出水市立中学校いじめ自殺

出水市立中学校いじめ自殺（いずみしりつちゅうがっこういじめじさつ）は、2011年（平成23年）9月1日に鹿児島県出水市で発生したいじめ自殺事件。

鉄道自殺

　2011年（平成23年）9月1日、鹿児島県出水市境町のＪＲ九州新幹線の線路上で身元不明の遺体が発見され、2日、行方不明になっていた近くに住む市立中学2年生の中村真弥香さん（当時13歳）と判明した。出水署によると、DNA型鑑定で本人と確認したという。また、線路をまたぐ陸橋の、高さ2.9メートルのフェンスの金属部分に指紋が残っており、遺体と真弥香さんの自宅から採取した指紋とも一致した。
　真弥香さんの捜索願は同日午前4時半頃、家族から出されていた。同6時20分過ぎに現場を通過した上りの回送列車の先頭車両に衝突痕とみられるへこみが見つかっており、同署はこの回送列車にひかれたと特定した。
　遺書などは見つからなかったが、フェンスを複数の人物が上った形跡はなく、出水署は真弥香さんがフェンスをよじ登り、線路上に飛び降りて自殺した可能性が高いとした*1。
　出水市教育委員会は自殺の6日後、生徒368人を対象にアンケートを実施。11月、「いじめなど自殺の直接原因となる出来事は確認できなかった」との報告書をまとめた。
　遺族はこれに対し、同年12月以降、真弥香さんと接する機会が多かった生徒と保護者を対象に独自のアンケートを実施した。十数人から回答があり、伝聞を含め、「持ち物がなくなったり、スリッパがグチャグチャにされたりしていた」「いじめの対象となっていた」「いじめられても『どうしたらいいかわからない』と言っていた」などの記述があったという。

被害届提出、アンケート開示訴訟

　2012年（平成24年）8月10日、遺族は真弥香さんが同じ中学の生徒に恐喝されたり物を壊されたりしたとして、恐喝未遂と器物破損の容疑で出水署に被害届を提出。2011年（平成23年）8月頃、真弥香さんが数人の女子生徒から、所属していた吹奏楽部で使っていた学校の楽器を壊された上に弁償を強要されたり、文房具を壊されたりしたとし、「いじめがあったことは明らか。警察にしっかり調べてほしい」と訴えた*2。
　2014年（平成26年）4月4日には、遺族は出水市などを相手に、自殺後に全校生徒を対象に行ったアンケート結果を不開示とした市教育委員会の決定取り消しなどを求める訴訟を、鹿児島地裁に起こした。市側は「個人が特定される」などと請求棄却を求めたが、2015年（平成27年）12月15日、鹿児島地裁は「個人を特定できる情報を伏せれば開示できる」とし、アンケートの一部開示を出水市に命じた。原告の祖父は記者会見で、時折涙をタオルで拭いながら、「いじめをなくす取り組みが全国的に進められている。出水市は判決を尊重し、控訴することなく直ちにアンケートを開示していただきたい」と話した*3*4。
　22日、出水市は控訴しないことを決定し、年明けにも、地裁が判断した不開示部分を除いたアンケート結果をまとめた写しを遺族に開示するとした*5。

*1 「遺体は近所の中2女子 新幹線の陸橋柵に指紋／出水」（南日本新聞、2011年9月2日、リンク切れ）http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=34778
*2 「中２女子新幹線自殺、遺族が「いじめ」被害届」（讀賣新聞、2012年8月19日、インターネットアーカイブ）https://web.archive.org/web/20120822051706/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120819-OYT1T00362.htm
*3 「いじめ調査、不開示取り消し　中2自殺で鹿児島地裁」（日本経済新聞、2015年12月16日）https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H6X_V11C15A2CC1000/
*4 「鹿児島）いじめアンケ、一部開示命令　地裁、出水市に」（朝日新聞、2015年12月16日、インターネットアーカイブ）https://web.archive.org/web/20151216074807/http://www.asahi.com/articles/ASHDH4410HDHTLTB00B.html
*5 「鹿児島・中２自殺　いじめ調査開示、出水市は控訴せず」（毎日新聞、2015年12月22日）https://mainichi.jp/articles/20151223/k00/00m/040/119000c