いじめ自殺訴訟和解、町が両親に350万円和解金 熊本・和水町長が謝罪」(産経新聞、2016年3月4日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20160506053246/http://www.sankei.com:80/west/news/160304/wst1603040048-n1.html

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