浜松市立曳馬中学校いじめ自殺

ページ名:浜松市立曳馬中学校いじめ自殺

浜松市立曳馬中学校いじめ自殺(はままつしりつひくまちゅうがっこういじめじさつ)は、2012年(平成24年)6月12日に静岡県浜松市中区で発生したいじめ自殺事件。

転落死

 2012年(平成24年)6月12日午後4時35分頃、静岡県浜松市中区の10階建てマンションの管理人から、「建物南側のコンクリート敷きの駐車場に男性が倒れている」と110番があり、病院に運ばれたが死亡が確認された。
 転落死したのは同マンションに住む浜松市立曳馬中学校2年の片岡完太君(当時13歳)であることが確認された。発見時は学校の体操着姿で、屋上に片岡君のものと見られる靴跡があった。遺書はなかった。
 曳馬中の教頭によると、片岡君は当日、普段通り登校し、3、4時間目には外部の講師を招いて命の大切さについて考える「命の教育講演会」に参加していた。6時間目の授業までは出席したが、所属する卓球部の練習は休み、午後3時45分頃に下校したという。
 また、5月31日にはいじめに関するアンケートを実施していたが、片岡君はいじめられた経験もいじめた経験も「ない」と回答していたことを明らかにした*1

いじめ認定と書類送検

 事件を受け、浜松市教育委員会は第三者による調査委員会を設置。12月19日に公表した報告書で、片岡君が「死亡前の約4カ月間、塾や学校で悪口を言われるなどのいじめを受けていた」と認定した。また、死亡時の状況から、片岡君は自殺したと判断した上で、「背景にいじめがあったと言わざるを得ない」とした。但し、遺書がないため、直接の原因だったかどうかは分からないと結論付けた。
 報告書によると、いじめは2012年(平成24年)2月以降、塾や学級、部活動であった。同級生らが「きもい」「死ね」といった悪口を言ったりしたほか、ゲームやプロレスのまねをして首を絞めたり、げんこつで腹をたたいたりした*2
 校長は報告を受けて記者会見し「教職員が心中を事前に察知して救うことができなかったことをおわびしたい」と謝罪。「いじめが生徒を孤立させ、追い詰めたと思う」と述べた。
 2013年(平成25年)5月、片岡君の父親は、同級生からのいじめが死亡につながったとして、浜松中央署に被害届を提出した。
 2014年(平成26年)1月15日、浜松中央署は暴力行為法違反(共同暴行)の疑いで同級生の男子(当時15歳)を静岡地検浜松支部に書類送検し、同法違反(同)や器物損壊の疑いで8人を浜松市児童相談所に送致した。署は「関係者の聞き取りや証拠品の確認などで、事実が確認できるかを調べた。集団による行為であることを重くとらえた」と説明。ただ、片岡君の転落死を自殺とみるものの、立件した行為との因果関係は「分からない」との立場をとった。
 容疑では、9人のうち4人は2012年4月、市内で片岡君をエアガンで撃ち、3人は同月に片岡君の自転車を蹴ったとされた。また、1人は1月に片岡君の筆箱をはさみで切り、2人は6月に油性ペンで筆箱に落書きしたとされた。書類送検された男子はエアガンと自転車の両方の行為に関わり、自転車を蹴ったとされる時は14歳だった。残り8人は当時14歳未満のため刑事罰に問えなかった。9人とも容疑を認めた。
 父親は「強制力のある警察の捜査で、新たな事実が出てくるのを期待したが、立件できたのは調査委の指摘の一部だけだった」と話した*3
 3月31日、静岡地検浜松支部は、他の男子生徒と一緒に自転車を足で蹴るなどして暴行を加えたとして、暴力行為法違反の疑いで、同級生の男子(当時15歳)を静岡家裁浜松支部に送致した。

訴訟

 2013年(平成25年)6月、両親は片岡君の自殺は同級生からいじめを受けたことが原因の自殺だったとして、浜松市と同級生ら11人に、約6400万円の損害賠償を求めて提訴。訴状では、片岡君は2012年2月ごろから約4ヶ月間、クラスや卓球部の部活動、通っていた塾などで同級生ら約11人から悪口を言われ、殴られるなどのいじめを受け、自殺に追い込まれたとされた。
 原告側は「学校がいじめの予防や制止を十分しなかった」などと主張したが、学校側は注意義務違反を否認。生徒側も、自殺といじめの因果関係などを否定して請求棄却を求めた。
 2015年(平成27年)に静岡地裁浜松支部で開かれた第6回口頭弁論で、裁判長が和解を勧告。父親は「行為の善悪を明確にし、学校や担任、加害生徒に完太の命の重みを永遠に背負わせたい」と述べた。
 2016年(平成28年)1月25日、同級生らと浜松市が計495万円を支払うことなどで和解。和解条項には同級生がいじめを謝罪することや、浜松市が学校側の対応に遺憾の意を表し、いじめ防止と再発防止策を取ることなどが盛り込まれた。父親は「和解は一つのけじめで、息子の霊前に報告したい。いじめをした同級生らはやったことの責任を背負って生きていってほしい」と述べた*4*5

*1 「中2男子:自宅マンション屋上から転落死 自殺か…浜松」(毎日新聞、2012年6月13日、リンク切れ)http://mainichi.jp/select/news/20120613k0000m040080000c.html
*2 「浜松中2転落死は「自殺」 第三者委が「いじめ」と認定」(産経新聞、2012年12月20日、インターネットアーカイブ) https://web.archive.org/web/20121219210732/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121220/crm12122000140000-n1.htm
*3 「同級生書類送検 浜松・中2転落死」(中日新聞、2014年1月16日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20140118132527/http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20140116/CK2014011602000099.html
*4 「浜松いじめ自殺訴訟で和解、中2の同級生と市 495万円支払い」(2016年1月26日、日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25H8A_V20C16A1000000/
*5 「中2いじめ自殺 地裁浜松支部で和解…解決金495万円」(毎日新聞、2016年1月25日、インターネットアーカイブ)https://web.archive.org/web/20160126090911/http://mainichi.jp/articles/20160125/k00/00e/040/192000c

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧