007 サンダーボール作戦
Thunderball
公開
1965年12月29日
1965年12月25日 日本の旗
『007 サンダーボール作戦』(ぜろぜろせぶん[1] さんだーぼーるさくせん、Thunderball)はイアン・フレミングの長編小説007シリーズ第8作。また1965年公開、テレンス・ヤング監督のアクション映画。007シリーズ第4作。アカデミー視覚効果賞受賞。世界興行収入は、1965年の映画で『サウンド・オブ・ミュージック』に次ぐ第2位を記録し、インフレ率で修正した場合、シリーズで最高の興行収入となる(第2位はゴールドフィンガー)。日本でも、1966年の日本映画も含めた興行収入で圧倒的な1位を記録した。
小説[]
イアン・フレミングの小説007シリーズ長編第8作(単行本としては『007号の冒険』に次ぐ9冊め)。1961年、ジョナサン・ケープ社より出版された。日本では1962年に早川書房から井上一夫訳によりハヤカワ・ポケット・ミステリで発売された。
あらすじ[]
原子爆弾2基を搭載したイギリス空軍機が、NATOの訓練飛行中に消息を絶ち、謎の組織スペクターが1億ポンド相当の金塊を要求してきた。イギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、上司Mが空軍機の消えた先と睨んだバハマに派遣される。そこでは、スペクターの幹部エミリオ・ラルゴが、宝探しのふりをして海底に沈めた空軍機から原爆を回収しようとしていた。ボンドはCIAやアメリカ海軍原子力潜水艦メンタ号の支援を受け、ラルゴに立ち向かう。
出版[]
映画[]
ストーリー[]
原子爆弾2発を搭載したNATO空軍のヴァルカン爆撃機が訓練中に消息を絶ち、その後犯罪組織「スペクター」が奪った原爆と引き換えにNATOに対して一億ポンド相当のダイヤモンドを要求してきた。
英国情報部は00要員全員に調査指令「サンダーボール作戦」を発令。ボンドはバハマのナッソーへ飛び、そこで爆撃機に搭乗していたNATO空軍少佐の妹ドミノに接近する。
ドミノの後見人ラルゴは、実はスペクターの幹部として爆撃機奪取を指揮した男だった。ボンドは命がけで核爆弾を捜索する…。
多数の秘密兵器でラルゴに挑むボンドの活躍を描いた作品。
スタッフ[]
- 監督 - テレンス・ヤング
- 製作 - ケビン・マクローリー、ハリー・サルツマン(クレジットなし)、アルバート・R・ブロッコリ(クレジットなし)
- 主題歌 - トム・ジョーンズ
- 原案 - ケビン・マクローリー、ジャック・ウィッティンガム
- 脚色 - ジャック・ウィッティンガム、ジョン・ホプキンス
- 撮影 - テッド・ムーア
- 編集 - ピーター・ハント
- プロダクション・デザイン - ケン・アダム
- 美術 - ピーター・マートン
- 特殊効果 - ジョン・ステアズ
- メインタイトル・デザイン - モーリス・ビンダー
キャスト[]
キャラクター、キャストなど[]
- ショーン・コネリーとサメはガラスで仕切られていたが、サメが僅かな隙間から侵入し、ショーンと鉢合わせした。製作者は「ショーンは水の上を走るようにプールから飛び出した」と語った。
- 映画では『ロシアより愛をこめて』で初登場した、スペクターNo.1のブロフェルドが再度登場するが、前回同様顔も見せなければ名前も明らかにしない。『ドクター・ノオ』でデント博士役だったアンソニー・ドーソンが演じ、エリック・ポールマンが声を吹き替えているのも前回と同じである。ただし、髪の毛は見えているので、髪がなくなったのはこれより後ということになる。
- 小説では、ブロフェルドがスペクター2号(No.2)、ラルゴが1号(No.1)だが、スペクターの首領はブロフェルドである。これは秘密保持のため定期的に番号を入れ替えるためであるが、映画では分かり易いように一貫してブロフェルドが1号である。ただし、リメイク版『ネバーセイ・ネバーアゲイン』では、ブロフェルドが原作通り2号になっている。
- ラルゴを演じたのはイタリアの俳優アドルフォ・チェリだが、声はイギリスの俳優ロバート・リエッティが吹き替えている。リエッティは、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』にも、イタリアの大臣役で出演している。
- CIAのフェリックス・ライターは、フレミングの原作では第2作『死ぬのは奴らだ』で負傷した後、ピンカートン探偵社に転職していたが、本作でCIAに復帰した。今回、映画でライターを演じるのは、アメリカの俳優リク・ヴァン・ヌッター。彼は当時、サルツマンとブロッコリが007シリーズ以外に製作した唯一の映画である『腰抜けアフリカ博士』のヒロインを演じた、アニタ・エクバーグ(『ロシアより愛をこめて』にこの映画の看板が登場する)の夫であった(後に離婚)。
- バハマの連絡員ポーラを演じたマルティーヌ・ベズウィックは、『ロシアより愛をこめて』ではロマ女性のゾラ役だった。
主題歌[]
- 主題歌には当初 “Mr. Kiss-Kiss Bang-Bang” という曲が用意されており、シャーリー・バッシーでこれを録音までしていた(後に同じ曲をディオンヌ・ワーウィックであらためて録音している)。ところが公開日が近づくにつれプロデューサーが「曲名が映画のタイトルと異なり、歌詞で映画のタイトルを一言も言わず、しかもボンドの色男ぶりが女性の視点から語られる」という歌に不安を抱くようになり、急遽 “Thunderball” を書かせてこれと差し替え、“Mr. Kiss-Kiss Bang-Bang” の方はインストゥルメンタルとして劇中に挿入した。
- このため本映画はサウンドトラックの編集が間に合わず、公開当初は全編のほぼ半分が12トラックのうち7トラックのみを使った暫定版を使用していた。
- 新主題歌の “Thunderball” は大至急で作詞作曲されて録音されたため、トム・ジョーンズの本来の声域より高いキーで書かれていた。ぶっつけ本番に近いスタジオ録音で、ラストの長いハイノートを得意の大音声で歌いきったジョーンズは、頭に血が上ってその場に卒倒してしまった。本人も認めている有名なエピソードである。
- なお “Mr. Kiss-Kiss Bang-Bang” の方は、シャーリー・バッシー版、ディオンヌ・ワーウィック版ともに、二枚組の「ジェームズ・ボンド 30周年記念アルバム」のなかにお宝トラックとして収録されている。
- イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位35位、アメリカの「ビルボード」誌では、最高位25位を獲得している。また、同サウンドトラック・アルバムは、「ビルボード」誌のアルバム・チャートで、最高位10位を獲得している。
秘密兵器など[]
- ロケット・ベルト(ジェット・パック)。一人用で背中に負い、低温式ヴァルターロケット推進で飛行が可能。スペクターNo.6のジャック・ブヴァール大佐を倒した後、脱出用に使用。ベル・エアロシステムズが開発した実在の装置で、撮影でも実際に飛行を行った。
- ボンドカーとして前作『ゴールドフィンガー』に引き続きアストンマーチン・DB5が使用された(ただし、前作のDB5は劇中で大破したため、2台目である)。冒頭のフランスと、保養所のシーンに登場。以下を装備。
- 後部防弾板(前作でも披露)。
- 放水装置。後方の敵に向かって放水。
- 腕時計型ガイガー・カウンター。ブライトリングのトップタイムに偽装してあり、原爆の捜索に使用。普段はこれまで同様、ロレックス・サブマリナーを着用している。
- 水中カメラ。8枚連写が可能で、赤外線フィルムにも対応。ディスコ・ヴォランテ号の船底を撮影するのに使用。
- 救難信号発射用ミニチュア・ピストル。
- 小型ボンベ。非常用のエアタンク。約4分間の呼吸が可能(撮影用に作られたもので、実際の呼吸は不可能であった)。
- 放射性カプセル。服用することにより、味方が特殊受信機で位置を探知できる。人体には無害。
- カメラ型ガイガー・カウンター。ボンドがドミノに渡し、ディスコ・ヴォランテ号内で原爆のありかを探索させた。
- 水中ジェットパック。背中に負って、底部のスクリューで高速推進。前照灯、水中銃2丁を装備。
- ディスコ・ヴォランテ号。ラルゴの所有する水中翼船。「ディスコ・ヴォランテ」とは、イタリア語で「空飛ぶ円盤」のこと。船底には格納スペースがあり、ここに原爆を隠した。後部を切り離すことが可能。その後部には機関銃や対艦砲が装備されている。
- 水中戦車。ラルゴ側が使用した複座の潜水艇。気密性はなく、潜水具をつけて乗る。水中銃を複数装備。原爆の運搬に使用した。
- BSA・A65ライトニング。スペクターのフィオナが使用したバイク。カウルにミサイル発射管4基を備えている。このミサイルで、1957年製フォード・フェアレーンに乗ったリッペ伯爵を、車ごと葬り去った。
その他[]
- イアン・フレミングとの訴訟問題で映画化権を取得したマクローリーとの交渉で、製作にマクローリーの名がクレジットされている。
- 映画シリーズが制作される時、この作品が第1作になるはずだったが、制作費や前述の訴訟問題の関係で『ドクター・ノオ』が第1作になった。
- 『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はマクローリーによるリメイク。
- スペクターの会議で、No.5がイギリスの列車強盗でコンサルタント料25万ポンドを得たと報告する。本作公開2年前の1963年8月8日、イギリスのバッキンガムシャー州で列車強盗が起こり、260万ポンドが盗まれていた。犯人は逮捕されたが、その一人ロナルド・ビッグスが脱獄し、長年にわたって逃亡生活を送ったことでも知られる事件である。
- スペクターのリッペ伯爵にはトングの刺青があった。トング(Tong)は実在する中国系の秘密結社で、第1作のドクター・ノオがスペクターに加わる前に所属していた組織でもある。
- オフィスに戻ったボンドは、例によって帽子掛けに帽子を投げて掛けようとするが、ある理由から断念する。
- 本作では、00要員全員が招集された。会議室には椅子が九脚用意されており、最後に入室したボンドは画面左側から七番目の椅子に着く。
- 会議で配られた資料にある "O.H.M.S.S." とは、『女王陛下の007』の原題にもなっている、"On Her Majesty's Secret Service"、すなわち「英国秘密情報部」の略号である。
- スペクターから一億ポンド相当のダイヤモンドを要求され、イギリス内務大臣は部下にデ・ビアスへ行くように命じる。
- プレ・オープニングは、フランスのユール・エ・ロワールでロケされた。ボンドとブヴァール大佐との対決が行われたのは、アネ城館である。
- DB5のカーチェイス・シーンは、イギリスのシルバーストン・サーキットで撮影された。F1・イギリスグランプリの開催場所である。
- バハマのシーンは現地ロケが行われた。
- ボンドがライターをポーラとピンダーに紹介するのは、ナッソーのベイ・ストリート。
- ボンドとドミノがダンスをするのは、パラダイス島のカフェ・マルティニーク。現在は巨大リゾート、アトランティスの一部となっている。
- ボンドが閉じ込められた岩窟ゴールデン・グロット(Golden Grotto)一帯は、その後サンダーボール・リーフ(Tunderball reef)と呼ばれ名所となっている。
- ボンドとライターがヘリコプターで原爆搭載機を捜索中に、居ないはずのピンダーの声が収録されている。
- マイアミでのクライマックスは、パラシュート降下シーンは現地で撮影されているが、それに続く海中での戦闘シーンはバハマで行われている。
- 劇中で行われるパレードは、バハマの有名な行事であるジャンカヌー(Junkanoo)。本来は開催時期でなかったが、撮影のため本番同様に実施された。
- フィオナがバハマで乗っていた車は、フォード・マスタング・コンバーチブル。
- ボンドはドミノにコンチ・チャウダーを勧める。コンチ貝(コンク貝)のチャウダーで、バハマ名物である。
- ボンドはベルーガのキャビアと、ドン・ペリニヨンの1955年ものを注文する。
- ボンドが「助けて!」と叫ぶ珍しいシーンがある。
- 水中撮影を監督したリコウ・ブラウニングは、50年代のユニバーサル製モンスター映画、『大アマゾンの半魚人』で半魚人を演じたスーツアクター。
- Qは登場しないはずだった。
日本語吹き替え[]
- テレビ版 - TBS 『月曜ロードショー』1977年4月4日放映(初回)
台詞 - 木原たけし、演出 - 佐藤敏夫、日本語版制作 - 東北新社、TBS- DVD新録版 - 2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
翻訳 - 平田勝茂注[]
- ↑ 公開時。日本でも「ダブルオーセブン」と言うようになったのは第8作『007 死ぬのは奴らだ』から
関連項目[]
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